イーロン・マスク氏が率いる米宇宙企業スペースX社は、フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターから2021年9月15日午後8時2分(現地時間)、日本時間では9月16日午前9時2分にプライベート宇宙旅行として「クルードラゴン」を打ち上げる。乗組員4人はすべて民間人で、宇宙飛行士は同乗しない。フライトはすべて自動化。国際宇宙ステーション(ISS)よりも160km高く、ハッブル望遠鏡とほぼ同じ高度575kmを目指す3日間の宇宙旅行となる予定だ。AP通信が報じている概要をまとめた。
ライバルであるヴァージン・ギャラクティック社のリチャード・ブランソン氏とアマゾンのジェフ・ベゾス氏は7月に宇宙旅行に成功したが、高度はそれぞれ86kmと106kmと低い弾道飛行(放物線の軌道を描く飛行)で、宇宙滞在時間も短いものだった。
今回のプロジェクトは「インスピレーション4」と呼ばれるもの。地球を周回する、より本格的な飛行だ。米決済処理会社シフト・フォー・ペイメンツ(Shift 4 Payments)の創業者兼CEOのジャレド・アイザックマン氏が企画した。クルードラゴンを自費でチャーターし、同乗者を独創的な方法で募集した。アイザックマン氏は、チャーター費を明らかにしていないが、AP通信に対して「費用は高額になる。しかし、宇宙が超大国や彼らが選ぶ一部のエリートに独占されるべきではない」と語った。
幸運を掴んだ当選者
アイザックマン氏は、4つの座席のうち、1席をテネシー州メンフィスのセント・ジュード小児科病院に提供。病院は、乗組員として元患者で、現在は医師助手として働いている29歳のヘイリー・アルセノーさんを選んだ。宇宙に飛び立つ最年少のアメリカ人になる。10歳のときに骨肉腫を患った彼女の左足はチタン製の義足だ。「身体的にハンディキャップがある人に宇宙旅行の道を開くことを誇りに思う」とコメントしている。
2人目は、アリゾナ州テンペのコミュニティカレッジで地質学を教える51歳のサイアン・プロクターさん。パイロットでもある彼女は、10年以上前にNASAの宇宙飛行士募集でファイナリストに残ったことがある。
3人目は、ワシントン州エバレット出身の元空軍でデータエンジニアのクリス・センブロスキーさん。42歳。セント・ジュード小児科病院に募金した人の中から選ばれた。彼自身は当選しなかったが、当選した彼の友人が座席を譲った。
4人は3月から訓練
宇宙旅行に向けて、4人は3月から訓練を重ねてきた。クルードラゴンは完全自動化されているが、無重力状態、8Gの体験などのほか、打ち上げ、再突入など重要な操作のシミュレーションを繰り返した。義足のアルセノーさんのために、座席が調整された。
この打ち上げにNASAは一切関わらない。スペースXは、打ち上げ前に乗組員が過ごす施設も用意。発射台はアポロのムーンウォーカーやスペースシャトルで利用されたものをリースした。
また、以下では打上げのライブ配信をおこなう予定だ。
いよいよ、3日間の宇宙旅行が始まる。