大阪で2019年10月24日から27日まで開催された「ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2019」の初日、「TEJ 観光大臣会合」が行われた。
同会合の開催は一昨年、昨年に続く3回目で、19カ国の観光大臣・観光行政トップと4国際観光組織の代表5名の計24名が参加。参加国は昨年の12カ国より7カ国増と、過去最高となった。参加国及び観光組織は以下の通り(アルファベット順)。
- 参加国:ブータン、カンボジア、エジプト、フランス、ジャマイカ、日本、リトアニア、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、フィリピン、南アフリカ、スイス、ウガンダ、アメリカ、ウズベキスタン、ベトナム)
- 参加組織:アドベンチャートラベル・トレード・アソシエーション(ATTA)、太平洋アジア観光協会 (PATA)、国連世界観光機関(UNWTO)、世界旅行ツーリズム協議会 (WTTC)
会合では「人と文化による地域活性化」をテーマとして、各国から取り組みの紹介が行われた。マレーシア観光芸術文化大臣のダト・モハマディン・ビン・ケタピ氏からは、民家に滞在する同国の観光プログラム「ホームステイ・エクスペリエンス」に年間4000人が参加し、合計650万米ドルの収入を地域にもたらしている事例が紹介された。モンゴル自然環境・観光大臣のツェレンバト・ナムスライ氏からは、観光業従事者を対象とした政府の無料職業訓練に1万人が参加し、失業率の改善に役立っている事例などが共有された。
フィリピン観光大臣のベルナデット・ロムロ・プヤット氏は、フィリピンでは持続可能な観光の推進に官民及びコミュニティの連携が生かされ、その具体的な取り組みとなった2018年のボラカイ島の浄化作戦については「他の国でも、観光地の浄化を促す契機となった」と述べた。
米国商務省のナショナルトラベル&ツーリズムオフィスディレクターのイザベル・ヒル氏は米国では、観光客の受け入れキャパシティの決定など観光に関する意思決定はすべて地域に委ねられているとして、「こうしたボトムアップのアプローチが米国の観光の特徴」と述べた。
日本からは田端浩観光庁長官が登壇し、日本で活用できる観光指標の策定に向けて、観光庁が現在検討を行っていることを明らかにした。
アドベンチャーツーリズム組織(Adventure Travel Trade Association/ATTA)CEOであるシャノン・ストーウェル氏は、「観光による地域活性化に必要なのは、官民がコミュニティの声をよく聞くことだが、この作業には非常に時間がかかる。効率優先ではない長期的な観点からの取り組みが不可欠」と述べた。
世界旅行ツーリズム協会(WTTC)理事長兼CEOのグロリア・ゲバラ・マンゾ氏は、「観光は気候変動への対応、政情不安の防止、持続可能な成長の3つの課題に取り組む必要がある」と述べ、「全世界のGDPの約10%を生み出す観光産業の将来は明るいが、この数字を当然と考えず、今後も官民を超えた協力が必要」と語った。
モデレーターを務めたUNWTO事務局長スペシャルアドバイザーのアニータ・メンディラッタ氏は、日本を襲った台風被害にふれ、「こうした災害時は、国同士や官民などあらゆる連携が一層求められる。好調な時だけでなく困難な時期についても、観光の活用について各国の経験の共有が求められる」と述べた。
国連世界観光機関(UNWTO)上級部長のジュウ・シャンジョン氏は今回の会合で行われた議論について「持続可能な開発目標(SDGs)の達成に大きく貢献すると確信している」と述べ、同じくUNWTO事務局長のズラブ・ポロリカシュヴィリ氏は「今回得た知見を、参加していない国にも広く共有したい」として、UNWTOではこの会合を受け、来年から地域観光を促進する「ルーラル・ツーリズム」のプロモーションに力を入れていく意向を明らかにした。