世界の観光組織らの「観光危機管理委員会」が雇用維持へ提言、各国政府に具体な行動を求める

国連世界観光機関(UNWTO)は、第3回となる「グローバル観光危機管理委員会」を開催し、各国政府に対して、言葉だけでなく、実際の行動によって、新型コロナウイルスによって苦境に陥っている観光関連業の雇用を守るべきだとする提言をまとめた。

グローバル観光危機管理委員会は、新型コロナウイルスの危機に対応するため、UNWTO加盟国、世界保健機関(WHO)のほか、UNWTOの加盟団体代表、国際航空運送協会(IATA)、国際民間航空機関(ICAO)、クルーズライン国際協会(CLIA)、国際海事機関(IMO)、国際空港評議会(ACI)、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の代表者で構成されるもの。

委員会は、あらゆる産業が経済的損害を被っているが、そのなかでも観光は最悪の分野に入るとの認識を示したうえで、UNWTOは各国政府に対して、社会のなかで最も被害を受けている業界の雇用と命を守るために、できる措置はすべて実施していくことを求めている。

具体的には、各国に対して、観光業が現在の難局を生き残り、将来の回復に向けた幅広い取り組みを行えるように、観光産業関連の税制や雇用政策の見直しを要求した。

今回の委員会は、さまざまな国際的な機関が新型コロナウイルス対策に向けた動きを見せていることから、各国政府に対して、より具体的な措置を取ることを求めるために招集されたもの。国際通貨基金(IMF)と世界銀行は経済・金融での対応策をまとめ、欧州委員会はEU加盟国間の政治的協力関係強化を確認。2020年のG20議長国であるサウジアラビアは、国によってパンデミック対策で財政的な格差があることから、各国政府、民間企業、人権団体などに対して総額80億ドル(約8607億円)の寄付を求めた。

また、UNWTOは、現在世界の96%でなんらかの旅行規制が実施されていることから、安全性が確認され次第、速やかにその規制の緩和や取り下げ行うように求めている。また、今後加盟国に向けて、観光市場の回復を進めていくうえで必要な措置をまとめた「リカバリー・テクニカル・アシスタンス・パッケージ」をまもなく発表する予定。

なお、グローバル観光危機管理委員会の開催に先駆けて、UNWTOのスラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は、世界に向けてメッセージを出している。

「観光は、世界のあらゆる地域で明るい将来を築いていくための重要な柱になっている。世界の観光産業はこれまでもさまざまな困難から回復してきたが、そのたびに観光の重要性が認識されてきた。世界の観光先進国であるヨーロッパでは、昨年4070億ドル以上(約43.7兆円)の観光収入があり、2700万人以上の雇用を創出した。観光産業での雇用は、コミュニティーのライフラインとなっている。観光が持つ特別な力を再構築するためには、言葉ではなく、具体的な取り組みが求めてられている。観光は再び力強く成長していくことは間違いない。しかし、それには、各国政府や国際機関による多大な支援が必要となる」。

※円換算は1ドル107円でトラベルボイス編集部が算出。

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