中国で10月1日から2020年国慶節の大型連休が始まった。例年であれば、何百万人という中国人が海外旅行に出かけるが、今年は新型コロナウイルの影響により依然として海外旅行が制限されていることから、国内旅行が盛況になる見込み。中国旅行大手シートリップ(Trip.com)は、人口の40%にあたるおよそ6億人が国内の旅行に出かけると予測している。
それでも前年の7億8200万人と比較すると25%の減少。中国政府のデータによると、昨年の消費額は6500億人民元(約9兆7500億円)にのぼった。
武漢で発生した新型コロナウイルスは世界中に広がり、現在のところ3400万人以上が罹患し、死亡者は100万人を超えている。中国でも、都市内の移動も含めて国内旅行は今年の春節以降制限されてきた。中秋節と重なる今年の8日間の連休は、中国の観光産業が本格的に回復するかどうかの試金石になる。AP通信がその様子を伝えている。
観光施設は定員75%まで、鉄道利用は1億800万人
中国は世界で最大の国内旅行消費市場。地方政府も消費者向けにアトラクションで使える割引クーポンなどを発行し、旅行需要を喚起している。
フレックス時間で働くデザイナーのZhao Kerui氏は、毎年数回海外旅行に出かける。昨年はマレーシアと日本を訪れた。今年も、イスタンブールと韓国の済州島に旅行する計画だったが、今年はパンダの里として知られる成都とタワーカルストが林立する桂林に行くことを決めた。
Zhao氏は「海外旅行に行けば、行き先でも、帰国後も半月もの隔離が求められる。1ヶ月もの期間、何もできなくなる」と話す。
上海のサイエンスリサーチーのCao Ke氏は毎年国慶節はタイのプーケットで過ごしてきた。今年は福建省の海岸線を巡るつもりだ。「国慶節は、国内はどこも混んでいるし、宿泊費も食費も高くなるから、いつもの年なから、海外に行くんだが」と明かす。
こうした感情は、海外に行ける余裕のある多くの中国人が抱いているものだ。しかし、現在はフライトのキャンセルや隔離が壁となっている。中国人旅行者に最も人気のあるタイは、4月に国際線の乗り入れを禁止し、現在でも完全な再開には至っていない。
シートリップでは、今年の中国人旅行者は上海のディズニーランドや成都など国内で人気のデスティネーションに殺到することになるだろうと見ている。
中国では8月16日以降、国内での新規感染者は報告されていない。文化観光省は9月末に観光施設の制限を緩和。旅行中のソーシャルディスタンスの確保を求めているが、収容可能人数を定員の75%まで認めることにした。
今年第2四半期の人気観光アトラクションの旅行者数は前年同期比159%増となった。7月と8月に地方やリゾート地に旅行に出かけた人は昨年の90%レベルにまで回復している。
アリババグループのOTAフリギーのデータによると、割引クーポンの効果もあり、ホテルの予約数は前年よりも50%多く、国内線の予約は前年とほぼ同等となっている。
鉄道当局によると、9月28日から10月8日の期間、1億800万人、1日平均1000万人が鉄道を利用する見込みだという。それでも、鉄道と航空の利用者数は前年を下回ると予測している。再び感染者が出た場合、いつ移動制限が復活するか分からないからだ。
Zhao氏は、他の中国人と同様に、今後数ヶ月は国内旅行にとどめるつもり。「正直なところ、海外に行こうが、国内を旅行しようが、リラックスできるなら同じこと」だからだと話す。
※人民元円換算は1人民元15円でトラベルボイス編集部が算出