国内の宿泊需要の拡大により、近年、ホテル不足が叫ばれてきたが、新たなホテルの開業ラッシュによって解消される方向にあるようだ。複数の調査・試算結果が発表されている。
まず、みずほ総合研究所は2018年1月26日、「インバウンドの新たな注目点とホテル不足の試算アップデート」を公開した。
同レポートでは2020年のホテル客室需給バランスについて、新規オープン計画をアップデートし、再計算を実施。客室供給が計画通りの場合、日本人および外国人の宿泊需要が予測通り、または上振れ、下振れでも、ホテルの客室は不足しないとの計算になった。これは、ホテルの新規開業計画の増加によるものだという。
そのため、ホテルの供給数が下振れする場合、需要に応じて地域によってホテルが不足するとの試算がされた。ただし、2017年9月の前回調査時と比べると、需要逼迫の懸念は後退しているという。とはいえ、建設業の人手不足によるホテル建設の遅延や旅行需要のシーズナリティを考慮すると、試算よりもホテル不足が深刻化するリスクはあると指摘する。
同レポートでは2018年の注目点として、民泊新法の影響を提示。180日の営業日規則や自治体の規制などで民泊サービスが急激に拡大する可能性は低いとするものの、観光庁の調査では訪日外国人旅行者の約12.4%が民泊を利用しており、ホテルの需給の緩和要因になっている。
また、米国テキサス州のデータを用いた実証分析結果(Zervas et al 2017)によると、民泊参入が増えた場合に、低・中価格帯の非ビジネス・独立系のホテルで、収入減の影響が発生するという。
不動産サービスをおこなうCBREもこのほど国内ホテル市場に関する2020年の見通しを発表した。新たに開業が予定されている施設の影響により、東京23区・大阪市・京都市の客室数は38%増加。東京では3500室程度の客室数が不足する一方で、大阪や京都では1万室以上の客室ストックが需要を上回る可能性があるとの試算を示している。