米国での旅行予約サイトのテレビ広告費、トリバゴは5割減、エクスペディアは3倍増以上に拡大【外電コラム】

米国でテレビをつければトリバゴ、エクスペディア、トリップアドバイザー、ホテルズドットコム、ブッキングドットコムのコマーシャルばかりが目に付く――と感じるときがあるだろうか。もしそうなら、以下の数字を見て驚くかもしれない。米国における各社合計でのテレビ広告費は、むしろ昨年の夏より減っているのだ。ここでは、OTAを中心とする広告費について分析してみたい。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

テレビ調査会社のiSpot.tv推計によると、オンライン旅行会社(OTA)各社が2018年7月に全米ネットワークのテレビ広告に投じたコストは、前年同月比13%減の7700万ドル(約84.7億円)だった。最大の要因はトリバゴによる広告削減。トリバゴのホテルメタサーチオークションのパートナーであるブッキングドットコムがこれまでの方針を転換し、同サイトでのマーケティング活動を縮小したことが影響している。

iSpot.tvが「旅行サイト」に分類しているOTAトップ5位による7月のテレビ広告費を比べると、前年同月比で変動幅が最も大きかったのはトリバゴだ。6月29日から7月30日までの米国におけるテレビ広告費は2100万ドル(約23億円)で、なんと約半減(51.8%減)を実施。

米主要OTAによる2018年7月のテレビ広告費(出典:iSpot.tv)

ブッキングドットコムは同33.3%減の推定720万ドル(約8億円)。同じグループ系列のプライスラインも全米ネットワークでのコマーシャル規模を11.3%縮小し、470万ドル(約5億円)とした。

ブッキング・ホールディングス傘下の2大ブランド、ブッキングドットコムとプライスラインによるテレビやブランド広告の削減は、少々意外だ。両社とも最近まで、テレビ広告を重要視していると話していた。だが様々な流通チャネルにおける広告展開において、蛇口をひねって大放出したり、あるいは減らしたりと調整を繰り返すのは当然の戦略であり、一時的な状況かもしれない。ブッキング・ホールディングスのマーケティング費用の詳細は、第2四半期決算(2018年8月8日発表)を参照したい。

エクスペディアとホテルズドットコムは大幅増

社内事情を抱えたトリバゴとはまったく逆の方向へ動いているのがエクスペディア・グループの2社、エクスペディアとホテルズドットコムだ。

同じ時期、エクスペディアは米国市場でのテレビ広告費を同244%増の1480万ドル(約16.3億円)に拡大した。それでもトリバゴの圧倒的な広告費、2100万ドル(約23億円)には遠くおよばない。ホテルズドットコムは同104%増の920万ドル(約10億円)を投入した(iSpot.tv推計)。

エクスペディアが投入した7月のテレビ広告は、ほとんどが「Rushed」シリーズで、追加購入に対する新しい割引サービス「アドオン・アドバンテージ(Add On Advantage)」を宣伝する内容だった。航空券またはパッケージツアーを予約した人に限り、その後の追加購入分に特別割引が適用され、しかも期限は出発当日まで有効。だから「急いで(rushed)選ぶ必要がない」とアピールしている。

エクスペディア Add On Advantage(Youtube:約15秒)

トリバゴの広告からいつもの“顔“が消えた

半分に削減したとはいえ、相変わらずOTA最大のテレビ広告費を投入しているトリバゴの米市場向けコマーシャルでは、全体の60%近く、1060万ドル(約11.7億円)分が「A First Person Experience」シリーズだった。

このコマーシャル・シリーズは、色々な意味で要注目だ。例えば、米国におけるトリバゴ宣伝の“顔”となってきた俳優、ティム・ウィリアムズが登場していない点だ。

コマーシャルで流れるロバート・ブリアンの歌「Now You Can Feel It」は、パーソナライゼーションと青春がテーマ。ホテルを探すときに、例えばマッサージ(明らかにアメリカ人ではないアクセントで発音)、あるいはセーリング、ハイキング・トレイル、レストラン、さらには「パーティーピープル」など、それぞれの嗜好に対応してくれる宿泊施設をどうやって検索して見つけるかという内容だ。

ユーザー提供のコンテンツを活かしているのも特徴だ。「すばらしく清潔だって書いてあったから、私好みの、ゆっくり眠れるホテルだって分かる。ホテル?トリバゴでしょ」とナレーションが続く。

trivago - A First Person Experience(Youtube:約1分)

トリバゴが7月に米国で展開したテレビ・コマーシャルの中で、金額ベースでのトップ10位のうち、2本を除き、すべてウィリアムズなどの俳優や有名人が登場している。スペイン語版のコマーシャル4本には、スペイン出身の俳優、ゴンザーロ・ペニャが出演した。しかし1位の「A First Person Experience」シリーズにウィリアムズは登場しておらず、2位の「Rest Easy」シリーズでは、音声ナレーションのみ担当している。

トリバゴによる2018年7月のテレビ広告費とその内容(出典:iSpot.tv)

とはいえ、過去にも同氏が登場しないコマーシャルはあったが、息長くトリバゴの“顔”を務めてきた。プライスラインの顔、ウィリアム・シャトナーに負けていない。

※編集部注:この記事は、米・観光專門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:Trivago and Booking Slash U.S. TV Ad Spending

著者:デニス・シャール(Dennis Schaal)氏

※円換算は1ドル110円としてトラベルボイス編集部が算出した。

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