英国エリザベス女王の死去後、米国やインドをはじめ世界各国から英国に多くの観光客が訪れ、ロンドンのホテル、レストラン、ショップは賑わいを見せている。英国経済は過去40年で最悪のインフレになると予測されているなか、弔問による観光特需は英国のビジネスを押し上げている。
英国で最も長く在位した君主の国葬の威風堂々たる壮観さは、世界を魅了するとともに、英国王室の力を強調。王冠が乗せられた棺を運ぶ荘厳な葬列はライブ中継され、世界中の人々がテレビに釘付けになった。このような状況が、観光に与えている影響をAP通信が報じている。
2022年9月19日(現地時間)の国葬までの4日間、ロンドン中心部のホテルの価格は2倍になった。観光客の急増だけでなく、米国のバイデン大統領や日本の天皇皇后両陛下など世界中から集まるVIPや英国中から集められた警察関係者のための宿泊施設も必要となり、その需要は急速に高まった。
ロンドンをベースとするグループ予約プラットフォームの Hotelplanner.com によると、この期間のホテルの稼働率は過去最高の95%に達する見込みだという。バッキンガム宮殿近くの2つ星ホテル「Corbigoe Hotel」は全35室すべてが埋まった。マネージャーのリアズ・バーダー氏によると、ビクトリア地区のホテルはほぼ満室が続いているようだ。
ホテル分析会社STRシニアディレクターのトーマス・エマニュエル氏は「世界の目がロンドンに集まっている。このような歴史的な出来事のことを考えると、何の不思議もない」と話す。
女王の死去前から、ポンド安のために米国人旅行者にとって英国は魅力的な旅行先となっていた。8月は英国の小売販売は予想以上に悪く、9月16日にはボンドは37年ぶりの安値を記録。英国経済が弱っている兆候を示した。英国経済の弱体化は、ウクライナ危機を契機とするエネルギー価格の上昇から始まり、英国国民は現在生活費の高騰に苦しんでいる。政府は、家庭や企業のエネルギー料金に上限を設けると言っているが、価格は依然として高いままだ。英国のインフレ率は、G7諸国の中で最も高い9.9%となっている。
そのような状況の中、今回の弔問特需は、かすかながらも希望の光となっている。バジェットホテルのトラべロッジは、国葬の日、78ヶ所のホテルで朝食用食材の追加発注を行なった。多くの宿泊者が、この日ぐらいは「伝統的な英国式ブレックファストで1日を始めたい」と朝食を望んだからだ。
弔問特需による売上増は、休日となった国葬の日にほぼすべての店舗が休業したことで、相殺されるかもしれないが、Hotelplanner.com のティム・ヘンチェルCEOは、「英国王室への新たな関心の高まりは、観光業を押し上げる可能性がある」と話す。