コロナ禍で、旅行業界のパイオニアの1社、日通旅行が2021年3月末、その歴史に幕を下ろすことになった。親会社となる日本通運が、連結子会社となるエヌ・ティー・エス(NTS)とあわせて2社の解散・清算を発表した。
日本通運は、「コア事業の成長戦略」「日本事業の強靭化戦略」を推進しているところ。2社の清算の理由を、旅行業界を取り巻く環境の悪化と経営資源をコア事業である物流事業に集中するためとしている。
日通旅行は1955年に日本通運の一部門として旅行業を開始して以来、1968年にはJTB(当時、日本交通公社)と共同で、旅行業者主導で初めてとなる海外パッケージツアー「ルック」を発表するなど、世界各国にネットワークを展開する日本通運のグループ会社として海外旅行を中心に日本の旅行需要をけん引してきた。
しかし、海外旅行事業を主軸とする同社にコロナ禍が直撃した。他分野へ展開を模索したものの、親会社の日本通運が「旅行業の回復が当面見込めない」と判断。3月31日で営業終了を決断した。日通旅行に負債はなく、営業終了とともに会社は清算する。同社の社員約280人は、親会社の日本通運に転籍する見通し。
なお、営業終了に伴い、4月以降の旅行の新規予約を終了。3月31日までに出発、手配完了の旅行については、同社が担当する。6月中には清算結了予定。