創業以来初となる予約サイトの全面リニューアルを発表した楽天トラベル。旅行取扱額(観光庁統計)で2位の国内トップOTAが、「新しいOTAを作る」意気込みで大規模なリニューアルを決行し、アジアのリーディングOTAの座を目指して舵を切る。
新旧のプレイヤーが入り交り、群雄割拠のオンライン旅行市場のなかで、同社の次の打ち手はなにか。リニューアルの背景と概要、今後の展望を、楽天株式会社 執行役員 ライフ&レジャーカンパニー ヴァイスプレジデント トラベル事業長の髙野芳行氏と、開発担当の楽天株式会社 執行役員 ライフ&レジャーカンパニーCTOの星野俊介氏に聞いてきた。※写真:楽天トラベル事業長 髙野芳行氏
リーディングOTAとして進化するために
楽天トラベルのサイト全面刷新は、スマホ化で変わるユーザートレンドなど時代の変化を踏まえ、現状のサービスをさらに進化させるのが目的。オンラインサービスで使用されるデバイスはPCからスマホへ移行し、テキストサイトから画像・動画中心のソーシャルメディアの時代へと変化するなか、髙野氏は「消費者の変化に真摯に向き合わなければ、選ばれるサービスにならない」と認識を示す。
もう一つのキーワードが、グローバル化。訪日客も増加するなかで、世界中のユーザーにとって使いやすく、選ばれるサービスへと変化する。髙野氏はインターネットの旅行サービスは国境がなく参入障壁が低いことを指摘。すでにグローバル競争は始まっており、「グローバルの巨大OTAと対等に戦える」(星野氏)存在を目指す。
現在のサイトは事業環境が現在と全く異なる創業時の設計が基盤にあり、今の時代に合わせにくくなっている。そのため、根本の設計思想から変え、消費者変化への対応と同時に、将来の展開にも対応できるプラットフォームへと進化させるリニューアルとした。5月に海外ホテル・海外航空券予約で開始し、9月をめどに国内宿泊施設などすべての予約で本格稼働する。
パーソナライズがベストマッチングを実現
リニューアルのキーワードは「シンプル」「モバイルファースト」「グローバル」。リニューアル後は「楽天トラベル 新春カンファレンス2018」で発表している通り、ユーザーの嗜好に合わせたパーソナライズ化をさらに進め、モバイルでも操作しやすいシンプルなUIを採用。ユーザーには幾多の選択肢の中から、自分にあった宿泊施設を見つけやすくし、宿泊施設には施設の特徴や集客したいターゲット層にあったユーザーを送客する。ユーザーと宿泊施設にとって最適な相手を繋ぐことで、双方の満足度を上げる「ベストマッチング」を実現するサイトとする。
そしてこのベストマッチングのキモであるパーソナライズの精度は、「楽天グループのOTAだから実現できるもの」と、髙野氏は強調する。
パーソナライズ化は今、多くのオンラインサービスが取り組むトレンド。過去の利用実績や閲覧履歴などで個人の嗜好を分析するが、旅行は他の一般的なECサービスに比べると利用頻度が少なく、データ量が少ない。しかし、楽天トラベルは「楽天市場」や「楽天カード」など楽天経済圏の他サービスのデータも活用しやすい。多様にして多量のビッグデータを分析することで、ユーザーをより深く理解した提案になるという。
髙野氏は「ユーザーが楽天グループから受け取れる利益を提供する。個々のユーザーにとっての価値になるレベルまで落とし込み、サービスを変える。これに追いつけるOTAはそう多くはないだろう」と自信を示す。
だから髙野氏は、パーソナライズ化を進めることで、楽天トラベルがより選ばれやすいサイトになると見る。「ユーザーが自分の趣味嗜好を理解できるサイトを選ぶようになり、そのための強い仕組みを持つサイトに直接、来るようになる」というのがその理由だ。
宿泊施設の多様な魅力をわかりやすく表示
今回のリニューアルでは予約画面も大きく変わる。宿泊施設のほか、フライトやレンタカー、アクティビティなどを、ワンストップで予約ができるようにするほか、宿泊予約では宿泊施設の選択後に、「部屋タイプの選択」、食事やスパなどの「オプションの選択」を行なえるようになる。最後に早期割引やポイントアップキャンペーンなど、利用できる「プロモーション」が表示され、複数ある場合はそこから選択して予約となる。
これによりユーザーは、希望の客室と利用したいサービスを自由に組み合わせて購入できるようになる。
これにより、ユーザーは自身の好みに合わせて自由に宿泊や旅行をデザインすることができるようになる。「より多様なニーズに対応できる」と高野氏は説明する。また部屋とオプションを別々に選択するという形式は海外のサイトでも一般的で、海外のユーザーにもわかりやすい。
髙野氏はこの変更について、「宿泊施設が本来提供している各種サービスを分解してわかりやすくユーザーに示すことになり、利用を促進する効果もある」と説明する。宿泊施設側は、数あるサービスやオプションのうち何がユーザーに好まれているのか、予約につながっているのか、より明確にわかるようになるので、その後のマーケティング活動にも役立てられる。
リニューアルで目指すのは「アジアのリーディングOTAになること」。「マルチカントリー、マルチランゲージ、マルチカルチャーの思想で、どの国のどの年代のユーザーも使いやすく、満足する予約サイト」が真に目指す姿だ。
宿泊施設の使い勝手良く、時代にあわせた制度に
リニューアルでは、宿泊施設による楽天トラベルへの情報入力・更新にかかわる業務の軽減も目指す。たとえば、宿泊施設が管理するカスタマイズページは写真や動画を中心にテンプレート化し、自社施設の魅力や特徴を誰でも簡単に表現し、最新情報をすぐに掲載できるようにする。星野氏は、「宿泊施設も使いやすいサイトを目指す」と語る。
あわせて宿泊施設との契約体系もシンプル化する。従来はアロットメントに応じた3つのプランごとに手数料率を設定していたが、新制度ではこれらを廃止。日本語サイトからの予約については、宿泊客の人数に応じて「1名利用」の場合は一律8.64%、「2名以上利用」の場合は9.99%(いずれも消費税・ポイント分込み)の2パターンのみを設定する形式に。また「最低・同一料金保証」と「同一客室数保証」を設定し、ユーザーによりよい商品を提供する環境を整える。決済と処理サービス手数料についてもシンプル化し、決済手数料は一律2%、決済処理サービス料は全て無料に変更する。
9月のリニューアルにあわせて、サイトには楽天グループの民泊事業会社、楽天LIFULL STAY株式会社が契約する国内民泊施設を掲載する。6月の合法化によって、宿泊の選択肢の一つになる民泊を一緒に掲載することで、「民泊を目的に訪れたユーザーにも、ホテルや旅館の情報を閲覧する機会を提供することになり、より多くのユーザーが集まるサイトになる」と判断した。
髙野氏は、激変するオンライン旅行サービスの時代を踏まえ、「やるしかない。ここで進化しないと5年後はない」と力を込める。次世代のリーディングOTAとして、旅行者にも宿泊施設などのパートナーにも役立つサービスであり続けるための進化を、パートナーと共に遂げようとしている。
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記事:トラベルボイス企画部