旅行系テクノロジーの国際会議・見本市「トラベルテック・ショー2022」が今2022年6月下旬、英国で開催された。過去2年ほど、コロナ禍でリアル開催は見送られていたが、今回は英国ロンドンの会場、エクセル・ロンドンに世界各地からトラベル・テクノロジー界を牽引するリーダーらが集まり、顔を合わせての商談や、注目トレンドについての活発なやり取りがおこなわれた。
同イベントは、旅行ビジネス、デジタル戦略、マーケティングなどで意思決定をおこなう幹部クラスを想定した国際会議および商談会として、ヨーロッパで長年に渡る実績を誇る。
今回、ロンドンに足を運んだバイヤーは445人以上、このうち88人を経営トップが占めた。参加者からは「素晴らしいのひと言」「最新テクノロジーと出会えるところ」、「主要プレイヤーが一堂に会するのが魅力」といった評価が寄せられた。
出展企業はクルーズウォッチ(Cruisewatch)、トラベロジクス(Travelogix)、コードジェン(Codegen)、ネザサ(Nezasa)、エアドクター(Air Doctor)、ミドコ(Midoco)、アマデウス、パックス2ペイ(Pax2Pay)、トラベル・オペレーションズ(Travel Operations)など40社以上。各ブースとも、情報収集に訪れたバイヤーたちでにぎわった。
基調講演はメタの旅行業トップが登壇
トラベルテック・ショーを訪れる理由は、もちろん商談だけにとどまらない。実に3年ぶりのリアル開催となった会場では、旧交を温めると同時に、旅行テック業界に携わる人との新しいネットワーク作りも活発におこな行われていた。またカンファレンスでは、数々のセッションが開かれ、今後、予測されるトレンド動向を一足先に展開。
2022年のカンファレンスでは、旅行産業の展望について、8つのトピックに沿って計20のセッションを開催。ちなみに、会場となった2つのシアターの名称は「アラン・チューリング」と「エイダ・ラブレス」。ご存じ、英国が誇る人工知能の父と、世界初のプログラマーの名前が冠されており、旅行テクノロジーに関する考察を深めるのに申し分ない舞台となった。
カンファレンスのテーマは、「顧客獲得」「イノベーション」「コスト管理」「急激な旅行の再始動」など。各セッションでは、旅行産業が現在、直面している様々な問題について議論。ビジネスの変革、自動化技術、データ、カスタマイゼーション、持続可能性、コロナ問題など、幅広い内容を取り上げた。
最新動向に関する知見を披露してくれたのは、旅行業やテクノロジーに精通した30人以上のエキスパートたち。ヘイズ・トラベル会長のデイム・イレーネ・ヘイズ氏やトーマスクックのアラン・クックCEO(最高経営責任者)も登壇した。
基調講演は、メタの旅行業界担当責任者、カ―リン・フォーゲル・マイヤー氏による「シームレスな旅行体験:長期的な成長戦略におけるメタの各種アプリ活用法」。同氏は、コロナ禍が旅行に与えたインパクト、顧客ロイヤルティとカスタマージャーニー全体にフォーカスすることの重要性、そしてメタバースによって生まれる新たな可能性を理解するために、どのような試行錯誤が求められているのかを語った。
マイヤー氏は「旅行業界の勝ち組を本気で目指すのであれば、カスタマージャーニーの最初から終わりまでに目を向けるべきだ。なぜなら、利用者側から今、まさに求められていることだから」、「利用者が望んでいるのはシームレスな体験。これを提供できる事業者は、顧客から信頼できる会社だと評価してもらえる」と提言した。
一方、「旅行販売におけるTikTok活用術」と題したセッションで、ソーシャリーパワフル社の戦略責任者、ロイド・ウィリアムズ氏は、顧客への働きかけをステップアップするツールとして、今、注目するべき理由に言及。
「TikTokは、デスティネーション本来の魅力を伝え、相手の関心をひきつけるストーリー展開力が秀逸なので、旅行業との親和性が非常に高い。本当の姿をバイアスなしで紹介する道義的責任はもちろんだが、昨今の潮流であるレスポンシブル・ツーリズムを促す上でも役立つ」と話した。
出展ブースを巡るツアーなど新しい試みも
そのほか、注目を集めた出来事の一部を紹介する。
- 初の試みとして、ビジネス・トラベル・ショー・ヨーロッパおよびザ・ミーティング・ショーも同じ場所で同時開催。
- スタートアップのコンペティション「トレイルブレイザー・アワード」では、宿泊や地上交通などの請求・支払い業務をデジタル化した旅行事業者間の決済プラットフォーム、トラベル・レッジャーが受賞。
- 専門家が会場内を案内してくれる「テックツアー」を新たに実施。ツアー参加者向けに、出展企業が最新プロダクトに関する詳しい説明やデモンストレーションを披露。
最後に、トラベルテック・ショー2022での体験を、的確にまとめてくれた参加バイヤーの言葉を2つ引用したい。
イスタンブール・ツーリスト・パス創業者兼CEOのカーツァル・アブドラマノグル氏は「新しいテクノロジーの数々を見たいなら、ここがベスト」。ア・ブライト・アプローチ創業者のシャーロット・ランプ・デイビス氏は「お世話になっている取引相手や、これからビジネスしたいと思っている人と、お互いの顔を見てミーティングするにも最高の機会となった。いずれも、とても大切なことだと思っている」と話した。
次回のトラベルテック・ショーは2023年6月28~29日、再びエクセル・ロンドンで開催される。
以下は、2022年のトラベルテック・ショーのハイライトビデオと会場の様子。