新年を迎えるにあたり、大手旅行会社やOTAが2018年の旅行・観光マーケットの予測を発表している。人気の出るデスティネーションや宿泊施設など各社によってその内容はさまざま。各社のマーケットの特徴が際立つ内容は、各社が注目する市場をとらえているともいえる。
昨年末までに発表された各社の発表内容をまとめてみた。
トレンド予測1:2018年のキーワードは「健康」(リクルート)
旅行サイト「じゃらん」を運営するリクルートライフスタイルは、旅行業界のトレンド予測を発表。2018年に注目すべきは「旅先で健康になること」。「へるしい旅」だという。
リクルートのアンケート調査でも、「以前より興味関心が高まっていること」で、「健康・リラックス」(62.8%)は1位となっている。日ごろから健康のための意識をしている人は85.7%、「健康になる旅行」への興味関心がある人は70.9%にのぼっている。社会的にも政府の成長戦略で「世界最先端の健康立国」が掲げられ、スーパーフードやクロスフィットが流行するなど、健康志向が高まっている。こうした意識が旅行のスタイルにも変化を及ぼすとしている。
では「へるしい旅」とはどういうものか。健康志向のツアーでは「湯治ができる旅行」(47.7%)に次いで、「スローフードやマクロビが提供される旅行」(34.4%)、「ヨガができる旅行」(24.4%)が続く。健康と言えばシニア層のイメージが強いが、若年層も食やヨガを中心に関心は高い。
宿泊施設でもフィットネスやヨガのスタジオを展開するベンチャーバンクによる「ヘルスリゾート天空の庭 天馬夢」や、料亭宿からヴィーガン料理を提供する宿に転換した「湯河原リトリート ご縁の杜」など、健康をテーマにした新タイプの施設が増えており、人気を博しているという。
トレンド予測2:2018年の8大トレンド(ブッキング・ドットコム)
ブッキング・ドットコムは、旅行業界で起こる8つのトレンド予測を発表。1億2800万件以上のクチコミと26か国1万9000人以上を対象にしたアンケート調査をもとに8大トレンドをまとめたものだ。上記でリクルート社があげた「健康」も、そのひとつにあがっている。
- 最先端テクノロジーを活用し、事前に旅を「体験」
- バケットリスト(死ぬまでに一度は行きたい・やりたい)を叶える旅
- 思い出を巡る旅
- SNSやポップ・カルチャー巡礼旅
- 美と健康の旅
- コスパ重視旅
- 友達と思い出作り旅
- バケーションレンタル旅
「最先端テクノロジーを活用した事前の旅体験」については、回答者の29%が「AI(人工知能)に旅行計画を立ててもらうことに不安はない」と回答し、日本人も29%が肯定。「支払いの決断をする前に、VR等による疑似体験をしたい」との回答は世界が64%、日本人も45%が肯定している。このほか、「質問や疑問が解消してくれさえすれば、対応は人でも機械でも構わない」に50%が拘置するなど、旅行の手間や悩みが軽減されるテクノロジーの活用は、利用者の歓迎をもって浸透していきそうだ。
また、「バケットリストを叶える旅」「思い出を巡る旅」「思い出を作る旅」の3つからは、2018年も旅行において「体験」が重視されていることが表れている。バケットリストがある人は回答者の45%で、そのうち82%が「2018年にはそのリストにある場所へ行きたい」と回答。「思い出を巡る旅」では、特にミレニアル世代の44%が「家族旅行で行った場所へもう一度行きたい」としている。消費者が旅に抱く思いをいかに汲み取り、旅行実施へ誘うかが旅行業界に求められている。
人気の旅先ヒット予測1:問い合わせが増えたのは「ドバイ」「モロッコ」(HIS)
エイチ・アイ・エス(HIS)が発表したのは、「2018年ヒットしそうな旅先」。最近、問い合わせが増えた方面などについて、社員に実施したアンケート調査をまとめた。アンケートには937名の社員が回答。ランキングは以下の通りだ。
▼HISの2018年ヒットしそうな旅行先ランキング
- ドバイ(アラブ首長国連邦)
- モロッコ
- ロシア
- オーストラリア
- アイスランド
