ANAホールディングスは2020年11月27日、新株式発行並びに株式売出しに関する決議を行った。国内外で新たに1億2631万株を発行するとともに、オーバーアロットメントによって最大1369万株を売出し、最大1億4000万株の発行で資金を調達する。公募増資による調達額は、現在の株価に基づくと最大3321億円となる。公募期間は12月7日~9日で、発行価格はその間に決定される。
同社は2020年3月期の当期純損失を5100億円と見込んでおり、10月末には劣後ローンによって総額4000億円を調達し、手元流動性の確保や信用格付けの維持などを図ってきた。しかし、新型コロナウイルスの影響が長期化するとの見通しであることから、同社執行役員グループ経理・財務室長の中掘公博氏は「財務基盤を強化するとともに、事業構造改革を加速させていく必要がある」と、今回の公募増資の理由を説明している。
調達する資金の使途については、2000億円をすでに発注済みのボーイング787-9および787-10の購入、客室の改修、空港施設の改修などの設備投資に当て、残額を有利子負債の返済に充当する。同社が10月末に発表した事業構造改革計画では、ANA、Peach Aviationに加えて、ボーイング787による第3ブランドの設立を明らかにしているが、今回調達する資金はANAブランドを中心とした事業改革に投入していく考え。
ANAは、現在国内線と国際線で主力となっているボーイング777を中心に28機の退役を進め、小型のボーイング787の比率を高めることで、収益性を上げていく方針。中掘氏によると、ボーイング787への更新によって、運航コストは2割ほど削減される見込みだ。
国内線と国際線貨物の回復で、総合的な増資への判断
ANAの自己資本比率は海外の航空会社と比較すると依然として高いものの、その比率は40%を下回った。中掘氏は「できるだけ早く40%まで戻し、さらに将来のイベントリスクに対する耐性を高めるためには、それ以上を目指す必要がある」との見解だ。
このほか、中掘氏は今回の公募増資のタイミングについて、「この1ヶ月で、事業構造改革の中身に対する投資家の理解も進んできた。足元では国内線と国際線貨物が回復していくなかで、総合的な判断で増資を決めた」としたうえで、先に発表されたJALの公募増資とは関係ないと強調している。
なお、JALは11月6日に新株式の発行で上限1680億円の資金を調達すると発表。同社は、2020年3月期の純損失を2400億円から2700億円と予測している。