ハワイ州ビッグアイランド(ハワイ島)のキラウエア火山からの溶岩流出が続いている。米国地質調査所(USGS)は、2018年5月15日、警戒レベルを「レッド」に引き上げ、大規模な噴火の恐れがあると警告した。その影響は、地元観光産業への打撃が数百万ドル規模に膨らんでいる。このほどAP通信が報じた。
ハワイ島観光局エグゼクティブディレクターのロス・バーチ氏によると、2018年5~7月のキャンセル総額は現段階で少なくとも500万ドル(約5.5億円)に及ぶ。ホテル、火山見学やジップライン、グラスボートツアーなど各種観光アクティビティの予約ペースは、例年より50%減で推移。火山から129km離れた同島の西海岸コナ地区でも、複数のクルーズ船が寄港を取りやめるなど、影響が出始めている。
観光はハワイ最大の産業であり、地元経済の大部分を担う。特にハワイ島への観光需要は、他の隣島を超える勢いで伸びており、旅行客による昨年の消費額は約25億ドル(約2750億円)に達していた。
ハワイ島を代表する観光スポットでもあるハワイ火山国立公園だが、園内の大部分のエリアでは、現在も頻発地震が続いていることや、頂上での噴火に備えて閉鎖。5月以降、火山周辺にはこれまでに20ほどの亀裂が出現しており、5月3日以降に自宅からの避難命令を受けた住民は計2000人ほど。これまでに溶岩流によって倒壊した家屋は20数軒にのぼる。
現地の防災関係者によると、住宅地が広がるラニプナ・ガーデンズ地区の南西で出現した火道からは、二酸化硫黄が出ており、近づくのは危険な状態が継続。ガスを吸うと呼吸困難に陥る可能性があるため、近隣住民には避難命令が出ている。ハワイ島最南端に位置するカウ地区では、一時、火山灰警報が発出された。
キラウエア火山の東側面に位置するレイラニエステート地区周辺でも、複数の亀裂ができるなど地表の形状が変貌しており、周辺には火山ガスが充満。ハワイ火山観測所では、まだ予断を許さない状況としている。
なお、ハワイ州観光局では、火山噴火に関する最新情報を日本語で発信。直近では2018年5月15日16時現在の情報が掲載されている。また、外務省でも注意喚起を促している。