日本ホスピタリティ・アセットマネージャー協会(HAMA Japan)は、新型コロナウイルス感染拡大で大きな影響受けている日本のホテル業界に向けて、いち早く回復に向かっている中国の状況を紹介するウェビナーを開催。HAMA China代表でHuatian International Hotel Management 社長の周濤氏が中国の最新状況を説明した。
HAMAとは、アメリカで1991年に設立されたホスピタリティ・アセットマネジメントのプロフェッショナル組織。ホテルオーナー、ホテルアセットマネージャーなどが会員で、HAMA Japanは海外初の支部として発足した。周氏は、日本を含めた世界各地のホテルで運営からアセットマネジメントまで30年近い経験を持つ人物だ。
周氏はまず、中国のホテル稼働率の状況について説明。1月中旬には60%~70%と高い水準で推移していたものの、新型コロナウイルスの影響が出始めた春節(旧正月)連休から急激に予約キャンセルが増加し、下旬には一気に90%近く下落した。その後、3月中旬から回復を始め、下旬にはこの時期に急激に落ち込んだアメリカやヨーロッパを逆転。5月9日時点で36.6%まで回復した。6月に入ると、感染状況の落ち着きとともに、稼働率もさらに改善。60%ほどに回復するのではないかと見られている。
ただ、5月を見ると、火曜日から木曜日は企業活動の再開で出張などで稼働率は高くなっている一方、週末はレジャー需要が戻りきっていないことから相対的に低い傾向。これは「明らかなパターン(周氏)」で、日本もこれから同じような現象が起きるであろうと予測した。
中国政府は、旅行再開にあたって、まずは同じ省内での移動のみを許可していることから、周氏は、「北京、上海、杭州、広州、省庁所在地から車まで1~2時間以内のホテルは恩恵を受けている」と明かした。5月の連休に黄山など観光地に旅行者が殺到する状況が日本でも報道されたが、それは入場料無料や割引きをしていたためで、「現在は人数制限をしている観光地も多い」という。
需要低迷期に中国のホテルが取組んでいること
また、周氏は、需要が低迷するなか、中国のホテルはさまざまな付加価値を提供する取り組みを進めているとし、いくつかの事例を紹介した。たとえば、シェラトンはビジネス支援会社24 Sildesと提携し、顧客向けにパワーポイント(PPT)の作成サービスを始めた。また、周氏のホテルでは、中国最大手のデリバリー会社Meituan (美団)と提携。ホテル内のレストランの料理を近隣にデリバリーするサービスを始めた。周氏によると、「高級ホテルでは、こうした付加価値サービスを始めているところは多い」という。
このほか、周氏は「このような時期だからこそ、普段できないことをやるべき」と話し、たとえば、セールスキットの刷新、宿泊者が少ないからこそできる施設写真の撮り直し、普段できない修理、小規模なリノベーションなどを挙げた。さらに、従業員教育でもいい機会として、周氏のホテルでは、従業員向けにオンライン教育やレベニューマネジメント訓練なども実施したという。
周氏は、今後の日中間の移動についても言及。「今年10月の国慶節までに、お互いの国境開放は十分にありえる」との私見を述べ、中国のアウトバウンドが再開すれば、衛生水準の高い日本がタイを抜いて最も人気の高いデスティネーションになるとの見通しを示した。
さらに、中国のホテル開発案件について、「みんな苦しい状況」との見解を示したうえで、「今年から来年にかけて、売却やリブランドが活発化してくるのではないか」と予測。そのなかで、ホテル経営では、より精度の高いアセットマネジメントが求められると強調した。