国内旅行者の誘致で重視すべきことは? インバウンド消滅の今だからこそ考えたいマーケティング戦略【外電】

世界中で観光目当ての旅行者によるホテル予約が、ゆっくりと回復に向かっている。マーケット動向を左右するレジャー客の動きを見ると、近場からの旅行需要が活発になっていることが分かる。久しぶりの旅行では、自宅からすぐ近くを行先に選んでいる。

このトレンドにより、デスティネーション・マーケティングを担うDMO(デスティネーション・マーケティング組織、観光地域づくり法人)には、今まで以上に地域コミュニティ内での「アカウンタビリティ」、つまり活動内容や方針についての説明責任が求められる時代となっている。

飛行機で遠くからやってくる旅行者が激減する状況下では、デスティネーション・マーケティングのやり方も従来と同じではありえないことを理解しよう。DMOには、地域マーケットにおける自らの地域に対する説明責任が、これまで以上に重くなっていることを直視しつつ、各種の健康指標を永続的にチェックしながら、対策を立てることが求められている。それが地域のエコシステムをより強靭に発展させることにつながっていく。

居住者との関係性

前年対比の成長率によるベンチマーキングでは、全体像しか把握できない(今なら‘悪化’となる場合が多い)。それよりも訪問客をセグメント別に分けて、成長率を把握するべきだ。デスティネーション側は、自分の地域を中心に円を描き、ローカル圏、2時間ドライブ圏、5時間ドライブ圏、航空便利用圏それぞれについて状況をチェックする必要がある。

こうすると、いま対応するべきなのは、どういう旅行者なのかが正確に把握できるようになり、マーケティングする相手が、地元のローカル客なのか、それともドライブ旅行の市場なのか見えてくる。例えば、近隣の町からは旅行者が来ているが、地元客は動いていないのかもしれない。

観光客誘致により、地域コミュニティが受ける効果は、特定のビジネスだけでなく、広い範囲に及ぶという点も重要だ。ホテルの客室が埋まるだけではない。地元の飲食店や小売ショップ、そのほか様々な事業者も、将来的な旅行者にとって、魅力あるデスティネーションかどうかを左右するエコシステムの重要な要素だ。

こうした地元の事業者と、普段から緊密なコミュニケーションがあり、地域のみんなが協力し、お互いをしっかり支え合うコミュニティを実現するためにどうしたらよいか考えられるのが理想的だ。それは旅行者にとっても、魅力的かつ安全な場所と言える。

居住者の感情と旅行者の求めるもの両方のバランスをとることは、現在のように、経済活動の再開を段階的に進めつつ、パンデミックの状況次第では営業の制限も繰り返される状況では、特に重要になってくるだろう。地域で暮らす人々が観光客受け入れに抵抗を感じたり、前向きになったりする理由を理解することは、デスティネーションの門戸を開いたり、訪問客誘致プランを作る上で役立つ。

DMOは、地域住民の感じていることを調査するべきだ。例えば、時間の経過に伴いどのような変化が起きているのか、マーケットの動きやDMOの戦略方針に対する反応はどうか。住民や事業者が抱えているトラベル関連の問題にフォーカスすることが必要不可欠だ。

新たなデータの流れを見つけよう

そして今こそ、これまで存在すら知らなかったデータを調べ、デスティネーションの未来のために有効活用する方法を考えよう。新しい時代に即した目標と総合的なビジョンを決め、ゴール達成までの指標となる有用なデータソースを選び出そう。

例えばヒートマップなどの位置情報データを活用すれば、デスティネーション側は、人々の移動状況や、どこに多くの人が集まっているかが分かる。二酸化炭素や水、電気の消費量をチェックし、旅行者の行動分析に役立てているデスティネーションもある。

こうした手法は、テーマパークなどでの混雑回避に大きく役に立ちそうだ。あるいはニューヨークのハドソン・ヤードなど、町の新エリアへ人々をさりげなく誘導するにも良さそうだ。

特にパンデミック下では、これまで以上に、人々が街の特定エリアに集中するのを防ぐ施策が求められている。住民や旅行者向けのプロモーションやプログラム開発においても、今、人気の高いことが何かを把握できる。

リアルタイムで、人々の関心事を把握できることも、非常に重要になっている。調査データや航空座席の供給数などの情報に加え、決定論的データと確率論的データを組み合わせて顧客心理を探っているデータ・プロバイダーの協力も得ることで、需要回復を予測したり、予約決定のタイミングを狙ってアピールし、市場シェア拡大につなげることが可能になる。

持続可能な地域のマネジメント

さらに総合的に、地域全体のデスティネーションとしての価値を理解するには、訪問客の消費動向をチェックするのがよい。レストラン、ガソリンスタンド、小売店、観光アトラクション施設などへの訪問者増は売上アップに大きく貢献し、地元の人々や地場産業に恩恵をもたらすカギになる。

一方、観光需要の減少による地域コミュニティへの打撃は、ホテル稼働率や入場券売上の減少だけにとどまらず、さらに大きな痛手となっていただろう。もっと地域の人々を巻き込んだツーリズムとは、こうした売上の拡大を実現することなのだと示すこともDMOの責務だ。

近隣エリアからの旅行者や、地元のお客様を増やすことで得られるプラス効果を測定することも、ツーリズムが生み出す価値を地域の人々に知ってもらい、旅行に対する見方をよりポジティブにする効果がある。

いま重視するべきことは「デスティネーションのマーケティング」よりも、「場所(プレイス)をマネジメントする」ことだ。言い換えるなら、住民と事業者、それぞれの心配事に対応し、コミュニティ内のよい関係性を築くための説明責任を果たすということだ。同時にデータをうまく活用することでマーケットから得られる利益を最大化し、地域が受け取る恩恵をできる限り大きくすることだ。

さらに、コミュニティ内の相互理解を実現し、現行のデータ情報源やその使用法について、早急に精査するためには、観光産業がどのように持続可能なゴールを目指し、循環型の経済を取り入れていくつもりなのかを説明する責任がある。トラベル業界は、新しい時代のスタート地点に立ったところだ。成功の定義も、新時代にふさわしいものに変わるべきだろう。

アカウンタビリティによって地域コミュニティは一つにまとまり、目標達成へと動き出す。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:As fewer people fly, destination marketing becomes a domestic game

著者: ビル・オブレイター(アダラ)

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