観光産業が観光や体験を止めて、私たちが地域の文化を尊重し、できるだけ地域の企業にお金が集まるようにすれば、私たちが求める持続可能な社会は可能になる。動物保護の観点からエレファント・ライド(象乗り)のアクティビティ販売をやめたところも多い。
私たち全員が今こそ、注意を向ける必要があるのは気候変動だ。
各国政府が強制を始める前に、観光産業はそれぞれの役割を果たしていくことが求められている。今販売されているさまざまな消費者サービスも、どのような理由であれ、その役割を果たさなければ、消費者の方から離れていくだろう。
排出量削減の動き
2020年12月に欧州委員会が発効した「持続可能なスマート・モビリティ戦略 (Sustainable and Smart Mobility Strategy)」では、2050年までに交通輸送からの二酸化炭素排出量を90%削減するという目標が掲げられた。
ヨーロッパにおけるディーゼルバスの割合は2019年で85%を占めている。ヨーロッパの主要なトラックメーカーは、当初計画よりも10年早い2040年までに二酸化炭素を排出するトラックの販売をやめると公言。ダイムラー、スカニア、マン、ボルボ、ダフ、イヴィコ、フォードはアライアンスを組み、従来の燃焼エンジンの生産をやめ、水素エンジン、蓄電池技術、クリーン燃料などの開発を進めていくことで合意した。
目標設定
2050年では遅すぎる。消費者はもっと前倒しすることを求めてくるだろう。私たちにも、もっと大きな目標が必要だ。政府が特定車種を禁止するなど、排出量削減を後押しする公的な取り組みはさまざまあるが、もっと消費者を巻き込んでいくことも必要だろう。そこで、私はひとつの提案をしたい。
「2030年までに、OTAはガソリン車やディーゼル車を使った観光の販売をやめるべきだ」
対象となるのは、ディーゼルバス、特殊車両(ジェットスキー、スノーモービル、全地対応車など)、ボートや小型フェリー(これはおそらく不可能だろう)。
タイミング
提案通りの取り組みはすぐにはできない。企業は車両を保有しているし、禁止しても、既存の車両からの移行には時間がかかる。
郊外ツアーには、ラグジュアリーな小型バスが使用される傾向がある。新型車の場合、こうした車両の代金を回収するまでには一般的に7年かかると言われている。目標とする2030年までに、すでに購入契約をしている車両をすべて揃え、その投資を回収することは可能。しかし、今から購入する車両については環境負荷の低い車両を購入することが必要になってくる。
世界の観光都市の観光でよく使われているホップ・オン・ホップ・オフ(乗り降り自由)型のバスは、投資回収までに通常15年かかる。そのため、2030年を目標と定めると、最近購入したバスは、投資回収期限まで活用することはできなくなる。2030年前までに、すべて電動自律型ロボタクシーに代替する必要がある。
EUはその戦略の中で「2030年までに自動運転はかなり広がるだろう」との見方を示している。最終的には、ホップ・オン・ホップ・オフ型のバスの代替にはそれほど時間はかからないかもしれない。
とにかく、変化は訪れる
フォルクスワーゲンCEOは近頃、以下の声明を出した。
「フォルクスワーゲンだけでなく、大きな変化が今後10年で起きるだろう。気候変動に対処していくには、自動車の電気化や自動化は避けられない。AI、特に状況認識技術が、ドライバーの代わりになる時代はそう遠くない。そうなれば、自動車はさらに持続可能で、安全で、快適なものになる。フォルクワーゲンは変わらなければならない。内燃エンジンのメーカーから、世界中の何百万というモビリティ・ディバイスを安全に動かすデジタル企業に」。
どこが最初に動く?
動物体験の販売を最初に禁止したのはOTAだった。気候変動でもOTAがリーダーシップを発揮するかどうか見てみよう。最初に行動を起こすのはどこになるだろうか。
※編集部注:この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
※オリジナル記事:Online travel agents must stop selling petrol & diesel based sightseeing by 2030
著者:アレックス・ベインブリッジ(DestinationCTO 創設者)