米下院司法委員会は、巨大IT企業による市場支配を弱める法案「American Choice and Innovation Online Act」を、激しいロビー活動の末に承認した。これによって、旅行業界のグーグルのライバルは、最終的に競争上の利益を受ける可能性がある。
グーグルをはじめ、フェイスブック、アマゾンなどは、自社商品やサービスにおいて、競合他社に対する優位性を持てなくなるかもしれない。プラットフォーム上で得られた非公開データを自社の商品やサービスに使うことが禁じられるためだ。巨大IT企業は、米国での収益の15~30%にもなると言われる罰金にも戦々恐々だ。
議会で法案が通過すれば、その6ヶ月後に米連邦取引委員会(FTC)は、法案を施行するためのデジタルマーケット局を立ち上げる予定だ。
グーグルは、おそらく「Google Flights(航空券の比較検索・予約)」、「Google Hotels(ホテル比較検索・予約)」、「Google Things To Do(タビナカ体験予約)」での優遇措置の見直しに迫られそうだ。そうなれば、たとえば、エクスペディア、トリップアドバイザー、マリオット、ゲット・ユア・ガイド、ユナイテッド航空などに影響が及ぶ。
現在、グーグルで「ニューヨーク ホテル」と検索すると、広告の下に、カラフルな地図、ホテルの写真、星による格付け、レビューなどがパッケージになったオーガニックのリストが表示される。グーグルは、そうしたユニットはオーガニックに表示されるものだとしているが、ボックスに表示される4つのホテルのうち、どれを選んでも、Google Hotelsに飛ぶことになる。その大部分が、有料のホテル広告だ。
結果的に、ユーザーはグーグル内にとどまることになり、グーグルが差し出す甘い広告の虜になるという仕掛けがある。そして、検索結果のホテルボックスの下には、ブッキング・ドットコム、ホテルズ・ドットコム、トリップアドバイザーなどの伝統的なリスティングが並ぶ。
グーグルは、ホテルのウェブサイトへの無料リンクがあるため、Google Hotelsが「広告の世界」であるという指摘は当たらないと主張。同社は近頃、有料広告の下に表示する無料リンクを増やした。
グーグルの見解は?
この法案は、グーグルが検索エンジン上で無料の競合他社よりも大きな利点を広告ビジネスに与えないようにするものだ。グーグルのパートナー企業は、何年もの間、米政府にグーグルでの競争環境を公平にするように求めてきた。特に、莫大な広告費を払っているトリップアドバイザーとエクスペディアは積極的に働きかけてきた。
グーグルで政府問題などを担当するマーク・イサコウィッツ氏は声明のなかで、グーグルはこの規制に反対していないと述べている。一方で、「米国の消費者や中小企業は、これらの法案によって、お気に入りのサービスの多くが使えなくなったらショックだろう」とも言っている。
さらに、「この法案は、私たちのサービスを低下させ、何億人もの米国人が使う重要な機能を提供することを妨げるもの。テクノロジー分野での米国の主導権が弱まり、中小企業と消費者がつながる方法を損なう。さらに、プライバシーとセキュリティに関する深刻な懸念を引き起こしかねない」と付け加え、議会で審議される前に、「より思慮深い検討がなされるべきだ」と主張した。
トリップアドバイザーもエクスペディアも、今のところそのコメントに対して反応は示していない。
米議会での審議は、欧州連合(EU)が実施するグーグルの広告テクノロジーに関する公式な調査と時を同じくして、行われる。
※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。英語記事が公開された2021年6月24日時点に基づいた内容となります。
オリジナル記事:There Is A Good Chance Google Travel’s Ambitions Are About To Be Reined In, Legislatively
著者:Dennis Schaal氏