明治座など4社は2017年1月16日から、シャープの携帯型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」で、訪日外国人観光客向けのガイドを開始する。明治座の訪日外国人向け公演「SAKURA-JAPAN IN THE BOX」の観劇者を対象に実施するもので、ロボホンが英語で講演内容や明治座の歴史、館内設備や土産品を案内する。ロボホンがインバウンド向けのガイドを提供するのは今回が初めて。
今回はロボホン4台を稼働。売店2か所に常設するほか、ロボホンを携帯する2名の説明員を配置する。常設のロボホンは、公演のプロモーションビデオにあわせたプレゼンテーションを実施。一方、ロボホンを携行する説明員は外国人客の求めに応じて館内を一緒に歩き、館内各所で発信する音波ビーコン(非可調音)をロボホンが取得すると、ロボホンがその場所にあった店舗や設備を説明する。
なお、人の耳には聞こえない高周波(音波ビーコン)を用いた、コミュニケーションロボットによる外国語ガイドサービスも、今回が初めての試みだという。
法人への本格導入で観光活用が加速
ロボホンとは、シャープが共同開発した世界初のモバイル型ロボット電話。身長約19.5センチの人型ロボットで、二足歩行も可能だ。モバイル通信に対応し、電話やメール、カメラなどのスマートフォンの基本機能や専用アプリのサービスを、背面の画面での操作やロボホンとの対話で使用できる。利用状況を学習し、より自然なコミュニケーションも可能になるという。
現在、ロボホンを観光で活用しているのは、2016年9月に開始した岡山県の倉敷館観光案内所のみ。案内所に常設し、倉敷に関する観光項目について、例えば「美観地区について教えて」といった質問に音声で答えるほか、額のプロジェクター機能で映像を映し出したりしてガイドを行なう。
しかしシャープでは2016年10月、ロボホンの法人導入を本格化し、アプリケーションパック「お仕事パック」の提供を開始。対応業務には受付や接客のほか観光案内も含まれている。2017年3月末までには日本語のほか、英語、中国語の対応を予定しており、今後の観光シーンでの本格的な活用が始まりそうだ。
すでに昨年10月に開催されたITの展示会「CEATEC2016」では、シャープがロボホンによる京都ガイドのデモを実施。未来の旅行会社店舗をテーマに出展したジェイティービー(JTB)も、ハワイ観光ガイドを行なうロボホンを展示するなど、旅行事業者や自治体の関心も高い。
ロボホンは他のロボットと異なり、持ち歩きが可能なため、旅行中の検索やナビゲーションなど新たな演出効果が期待できる。利用者の意図に応じてガイドになったり、一緒に旅行をする同行者にもなれる。今後の法人活用の本格化でロボホンのレンタルサービスなどが始まれば、テクノロジーによる新たな旅行体験が、また一つ増えるかもしれない。
記事:山田紀子(旅行ジャーナリスト)