人型ロボットとクラウド活用で観光客を地方へ、「観光×テクノロジー」の地方創生プロジェクトが始動

ソフトバンクグループでITソリューションサービスを提供するPSソリューションズは、地方の観光産業をテクノロジーで支援し、観光振興と地域の課題解決を実現する「Tourism×Tech 地方創生プロジェクト」を開始した。

プロジェクトの第一弾として、香川県小豆郡土庄町を支援地域に選定。小豆島の西に浮かぶ同町の豊島(てしま)の玄関口・家浦港に人型ロボットPepperを設置し、観光客に対する案内業務と動向データ収集を行なう。これまでもPepperを案内役として活用する例はあるが、今回はPepperと同プロジェクトに参画する日本オラクルのクラウドサービスやトランスコスモスのテクノロジーを連動し、観光客を増加させるサイクルを構築した。

プロジェクトの発表記者会見では、土庄町長の三枝邦彦氏が「Pepperを通して、ITと融合した新しい観光を従来とは異なる見方で考えていきたい」と、テクノロジーがもたらす新たな観光の展開に意欲を示した。

三枝氏によると、豊島の人口は900人を切り、観光客数も瀬戸大橋開通で沸いた1990年前後が最多だった。しかし、国内外から100万人超が来訪する「瀬戸内国際芸術祭」の開催で一変。2016年は108日間の期間中、毎日人口以上の観光客が訪れ、合計数は15.4万人に達した。

主要産業であるオリーブなどの農業や酪農、瀬戸内の海の幸をあわせ、「食とアートの島」として観光的な認知も広がりつつある。芸術祭という新要素による成功体験があるからこそ、今回のプロジェクトによる変革にも大きな期待をしているという。

左から)豊島食プロジェクト推進協議会会長・山本彰治氏、土庄町長・三枝邦彦氏、Pepper、名前繋がりでトークショーを行なったお笑い芸人・コロコロチキチキペッパーズ

4.5兆円の経済効果をテクノロジーで取り込む

PSソリューションズ取締役の植野正徳氏は「急増する訪日外国人による経済効果を取り込むことが地方創生の切り札」とし、今回の「Tourism×Tech 地方創生プロジェクト」をそのための支援と説明する。その伸びしろは、政府の訪日外国人の旅行消費額の目標値を踏まえ、2020年までに4.5兆円増えると試算。特に外国人の延べ宿泊者数が増加する地方での伸びが期待できるという。

一方、訪日外国人の情報収集は、出発前は個人のブログやSNS、日本滞在中はスマートフォンでのインターネット検索が多い。しかし、地方の観光地や自治体では、人手に限界があるため、外国人旅行者が求めるタイムリーな情報発信やスマートフォン対応、多言語対応が難しい状況にある。

今回のプロジェクトはこの課題に向き合うもので、観光客の増加に繋げる具体策は以下の通り。

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訪日外国人に「豊島を知ってもらう」→「知った後に楽しんでもらう」→「その体験を発信してもらう」。この3つを有機的に繋げるループをテクノロジーで作る。観光客が観光地でSNSに投稿した写真を収集して公式ページに表示したり、分析したり、Pepperが撮影した記念写真をSNS上に自動投稿することも可能。

また、アンケートで収集した観光客の声をクラウド上に収集して分析し、次の施策に活かす。情報発信や収集・分析の自動化では日本オラクルのクラウドサービスを活用。Pepperの3か国語(日・英・中)対応やUXデザインはトランスコスモスが手掛けている。

「Tourtech(ツアーテック)」で観光体験作りも

PSソリューションズ取締役・植野正徳氏

記者会見で植野氏は、こうしたTourism×Technologyを「Tourtech(ツアーテック)」と標榜した。テクノロジーで誕生した新たな金融サービスを称する「FinTech(フィンテック)」を倣ったものだ。

今後は豊島以外でも対象地域を広げ、収集したデータを活用して次の施策に生かす方針。将来的には観光産業と地域を連携するプラットフォーム化を目指し、プロジェクトに参画するテクノロジー企業も増やしたい考えだ。

一方、実際に観光客の来訪を増やすため、観光の「コトづくり」にも取り組む考えを明かした。手始めは「スポーツ×テクノロジー」。例えば、周回20キロという豊島の地勢をいかしたハーフマラソン大会を、テクノロジーを融合させたユニークな形で開催することを検討している。ビジネスの仕組みのみならず、消費者の観光体験の部分でもテクノロジー企業による新たな価値創造が始まっている。

取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)

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