ANAグループは2017年4月1日、2017年度入社の新入社員のグループ合同入社式を実施。片野坂グループCEOは新入社員に向け、「安全が全て」という言葉を心に刻んでほしいと説明。社員ひとりひとりの安全や荷物の安全輸送、顧客の個人情報を扱ううえでの安全性などを含め、グループ全社で絶対に事故を起こさない信念と努力を共有した。
今年の新入社員数は2799人。メッセージは以下のとおり、概要全文を掲載する。
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2017年度 ANAグループ入社式 片野坂グループCEO挨拶(概要)
~ 安全がすべて。一人ひとりが個性を生かし自己ベストを発揮しよう ~
ANAグループ安全理念 ~安全は経営の基盤である~
今日、ここで深く、心に刻み込んで欲しいことがあります。それは、ANAグループにおいては 「安全が全て」。この一点です。
「安全は経営の基盤であり 社会への責務である」
全てのANAグループの役員・社員が、仕事をしている時も、休日でリフレッシュしている時も、決して忘れてはならない「安全理念」です。
今年は、全日空機と自衛隊機が衝突墜落した雫石事故から46年目、松山沖事故、羽田沖事故から51年目の年です。いずれもお客様と乗員全員の尊い命が犠牲となりました。
雫石事故以来、幸いにもこうした大きな事故を起こさずに今日に至っています。このことは、過去の事故を風化させず、安全第一の文化や風土を確立する努力を続けてきた成果であるかもしれません。しかしながら、世界においては、依然として航空機の事故やテロ、ハイジャックが発生しています。たとえ、他社の航空機事故であっても、人命を奪う事故は、あってはなりません。
お客様の命が無事であればいい、というものでは決してありません。高知空港でのボンバルディア機の胴体着陸から10年になります。冷静に着陸を果たし、お客様に怪我人が一人も出なかったことは、不幸中の幸いでした。しかし、私たちは、当該便に乗り合わせたお客様に、大変な恐怖、ご心配、ご迷惑をお掛けしました。ご家族はもとより、いつも航空機をご利用いただいてきた地元の皆さまのみならず、全国のお客様にご心配とご迷惑をおかけしました。
私は、この晴れがましい入社式の冒頭に、いつも航空機の事故の話をします。それは、社長の私を含め、現在の役員・社員の中で、お客様が犠牲となる大きな事故を経験したものがいなくなっているからです。人間の鍛錬において、経験を重ねることが大切だとよく言われますが、航空機の事故に関しては、それはあてはまりません。我々の先輩達は、過去の事故を常に忘れることなく、犠牲者のご冥福を祈る気持ちを全グループ社員で共有し、事故の原因と改善に学び、そして絶対に事故を起こさないという信念のもと、全員で努力してきました。
安全は、運航乗務員、客室乗務員、整備士、地上スタッフといった、航空機のオペレーションに直接携わる社員だけのテーマではありません。安全には、日常業務における社員一人ひとりの安全、お預かりした貨物の安全輸送、機内食や販売する食料品・物品に関わる安全・安心も含まれます。また、航空券や旅行の販売を通じて、お客様の大切な個人情報をお預かりする立場にもあります。
皆さん、もう一度、胸の中で復唱してください。「安全が全て」であると。
究極のチームワーク ~ANAグループ全員が仲間~
お客様から様々なご意見をメールやお手紙でいただきます。様々な感謝のメッセージが届く一方、お叱りもあります。
飛行機の出発が遅れた。理由は、大雨や大雪などの天候事由であったり、オペレーション事由であったりします。またお叱りは、機内食のことであったり、空港売店で購入した商品のことだったりもします。大雪で千歳空港が混乱に陥ると、その影響で飛行機のダイヤが乱れて那覇空港で出発便が遅れ、お客様にご迷惑をおかけすることもあります。
私たちの仕事は、究極のチームワークなのです。皆さんの仕事が、お客様はもとより、あなた以外の仲間に迷惑をかけることもある。今日ここに集う皆さんは、たとえ所属する会社は別々でも、仕事の繋がりのある仲間なのです。これから社会人として、ANAグループの一員として一歩を踏み出す皆さん、全員が仲間であることを胸に刻んでください。
新入社員へのメッセージ ~一人ひとりが個性を生かし自己ベストを発揮しよう~
ANAグループは、今日ここに集った会社以外にも多くの関連会社から成り立っており、その総合力で、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「お客様満足と価値創造で世界のリーディングエアライングループになる」ことを目指しています。
ANAグループは、これまで幾度となく様々な困難に出会い、そのたびに知恵を結集し全員が力を合わせて苦難を乗り切ってきました。この不撓不屈の精神、チャレンジ精神こそ、受け継いできたANAグループのDNAです。これからこのDNAを受け継いでいくのは、ここにいる皆さんです。
いよいよ今日から社会人生活のスタートです。
“誰もが最初は素人だ。” これは、ベストセラー「海賊と呼ばれた男」の主人公のセリフ。最近、人工知能AIが話題になっています。ディープラーニングの仕組みが、今や将棋や囲碁の名人も打ち負かすAIを生み、人間の仕事に取って代わる時代がきている。しかし、ロボットと皆さんは違う。ロボットはまったく真っ白の「さら」の状態に、プログラムを教え込んでいく。皆さんは、最初から「さら」ではない。個性がある。
親から受け継いだ資質、学校で学んだ知識、スポーツで鍛えた身体、芸術で磨いた感性。その個性に対して、皆さんの先輩が仕事を教えていきます。皆さんはロボットよりはるかに手ごわい。それはそれぞれの個性があるからです。私たちANAグループは、社員一人ひとりの様々な個性や多様性を尊重します。
今日、この入社式に臨んだ初心を忘れずに、ANAグループの一員であることの誇りと責任を大切に、まず小さな一歩から確実に歩み始めてください。
皆さんの今後の成長、自己ベストの発揮を期待しています。
以上
ANAグループCEO 片野坂真哉