ヤフーは2021年8月、旅行業界向けのライブ配信イベント「Yahoo! JAPAN Travel Day」を開催した。業界特化型イベントとして、旅行業界の広告主を対象にYahoo! JAPANユーザーの旅行に関する最新の検索動向などを伝えるもので、今回が初めての開催。ヤフーのビッグデータから導き出した分析結果をもとに、コロナ禍前後で様変わりした旅行者の姿を解説し、今後の観光再開に向けて、打ち手のヒントとなる情報を提供した。
目まぐるしく変わる旅行への意識、消費者は何を求めているのか?
コロナ禍で様変わりする旅行市場では、コロナ前の発想が通用せず、従来の経験や常識が覆される場面も多い。こういう時期だからこそ、データ分析から導き出された旅行者心理やトレンドを理解した上で販売戦略を立てるという視点が欠かせない。
イベントでは、Yahoo! JAPANの検索データとその分析から見えてきたコロナ禍における旅行選びの変化について、5W1Hの項目に分けて紹介された。
How:どんな旅行を検討しているのか?
2019年と2021年の検索クエリの増減を比較した場合、グランピング、プール、露天風呂付、オールインクルーシブ、ワーケーションといった具体的な設備や行動を示すクエリが増加。宿泊施設選びでは「宿泊する目的に合致しているかどうか」が重要で、宿泊施設内で完結できる楽しみを求めている。特に「プール」は、ファミリー層が宿泊施設内で子供を遊ばせられる設備として重視しているが、これは今年になって顕著に表れた傾向だ。具体的な要望の検索が増えているが、その内容はコロナ禍でも経年変化がみられるという。
また「フルーツ狩り」は、単体のワードとしては減少がみられるが、“関東からの山梨”といったような、居住地から行けるエリアを指定した検索ワードは2021年に急増した。このように、1つのワードにエリアを付け足すことで、需要動向が見える場合もある。
一方で減少しているのは格安航空券、格安ツアー、日帰りなどで、1回のコストを下げて何回も旅行するパターンが減少。価格ではなく「希望がかなうかどうか」が重視されている。
Where:どこへの旅行を検討しているのか?
目的地の検討では、「観光」との掛け合わせたワードの変動を分析。増加しているエリアは奄美大島や屋久島、与論島などの離島や、河口湖、富士山、富士五湖等のアウトドア系の利用率が高いエリアだ。特に離島は、行きたくても行けない海外リゾート需要の受け皿となっていると見ている。
一方、激減したのが、上位の常連で2019年にトップ3を占めた大阪、京都、東京だ。2021年は、この3都市がランキング圏外となり、仙台、山梨、奈良、和歌山が5~8位に浮上した。このランキングは従来、大きな変動がないのが特徴だったが、コロナ禍以降は毎年大きく入れ変わる状況になっている。
ちなみに海外旅行は、各エリアとも2019年比で10%程度の検索数しかなく、需要回復にはまだ時間がかかりそうだ。人気の高い「ハワイ旅行」をその前後の検索内容で比べると、以前は観光地や保険などハワイ旅行に伴う具体的なワードが示されたが、直近1年では、国内のリゾートなど国内旅行全般に変わり、ハワイ旅行の代わりに国内で欲求を満たす傾向が顕著に出ている。ヤフーではこれを、海外旅行需要が転換するバロメーターの1つとし、今後も定点観測して、クライアントに報告していく方針だという。
Who:誰が旅行を検討しているのか?
この項目では、ワクチン接種が進むシニア層に着目。2019年と2021年の検索ボリューム(量)の回復度合いを全体とシニア層で比較したところ、シニア層ではよりその傾向が顕著に表れているという。
例えば温泉。シニア層は特に「温泉」がつく検索の回復度合いが高いが、マイナーな温泉地や日帰り温泉の検索が増えている。具体的な地名では、尻焼温泉、丸駒温泉などの検索が増加。逆に下呂、伊香保、有馬などメジャー温泉地の選択は低い。なお、客室露天風呂付は全体のトレンドでもあるが、シニア層ではその傾向がより顕著になっている。
また、コロナ禍前のようにエリア名からホテルを検索するパターンが減り、有名ホテルを指定した検索が増加。これは、過去に泊まったあのホテルにもう一度泊まろう、あのホテルであれば安心だろう、というニーズが、旅行経験が豊富なシニア層に存在するからだと考えられる。
さらに海外旅行の主要ワードの検索数も、全体よりシニア層の回復率が高い。海外旅行需要は厳しい状況が続いているが、シニア層に関して海外への関心の回復が予兆できる。
When:いつ検討していつ旅行するのか?