1位のドバイは女子旅での問い合わせが増加。世界一の称号の多い豪華なデスティネーションの割に、旅行料金は他の都市と比べても高くない点も人気の理由だという。また3位のロシアはサッカーワールドカップ開催地。そして1位~3位の共通点としては、中東と欧州、欧州とアフリカ、アジアと欧州など、交易路として栄えた独特の歴史文化的な魅力にも注目が集まっているという。
このほかHISでは、少数票の方面のなかから今後のトレンドになる可能性があるとして、「イスキア島(イタリア)」「クック諸島」「バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)」「アゼルバイジャン」の4方面をピックアップ。このうちアゼルバイジャンの首都バクーは「世界一バブルな都市」と言われ、ドバイにある世界一の高層ビル「バーシュカリファ(828メートル)」を超える1050メートルの超高層ビルの建設が予定されている。
人気の旅先ヒット予測2:
世界のトレンドがわかる旅先10都市(ブッキング・ドットコム)
次は世界大手のOTA、ブッキング・ドットコムのヒット予想。過去1年に旅行を経験し、今後1年間にも1回以上の旅行計画をしている26か国地域の人を対象にした、オンライン調査の結果をまとめた。世界の旅行トレンドが把握できる内容になっている。取り上げられた旅行先は以下の通り。
▼ブッキング・ドットコムの2018年人気がでそうな世界の旅先10都市
- 札幌(日本)
- ナッシュビル(アメリカ)
- ブカレスト(ルーマニア)
- ザコパネ(ポーランド)
- 台中(台湾)
- ブリスベン(オーストラリア)
- ボゴタ(コロンビア)
- ポートランド(アメリカ)
- リマ(ペルー)
- ハノーファー(ドイツ)
予測のなかでブッキング・ドットコムが指摘するのは、アジアでは大都市から地方へ転換。これまで日本は東京のナイトライフや都会のビル群などの人気が高かったが、2018年は札幌にシフト。また、同じく10都市に選ばれた台湾も、台北ではなく都会とローカルの雰囲気の両面が味わえる台中の人気が集まっている。
また、ポーランドのザコパネは日本では知られていないが、スキーリゾートとして有名な場所。この数年は夏のハイキングも増えている。ブッキング・ドットコムによると「健康」をテーマにした旅が年々増加しており、2018年は前年に比べて約2倍に増える見通しだという。
人気の宿泊先ヒット予測:予約数トップに東京、旅館の伸びが高く(Airbnb)
民泊仲介のAirbnb(エアビーアンドビー)が発表したのは、2018年の上半期の予約データに基づいた予測。予約数のランキングでは、東京が1位、大阪が2位で、民泊市場で日本の人気の高さが顕著に表れている。このほか、伸び率ランキングや宿泊施設のタイプ別など各種ランキングを公開。
▼Airbnbの2018年上半期の予約数ランキング
- 東京
- パリ
- 大阪
- ニューヨーク
- ロンドン
- ローマ
- オーランド
- マイアミ
- シドニー
- リスボン
▼Airbnbの人気宿泊先・増加率
- ロッジ 700%増
- 旅館 600%増
- ゲル・ユルト 155%増
- RV・キャンピングカー 133%増
- バンガロー 127%増
予約数の都市別ランキングでは大都市が中心になっているが、増加率では冬季五輪開催地の韓国・江陵市(2175%)が圧倒的な差をつけて1位に。また、予約が2倍、3倍に増えた旅行先についてAirbnbでは特徴があると指摘。例えばアジアでは、ベトナムのハノイ(212%)、ダナン(255%)など、歴史的建造物と世界レベルの設備が整った都市の人気が高い。中国も広州(190%)など、全土で急拡大している。
北米ではカナディアンロッキー周辺が急増しているが、ファーニー(179%)やケロウナ(170%)など、拠点以外の山間の町の人気が高まっている。一方で、米国に限るとナイトライフやローカルアートがブームとなっているインディアナポリス(256%)、コロンバス(254%)など、中西部の都市も増えるなど、民泊も都市から地方へのシフトが進んでいる。
このほか現地体験の傾向では、「フード&ドリンク」が一番人気で全予約の29%を占める。さらに自然や音楽(両方とも9%)も人気上昇中で、Airbnbでは来年はまだあまり知られていないとっておきの場所でのアウトドア体験や、ライブコンサートの人気が高まると見ている。