米調査会社のニールセン・カンパニーと中国モバイル決済大手「Alipay」はこのほど、共同調査レポート「2018年中国人アウトバウンド観光客のモバイル決済動向」を発表した。中国人観光客によるモバイル決済の利用事例や海外旅行での観光消費などについてとりまとめたもの。
それによると、中国経済の成長と国民所得の増加に伴い、2018年の中国人海外旅行者数は13.5%増の1億4000万回を達成。消費先もますます多様化し、海外旅行中の一人当たりの消費額は2018年の6026ドル(約66万円)から、2019年には6706ドル(約74万円)に拡大するとの推計もある。
そのような中、中国では「Alipay」に代表されるモバイル決済ブランドの成長が顕著となっており、モバイル決済各社のサービスも向上。中国人海外旅行者の約7割(69%)が海外でのスマホ決済を利用する一方、店舗側の導入も急速に浸透しており、海外旅行中のモバイル決済で利用者にメリットが与えられるようなサービスの提供も拡大している。
今回のレポートで得られた5つの洞察は以下のとおり。
1. 中国人旅行者の旅行頻度はさらに上昇、体験や品質を重視する消費者になっていく
北京や上海など大都市圏(1級都市)住民にとって、香港やマカオ、日本、韓国といった近距離兼への旅行はすでに広く浸透。現在は、それに続く2級都市市民が海外観光市場の成長をけん引している状態といえる。中でも1990~1999年生まれは、中央アジアや北欧等、ほかの中国人にとって大胆な旅行を好む傾向にある。
消費パターンは前年から大きな変化はなく、3大消費分野はショッピング(25%)、宿泊(18%)、飲食(18%)。一方で、中国人買い物客が明らかに「質」へのこだわりを強めつつあり、本国で見つからない製品を探したり現地での買い物経験を楽しんだりする傾向もみられる。
2. モバイル決済を活用するのは、ミレニアル世代からシニア層までの広範囲にわたる
中国人海外旅行者によるスマホ決済利用率は前年比4%増の69%となり、全体の3分の2に至る。そのうち32%が直近の旅行でモバイル決済を利用しており、2018年に初めて現金決済を上回った。
世代別ではミレニアル層が中心であるものの、いまやシニア層までがモバイル決済を利用。例えば、1960年~1979年に生まれた40・50代も68%が海外でモバイル決済を利用した。
3. モバイル決済が、中国人旅行者の消費を促進、ローカルビジネス活性化もけん引する
調査によれば、「海外旅行中、地元でスマホ決済が利用できるならそれを利用したい」との回答が94%。また「モバイル決済が利用できれば、出費を増やすことにつながるだろう」との回答が93%に至った。これらの割合はいずれも前年よりも増加している。
この傾向を裏付けるように、Alipayを採用した店舗の約6割が「モバイル決済システム導入後に来店数と売り上げの両方が増加した」との結果も。
4. モバイル決済が浸透するに伴い、海外店舗での導入が加速
現在、シンガポール、マレーシア、タイでは、中国人観光客がよく訪れる地域の店舗の58%がモバイル決済を受け付けており、うち70%が中国系モバイル決済サービスを導入済み。2016年時点では、中国系モバイル決済に対応する店舗は12%だったことから、過去2年間の急速な成長がみてとれる。
また、店舗のオーナーの9割が中国観光客にモバイル決済の可否を尋ねられた経験があると回答。中国人旅行者の受け入れ拡大のためにモバイル決済を導入したとしている。
5. 今後は、さらに多くの店舗が中国系モバイル決済ソリューションを導入の見通し
2018年、中国人観光客の6割以上がシンガポール、マレーシア、タイからヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアにわたる旅行先でスマホ決済をおこなっている。
また、現在まだ中国モバイル決済ソリューションを導入していない店舗のうち55%で導入意欲があり、6割が「知り合いの店舗にも進めたい」と回答した。
この調査は、2018年に海外旅行を経験し、2019年も再び海外旅行を予定する中国人を対象に実施したもの。1級、2級、および3級都市に住む20〜50歳の2806人が対象。一方、シンガポール、マレーシア、タイで中国人がよく訪れる人気観光地の商店主1244名を対象とした調査も実施。対面インタビュー、デプスインタビューなどもおこなった。
同レポート詳細は以下から参照できる。