みずほ総合研究所は、政府が2018年からの導入を検討中の「キッズウィーク」がもたらす経済効果に関する予測レポートを発表した。それによると、国内旅行消費の創出効果は0.4兆円程度になるとの試算結果に。一方で、この消費創出を実現するには、大人世代の有給休暇取得が大前提であり、それを支える職場環境整備や経営者側の意識改革が必須であるとの問題提起もおこなっている。
そもそもキッズウィークとは?
「キッズウィーク」とは、夏休みや冬休みなどの学校休業日の一部を他の時期に分散化させる取り組み。例えば、従来の休み期間を5日間短縮して別の月に移行することで、月曜から金曜までを挟む土日と合わせて新たな9連休を設定することなどを想定する。フランスやドイツなどでも実施されており、諸外国の例を参考に、日本でも近年議論を重ねられてきた。
特徴は「休暇時期を地域ごとに設定する」こと。それによって地域ごとの教育体制構築や観光需要の平準化、個人消費の底上げによる地域活性化にもつながることを期待する。併せて、経済団体や企業の従業員などがキッズウィーク時に有給休暇を取得し、大人と子供が一緒に休暇を過ごす機会の創出も重視。現在は5割程度にどどまる年次休暇取得率を、2020年には7割に引き上げたいとする政府目標にも寄与する仕組みづくりをおこなう考えだ。
全国3エリアで「分散」「混雑緩和」「ピーク需要緩和」の観点から試算
みずほ総合研究所では今回の試算にあたって、現在の学校休業(夏休み・冬休み)の長さに応じて3エリア・3種類の休業分散モデルを用意。これらについて、観光庁が算出した「新規旅行需要の創出係数(国内宿泊旅行=0.76、国内日帰り旅行=0.64)」などを利用して宿泊旅行と日帰り旅行の創出額を推計。休暇時期分散による創出額と混雑緩和、需要緩和による新規創出効果を算出した結果、消費創出効果は約0.4兆円となった。そのうち最も創出額が大きいのは、関東・北陸信越・中部地区における分散効果で約0.14兆円だった。キッズウィークによる国内旅行押し上げ効果の内訳は以下のとおり。
※今回の試算の前提となる、3エリアの分散モデルの考え方は以下のとおり。「冬休みを振り替える場合(北海道・東北)」「(夏休み前半を振り替える場合(関東・北陸信越・中部)」「夏休み後半を振り替える場合(関西・中国・四国・九州・沖縄)」に分けて試算を実施。例えば北海道・東北の場合、冬休み前半の一週間を閑散期に移行して新たな旅行需要を創出するとともに、他の地域の休暇を分散することで混雑緩和による新規旅行創出効果も期待できるとしている。
キッズウィーク成功のカギは、「親が子供に合わせて休暇を取得できるかどうか」
レポートでは、試算した新規国内旅行創出額を実現するためには、子供のみならず「大人が休める状況をつくる」ことが必須であることを説明。先例としてきた諸外国とは、有給休暇の取得率など日本は大きく異なる。これまで実施したアンケートでは休暇取得の分散効果について「効果がないと思う」「メリットは特にない」といった否定的な回答が6割以上を占め、むしろ「企業の経済活動等に支障が生じる」「休日の異なる地域に住む家族や友人に会えなくなる」といったデメリットを訴える回答もあったという。
同社では、2017年2月に始まった最終金曜早帰りを推奨する「プレミアムフライデー」について、現状では個人消費の押し上げ効果が限定的とする評価もあることに言及。「キッズウィーク」に関しても、職場環境整備や経営者側の意識改革が必須であり、ある程度強制力を持つ新たな制度設計を政府に期待したいとしている。