東京商工リサーチは、2017年(1月~12月)の旅行業と宿泊業の倒産状況を発表した。
旅行業:てるみくらぶが全体を押し上げ過去2番目の負債総額に
旅行業の倒産件数は合計28件で、前年より1件増加。2年連続で前年を上回った。特徴は負債総額が前年比465.0%増の215億7300万円と大きく膨らんだこと。てるみくらぶ(負債151億1300万円)と関連会社の自由自在(同34億円)がその85.8%を占め、全体を押し上げた。過去20年間を見れば、歴代最大のジェットツアー(同252億3500万円)が倒産した1998年の440億6400万円に次いで、2番目に高い水準となった。
▼2017年主な旅行業の倒産と負債額(商号:負債額/資本金/倒産原因/倒産形態
- てるみくらぶ:151億1300万円/6000万円/放漫経営/破産
- 自由自在:34億円/6000万円/他社倒産の余波/破産
- 京阪津ツーリスト:6億円/9900万円/販売不振/破産
- アバンティリゾートクラブ:4億9700万円/7200万円/販売不振/破産
- シナジーコーポレーション:3億5000万円/3000万円/販売不振/破産
- アバンティ・ウエスト:3億円/2100万円/販売不振/破産
- 旅人舎:2億4100万円/7000万円/販売不振/破産
- よしツアー:1億2600万円/1010万円/販売不振/破産
- オズインターナショナル:1億円/6400万円/過小資本/取引停止処分
- 東京さくらツーリスト:1億円/1500万円/放漫経営/破産
形態別では、事業消滅型の破産が25件で前年より2件増加。全体の89.2%。再建型の会社更生法と民事再生法は0件、取引停止処分が3件(前年1件)。東京商工リサーチでは、厳しい事業環境が反映されているとする。原因別では、販売不振が19件と最多で、既往のシワ寄せ(赤字累積)が3件、他社倒産の余波と放漫経営(事業場の失敗)が各2件。
また、休廃業・解散は64件で、倒産件数の2倍以上となった。このうち資本金が1000万円~5000万円未満が5割、1000万円未満と個人企業が4割。休廃業・解散件数は2008年以降、毎年60件以上で推移しており、特に小・零細規模の事業者を中心に高止まりしているという。
宿泊業:不況型倒産が約9割、都道府県別では長野県が最多
宿泊業の倒産件数は78件で、前年より3件減少。2年連続で前年を下回った。ただし、負債総額は前年比16.5%増の502億99800万円で、2年ぶりの増加となった。
形態別では特別清算が20件で、前年より4件増加。宿泊業の倒産の特徴として、本来の事業を別会社に移管し、新会社で営業を継続する傾向があるという。原因別では販売不振が49件、既往のシワ寄せ(赤字累積)が19件で、この2つを合わせた「不況型倒産」が全体の87.1%を占めた。
負債総額は前年比16.5%増の502億9800万円で2年ぶりに増加。リーガロイヤルホテル広島の旧運営会社RRHH(負債89億5100万円)と、リーガロイヤルホテル小倉の旧運営会社のRRHK(同68億1600万円)が、負債額上位2社だった。
地区別では、中部19件が最多で全体の24.3%。次いで、関東14件、九州11件、中国9件で、特に中国は前年の倍増となった。都道府県別では長野県が9件、静岡県が7件、北海道が6件。東日本大震災関連の倒産は6件で前年より4件増加。熊本地震関連は1件(前年は0件)だった。
また、休廃業・解散は152件で、倒産の約2倍に。ただし、2008年をピークに減少しており、2013年以降は200件を下回るようになった。
▼2017年主な宿泊業の倒産と負債額(商号/所在地:負債額/資本金/倒産原因/倒産形態
- RRHH/広島県:89億51万円/1億円/販売不振/特別清算
- RRHK/福岡県:68億16万円/1億円/設備投資過大/特別清算
- 東洋館/長崎県:37億円/5000万円/販売不振/破産
- MCH/岩手県:30億9100万円/3400万円/既往のシワ寄せ/特別清算
- AK/熊本県:18億5600万円/1000万円/既往のシワ寄せ/特別清算
- ゆあさ/群馬県:14億円/1000万円/既往のシワ寄せ/取引停止処分
- AKH/東京都:13億円/1200万円/販売不振/破産
- 喜多八/石川県:12億3200万円/1000万円/既往のシワ寄せ/破産
- ホテル雄山/長野県:11億6300万円/2100万円/販売不振/破産
- 山海荘/静岡県:11億円/300万円/販売不振/民事再生法