米エクスペディア、7~9月の総予約額は68%減も回復基調、民泊が好調で一泊あたりの収益は14%増 -2020年第3四半期

エクスペディア・グループは、2020年第3四半期(2020年7月~9月)の営業実績を発表した。それによると、新型コロナウイルスの影響により、総予約額は前年同期比68%減の86億3100万ドル(約8976億円)。旅行マーケットは引き続き厳しいものの、マイナス幅は今年第2四半期の同90%減からは大きく回復した。

売上は同58%減の1億5040万ドル(約156億円)。営業損益は、前年同期の6億900万ドルの黒字から1億1300万ドル(約118億円)の赤字。諸経費合計は同53%減の12億6200万ドル(約1312億円)とスリム化したものの、調整後当期損益は3100万ドル(約32億2400万円)の赤字となった。

分野別の業績では、売上全体の8割以上を占める宿泊で取扱い予約泊数が同58%減、売上も同52%減となったが、一泊あたりの収益は、一棟貸し民泊Vrbo(バーボ/旧ホームアウェイ)の取扱いが好調だったことが奏功し、同14%増となった。

その他の分野では、航空の売上は同87%減。航空券取扱い数が同74%減だった上、チケット当たり収益も同48%減だった。広告・メディアの売上は同70%減。

地域別の売上では、米国内が同48%減、米国外が同70%減。

今四半期決算で、唯一、明るい材料となった一棟貸し民泊のバーボの業績について、エクスペディアでは詳細を明らかにしていない。しかし、米旅行産業ニュース「フォーカスワイヤ」の取材で、同グループ副社長兼CEOのピーター・カーン氏は「(ホームアウェイから)バーボへブランド変更したとき、やりたかったことが全てできた訳ではない。だがバーボの利用が多くなっている今こそ、このブランドをより積極的に売り出していく絶好のチャンス」と話し、この分野に限り、展開マーケットを欧州で増やすなど、拡大路線を進む方針を示した。

カーンCEOは、一棟貸民泊について「実際に利用して体験する人が増えたことで、その快適さが広く知られるようになった。だからといって、ホテルを利用しなくなるとは考えていない。だがバーボの知名度がエアビーアンドビーと並ぶようになるのは当社にとってメリットだ」とコメントした。

一方、最高財務責任者(CFO)のエリック・ハート氏は「コロナ禍による旅行需要への打撃を考えれば、今四半期決算は覚悟していたほど悪くはない。調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は3億ドル以上を確保したし、9月は、2月以降では初めてキャッシュフローの収支がプラスマイナス・ゼロになった」と報告した。

ハートCFOによると、収益率アップに向けてエクスペディアが掲げる戦略方針は、固定費の見直し、売上原価に占める変動コストの圧縮、マーケティング効率改善の3点。

2020年初めの時点で、同社では年間の固定費を3~5億ドル削減する目標を立てていたが、すでに第2四半期にこのターゲットを達成済み。従業員の追加削減やコスト縮小により、2019年と比較した今年度の削減額は7~7億5000万ドルに達する見込みだ。

変動コスト削減については、接客サービスのデジタル化がカギを握るようだ。顧客対応するバーチャル・エージェントが登場するセルフサービスの会話型プラットフォームを開発しており、ウェブサイトおよびアプリでの提供が始まっている。これに加え、決済プラットフォーム経費やクラウド費用を見直すことで、取扱い需要が2019年レベルに戻った場合、2億ドル規模を削減できるとしている。

また今年第3四半期、マーケティング費が同68%減と大きく縮小したことについてカーンCEOは「パフォーマンス・マーケティングの中で、効果が不透明なところや利益が出ていないところからは撤退した」と説明。これが直接予約の増加にもつながったとしている。同時に、グループ内ブランド間の需要取り合いを防ぐために、アルゴリズムを調整し、マルチブランド展開の最適化にも取り組む。

引き続き、不透明なマーケット情勢が見込まれるなか、同CEOは「利益を捨ててまでシェア確保を優先することはしない」と話し、「今は慎重であるべきと考えている。すべてを見直し、業務の流れを再構築することで、コロナ危機が去った後には、以前と同レベル、あるいはもっと高い利益率を維持しつつ、さらにシェアも拡大できる体制」(同CEO)を目指す考えを示した。

※ドル円換算は1ドル104円でトラベルボイス編集部が算出

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