隔離が緩和されたアメリカに入国した実体験から、旅行再開へのヒントを考えた、入国手続きから無料のセルフ型PCR検査まで【コラム】

こんにちは。ベンチャーリパブリックで「トラベルjp」を運営している柴田です。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まってすでに1年半。経営者として日々悩みが絶えないなかでピンチをチャンスに変えるために新規事業開発に尽力する一方、僕自身が可能な限り旅に出て世界を知り、先を読み、ユーザー・旅行者として感じることを大切にしようと心がけています。

昨年から、拠点としているシンガポールと東京を往来しながら、沖縄、ニセコ、長野でワーケーションを実践してきました。今夏、滞在しているのはアメリカ本土とハワイです。他国に先駆けてワクチン接種が進んだアメリカは旅行を含めた行動制限をほぼ解除していますが、「デルタ株」の広がりによる新たな問題も発生。旅行・観光についても、ワクチン接種後の環境整備が課題になっています。

今回は3回にわたるコラムで、僕が実感した世界で起きている最前線の状況をお届けします。そして、ウィズコロナ時代のアジア、そして日本の観光復活への処方箋を考察していきたいと思います。

行動制限が解除されたアメリカ

2021年7月22日。僕は、滞在先のシンガポールから成田で乗り継ぎ、アメリカのロサンゼルス空港に入りました。事前に聞いてはいましたが、ロサンゼルス空港ではアメリカ入国に必要とされているPCR検査陰性証明書の提示すら求められず、航空機を降りてから20分でターミナルを出ることに。日本入国のために空港で4時間待ったといった話や、厳重なシンガポールへの入国手続きと比較すると大きな差です。

シンガポール・チャンギ空港は、ガラガラだった(筆者撮影)

ゲートを出て到着ホールに入ると、旅行者の誰もが接種できる大きなワクチンステーションとPCR検査ステーションが設置されていました。行動制限が解除されているとはいえ、ロサンゼルスでも感染力の強い「デルタ株」が広がり始め、室内でのマスク着用が義務付けられています。屋外でマスクを着用している人も少なくありませんでした。

ワクチンを突破するブレイクスルー感染

アメリカで痛感したのは、ワクチンを2回接種したにもかかわらず、新型コロナウイルスに感染してしまう“breakthrough cases”、いわゆるブレイクスルー感染の広がり。パンデミック下で飲食や旅行などの社会活動が自由になると、ワクチン未接種の人が接種済の人に対してもウイルスをうつしてしまう「ワクチン未接種の人が引き起こす新たなパンデミック」という現象です。

米疾病対策センター(CDC)もブレイクスルー感染の発生状況を公表しています。実際、私もロサンゼルス在住の知人から、直近で周囲に12人ものワクチン接種済の人の感染が確認されたと聞きました。残念ながら、接種が進んでいるアメリカでさえワクチンの壁を突き破るデルタ株の感染力は凄まじい。新型コロナウイルスがなくなる世界はまだ来そうにないのです。この現象はアメリカだけでなく、今後日本やアジア他国を含め様々な国・地域で発生してくると思われます。

スマホへのテキストメッセージが有効

スマホに送信された「コロナアラート」メッセージもちろん、アメリカも手をこまぬいているわけではありません。ロサンゼルスでは、市内のスマートフォンユーザー全員に“コロナアラート”をテキストメッセージで発信し、ワクチン未接種者に対する接種をあらためて強く促しています。政府や自治体が市民向けに重要なメッセージを伝える方法として、こうしたスマホへのテキストメッセージは極めて有効だと感じました。

今後、日本でもブレイクスルー感染のフェーズが避けられないでしょう。大切なのは、「とにかくワクチンの接種率を高める」と同時に、「接種済の人が引き続きリスクを考えて行動する」こと。屋内や公共の場所でのマスク着用や密閉空間での不特定多数の人とのマスクなしでの接触を避けることはもちろん、周囲に感染者が出るなど少しでも気になったら、「逐次、PCR検査をすること」も重要です。

ワクチン接種済であれば重症化する確率は極めて低くなり、かつ接種していれば他の人に移す確率も低くはなると言われていますが、未接種や接種したくてもできない人を含め他人へうつしてしまうリスクは残ります。すなわち、日本の観光業復活においても、ワクチン接種の進捗だけでなく、PCR検査と並行した対策が重要になると考えられます。

現地でPCR検査をしてみた

PCR検査キット(筆者撮影)ブレイクスルー感染の広がりを受け、シンガポールでワクチン接種済みだった僕もロサンゼルスであらためてPCR検査を受けてみることにしました。ロサンゼルスでは、インターネットで申し込めば誰でもすぐ、簡単に無料で受けられ、鼻腔に綿棒を入れるのも自分でやる完全なセルフ型。会場に行ってキットをもらい、説明を受けて自分でサンプルを摂取し収集箱に投函する。結果は24~48時間以内にメールで送られてくる仕組みで、わずか5分で終了しました。

ワクチン接種が進む中でもコロナとの戦いは続きます。後半戦は、国、自治体、民間のあらゆるレベルでこうしたテストの環境整備があらためて重要になってくるのです。

米国本土編はここまで。次回、2回目はアメリカ人がこぞって訪れているハワイに移動してからの内容をお届けします。

※編集部注:本コラムは、2021年7月段階の米国の入国規制の状況での筆者の体験を執筆したものです。日本から米国への渡航者や日本人に対する入国条件、行動制限措置は、公的機関の最新情報をご確認ください。

柴田啓(しばた けい)

柴田啓(しばた けい)

ベンチャーリパブリック グループ代表。シンガポール、東京を拠点として、旅行比較・メディア「トラベルjp」、チャットによる出張手配サービス「トラベルjp for Business」、グローバル旅行メディア「Trip101」を運営。デジタルxトラベルがテーマの国際会議「WIT Japan & North Asia」実行委員長、ベンチャー三田会会長なども務める。アジア太平洋地域にてトラベルスタートアップへのエンジェル投資も手がける。

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