What:どこの旅行サービスを検討しているのか?
このほか同イベントでは、When(いつ検討していつ旅行するのか)とWhat(どこの旅行サービスを検討しているのか)についても、検索動向から見た消費者の行動傾向を説明。Whenでは、旅行検討から開始までのリードタイムが2019年以降、短縮傾向となり、直近では近距離旅行も遠距離旅行でも平均18日になったことを説明した。
またWhatでは、真っ先に思い浮かぶ旅行ブランド=第一想起率の高い旅行予約サイトが最終的にユーザーに選ばれていることを紹介。旅行検討者の第一想起でのコンバージョン率は、2番手以降の想起の時に比べて平均1.34倍高いことが、ヤフーの調査によって判明したとのこと。 同社は、検討段階で第一想起される状態を作っておくことが重要だとし、「Yahoo! JAPAN 第一想起分析」のサービスを通してサポートしていくことを説明した。
データをもとに動き出した旅行業界
「Yahoo! JAPAN Travel Day」には、旅行、交通など旅行業界の大手広告主を中心に約30社、130名超が視聴した。開催した8月は、まだ新型コロナウイルスの感染が拡大中で、旅行業界は状況の改善後を見据えた需要獲得策を準備する段階にあった。
このためYahoo! JAPANの膨大な検索データを基にした旅行動向の変化と将来予測に対する関心は極めて高く、視聴者へのアンケートでは「満足度98%」「有効度96%」という高評価が得られた。
イベントで検索動向の分析を発表した、ヤフーのMS統括本部第二営業本部の吉川美咲氏は、「2021年はユーザーの旅行に関する動きが、前年より増えている。GoToトラベルキャンペーン再開への期待もあり、各事業者が需要取り込みへのスタートダッシュを準備する時期だったので、消費者動向に関する情報提供が評価された」と振り返る。
実際にイベント開催直後から、紹介したデータやソリューションに関する問い合わせが急増。同本部の榊麗菜氏によれば「観光再開時のスタートダッシュに向けた強化ポイントの見極めや、新規提案への準備、練り直しに役立つと各社に喜ばれた。また、イベントをきっかけに、ウェブプロモーションの具体的な計画を進めて最適なタイミングで始動する準備を整え、その時を待っている広告主もいらっしゃる」とのこと。
ヤフーでは広告主に対し、国内・海外旅行に関する検索キーワードの増減を追う週次レポートも提供。具体的には、年末年始に向けた動向や海外旅行への関心など、次の一手を考えるにあたって重要なデータをもとに、広告主との密なコミュニケーションをとっている。「自社サイトのデータだけでは需要回復の予兆をつかむのが難しい。全体的な市場観をとらえるイメージで活用し、広告強化のタイミングの判断に役立てていただいている」という。
ヤフーの提供情報を参考に、現状の商品強化エリアや広告出稿の手法を再検討した広告主もいる。「まずはサイトや広告のビジュアルに関し、需要動向に合わせた最適化を図った事例もある」(吉川氏)。
旅行商品やクリエイティブを変更することは、各社が戦略や施策を大きく変えたということを意味する。それほど各社とも今の旅行市場の変化を感じ取っており、変化に対応するための準備を急いでいる。それに対する、ヤフーのデータと分析への信頼は厚い。同社では新たな活動として、旅行トレンドをわかりやすく提供する、旅行業界向け動画チャンネルの開設を計画。感染状況が落ち着いたころには、パネルディスカッションや懇親会も組み込んだリアルでのイベント開催も計画しており、業界からの信頼に応える。
コロナ禍で様変わりした生活者の変化をつかむためには、データ活用が重要だ。第二営業本部 本部長の三村真氏は、「約100のサービスを展開するYahoo! JAPANの検索データは人々のニーズの指標となるものであり、その変化を見れば生活者のインサイトも分かる」と、ヤフーだからこそ提供できるデータの価値を説明。価値あるデータを可視化して共有し、コロナ禍後の反転攻勢を、旅行業界と二人三脚で目指す方針を示している。
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記事:トラベルボイス企画部、REGION