トリップアドバイザーが米国で「トリップアドバイザー・プラス」を本格的に開始するなど、旅行業界でもサブスクリプション(定額サービス)モデルの関心が高まっている。OTAのeDreamsは、上級会員向けにサブスクリプションを開始。2022年9月までに200万人の会員獲得を目指している。
サブスクリプションの増加は、パンデミックが要因なのか、それとも消費者の購入パターンの変化なのか、定かではないが、その熱量が高まっているのは事実だ。2021年6月下旬に行われた「フォーカスライト欧州2021」では、旅行系サブスクリプションモデルについての議論も展開された。
トリップアドバイザーCCOのカニカ・ソニ氏は、トリップアドバイザー・プラスを始めた背景について、「パンデミックのなか、消費者が望んでいるのは何かを見直し、今後のトリップアドバイザーの発展を考えたとき、旅行者とのつながりを深めていくことが重要という結論に至った」と説明した。
消費者の購入スタイルも変化しており、特にミレニアルとジェネレーションZの世代にその傾向が顕著であるとしたうえで、「ファッションや美容などさまざまな業種でサブスクリプションサービスが始まっており、旅行だけが例外になるとは思わない」と自信を示した。
サブスクリプションサービスを展開する「シチズンM ホテルズ」COOのレナート・デ・ヨング氏は、旅行頻度の点で旅行サービスのサブスクリプションに疑問が出ている点について、スニーカーのサブスクリプションを例に挙げた。「スニーカーもそれほど頻繁に買い換えるものではないが、会員向けに割引などの特別感を提示することで、消費意欲を高めることに成功している」と話した。
また、ホテルがサブスクリプションを実施するメリットについて、「アマゾンプライムのように、消費者と長期にわたって関係性を持てること。サブスクリプションサービスの提供は、ポストコロナに向けて顧客を囲い込むいい契機になる」との認識を示し、特にホテルにとっては法人向けの定額制にチャンスがあるとした。
ソニ氏はトリップアドバイザー・プラス成功のカギについて、ネットフリックスのようにコンテンツに無制限でアクセスできること、コンテンツのキュレーション力、コストを上回る価値の提供を挙げたうえで、「単なる旅行素材の販売ではなく、空港やテーマパークでの優先レーンなど、特別な体験を提供することで、長期的なロイヤルティを高めていく」と強調した。
ヨング氏も、サブスクリプションでは宿泊での体験が重要になるとの認識。特に高価値顧客のライフタイムバリューの向上に貢献していく必要があるとし、既存のロイヤルティプログラムからの移行を進めるためには、デジタル化によるスムーズなアクセスだけではなく、「ヒューマンタッチなサービスなどソフト面の充実により目を向けなければならない」と話した。
ソニ氏は、トリップアドバイザー・プラスでのホテルパートナーとの関係についても言及。「特定の高価値顧客への露出が高まるほか、従来のコミッションモデルの関係から脱却し、顧客情報を共有することで、ホテルパートナーはトリップアドバイザー・プラスを通じて、顧客とのエンゲージメントを深めることが可能になる」とメリットを強調した。