モバイル決済の現状と課題とは？都市部は店舗で高利用率、課題は「セキュリティ」　－日本銀行

2017年09月05日

日本銀行の決済機構局はこのほど、「モバイル決済の現状と課題」と題したレポートをまとめた。携帯電話やスマートフォンを活用したモバイル決済について、店頭での利用状況や利用者の声を調査。諸外国の現状と比較しながら、今後に向けた課題を提言するもの。

それによると、スマホなどを使った店頭モバイル決済は、日本で広く利用されているとは言い難い状況にとどまっている結果に。一方で、カード型電子マネーが普及拡大傾向にあることがわかった。また、利用のハードルとなっている要因として、約半数がセキュリティ面などに不安を感じている様子も明らかになった。

携帯電話型よりカード型電子マネーの利用が拡大

モバイルでの決済件数や決済金額を網羅する統計は存在していないため、同調査ではまず、利用状況を把握する目安として、電子マネー用の決済端末を用いたFeliCa方式の電子マネー携帯の利用台数を調べた。

電子マネー携帯の利用台数は、2007年以降2017年までで4倍近く増加しているが、これを上回る勢いでカード型電子マネーの発行枚数が増加。この結果、カード式や携帯など、すべての電子マネー発行数に占める電子マネー携帯のシェアは、2012年から伸び悩んでいる。一時は12％近くあった同シェアだが、2017年3月は9.4％となり、携帯電話型電子マネー利用率が総じて低下傾向にあることがわかる。

電子マネー携帯の台数推移は以下のとおり。

日本銀行：報道資料より

また日銀では、2016年11～12月に実施した第68回「生活意識に関するアンケート調査」の中で、店頭でのモバイル決済の利用状況について質問。その結果、携帯電話やスマートフォンを読み取り機にかざし、モバイル決済を行う機能を「利用している」人は、回答者の6％のみ。また、「機能はあるが利用していない」人が、全体の42％となった。

同アンケート調査からは、店頭でのモバイル決済利用者の属性も浮かび上がった。年齢・性別では、20～40代の男性の利用率が相対的に高く、全体の約2割を占める。一方ですべての年代で女性の利用比率は男性を下回った。また、60代以上ではモバイル決済機能について「そもそも知らない」人が多数を占めた。

地域別では、関東圏、特に東京都において、店頭でのモバイル決済利用率が最も高い。その要因としては、関東圏では電子マネーの保有率がそもそも高く、さらに都市部では店頭モバイル決済が利用できる店が多い点に言及している。

そのほか日本の特徴的な傾向として、カード型の各種キャッシュレス決済手段（電子マネー、デビットカード、クレジットカード）の保有枚数が多いことも浮き彫りになった。主要22か国を対象とした別の調査結果では、日本人の保有枚数は1人平均7.7枚でシンガポールに次いで多い。その反面、利用総額は22か国中14番目と少なく、現金志向が根強いこともうかがえる。

各国のカード保有率は以下のとおり。