欧米豪アジア24カ国の消費者調査、「体験ファースト」意向が倍増、首位はサステナブルの「地球ファースト」

パンデミックを克服した先には、より明るい未来があるとの楽観的な予測に冷や水を浴びせているのが、ここ数か月で急速にふくらんでいる景気の先行き不透明感だ。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル(EY)社がこのほど公開した最新の消費者調査では、不透明感が消費意欲の減退を招いていると指摘している。

この調査「EY Future Consumer Index(EY消費予測インデックス)」は、四半期ごとに実施しているもので、今回は9回目。日本を含む欧米豪アジア24カ国の消費者1万8000人を対象に、2022年1~2月に行われた(本文下の情報参照)。

物価上昇で「購買力に影響」が52%

同調査によると、物品やサービスの価格上昇が、自身の購買能力に影響を与えており、実際の購買における意志決定も左右している、との回答が全体の52%を占めた。

打撃が大きいのは所得が低い階層で、前述の回答が同層では全体の62%を占めたが、同様に中間所得層で48%、高額所得層でも42%と、それぞれ影響は受けている。国別では、先進国よりも新興国で「影響がある」と答えた人のシェアはが高く、南アフリカ77%、インド64%、ブラジル63%、中国42%。これに対し先進国では、米国50%、カナダ52%、英国42%、フランス40%など。

インフレ物価や新たなコロナ変異株への警戒感から、消費者の財布のひもは緩んでおらず、価格がより安価な代替品を選んだり、不要不急のものは買い控えようとの考えが、調査からは読み取れる。なかでも消費額を減らすとの回答が多かったものは、洋服(38%)、美容・化粧品(35%)、アルコール(30%)。生鮮食品(20%)やパッケージ食品(19%)については、すでにより安価なものを探しているとの回答が多かった。

生活費の値上がりへの不安から、回答者の3分の2(60%)は、将来のためにもっと貯蓄したいと答えたほか、すでに39%の人は、使わずに貯めることを決めている。貯蓄に最も意欲的だったのは南アフリカ(同国の回答者の56%)、次いでインドネシア(54%)、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン(いずれも51%)となった。

EYグローバル消費者担当責任者のクリスティーナ・ロジャーズ氏は「多くの国で、パンデミック後に景気が上向いているにも関わらず、インフレや仕事、生活の根本的な変化、さらに現在進行中の地政学的な問題による不安が原因で、消費者は将来について明るい展望を持てずにいる」と指摘している。

モノよりコト、体験を優先する消費

また今回の調査結果からは、コロナ禍によるストレスから解放され、失った時間を取り戻すために、消費者がこれまで以上に、体験を求めていることが明らかになった。回答者の45%は、もっと有意義な時間を過ごすつもりだと答えた。

買い物する際に最も重視するポイントとして挙げた5つの項目、「地球ファースト」「価格ファースト」「体験ファースト」「健康ファースト」「社会ファースト」の中で、最も増え幅が大きかったは「体験ファースト」で、2020年時点と比べて倍増。今回調査では、計5項目のなかで3番目に多かったが、パンデミックが始まった頃は同5番目と最も少なかった。

「体験ファースト」を最優先に挙げた人は、米国では回答者の24%、フランスは同26%、インド31%、タイ32%。これに対し、5項目中5番目だった国はフィンランド(13%)、オーストラリア(15%)、ニュージーランド(10%)。来年は、何かを体験することにもっとお金をつかいたいと考えている人は、世界全体で42%を占める一方、自宅外での体験には消極的という回答も39%を占めており、自分が出かけなくてもできることへの関心が強い。外出することを厭わないという回答者も、店に出かける際の要求レベルは高くなっており、すばらしい体験ができるところに限る(36%)としている。

ロジャーズ氏は「消費者の関心がモノの“所有”よりも“コト”にシフトしているので、企業側は、夢中になって没頭できる体験を提供するにはどうするべきか、デジタルとリアル店舗の両方で、真剣に考えなくてはならない」とコメントしている。

サステナビリティと価値が消費者を動かす

前回調査に続き、購買の決め手として最も支持された項目は「地球ファースト」(26%)で、「価格ファースト」(24%)、「体験ファースト」(20%)を上回った。この傾向は、特に中国とブラジルで顕著で、それぞれ回答者の32%を占めた。

消費者は、よりサステナブルなものを購入するなど、環境を守るために自分ができることを選択するようになっている。回答者の56%は、自分が購入するものが地球環境に与える影響にもっと注意する、同52%は社会に与える影響にもっと注意する、と答えた。また全体の5分の2(42%)の人は、自分と同じ価値観を持つブランドでしか購入しないと回答。この比率は、Z世代の回答者で同じ数字となったほか、ミレニアル世代では48%を占めた。

ロジャーズ氏は今回の調査について「過去2年の間に、人々の考え方が根本的に変わり、自分はどう生きるべきか、消費主義(コンシューマリズム)や、購買する理由について再考するようになった。さらに可処分所得の減少や、経済的、地政学的な不安増により、自分の購買行動に起因するソーシャルインパクトや、地球環境への懸念はいっそう高くなっている。こうしたなかで消費者は、商品を販売しているブランド各社が、単に接客が丁寧というだけでなく、自分が共感できる価値感を持っているのかを見ている。」と結論づけている。

Future Consumer Index: People are reconnecting with their deeper values

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