ウクライナの観光トップが語った「戦後の観光と未来」、占領下クリミアの観光による再建計画も【外電】

ウクライナの観光は、ロシアによる侵攻によって中断された。それでも、希望はある。戦争中であっても、ウクライナの観光産業は、将来の復活に向けて歩みを止めてはいない。

「ロシアは過去のために戦い、ウクライナは未来のために戦っている。当然、未来が勝つだろう」。ウクライナ政府観光開発庁のマリアナ・オレスキフ議長は、2021年9月21日に開催されたスキフト・グローバル・フォーラムで力強くそう語った。議長の語った未来への発言をまとめた。

戦争の先の未来へ、観光は経済復興の突破口

オレスキフ議長は、ウクライナを支持している人々に感謝の意を示すとともに、ウクライナ観光の未来を築いていくために、世界に同様の支援を呼びかけた。

オレスキフ議長は、2020年に現職に就いたとき、新型コロナだけでなく、まさか国内での戦争に対応しなければならなくなるとは思ってもみなかった。

それでも、「ウクライナは戦争の先の未来を見ている。その中で、観光はウクライナの経済復興にとって重要なブレイクスルーになる」と話し、「私たちは戦争中に生きることを学んだ。現状でも国内観光はゆっくりと回復しており、国内旅行者数は侵略前の50%ほどまで戻っている」と明かした。

ウクライナの観光産業の再建には、約200億ドル(約2.8兆円)が必要になると試算されている。

ロシアによる侵略の前には、ウクライナは、その地理的優位性を活かして、欧州、米国、中東市場向けの商品開発を進めていた。2021年の同国への旅行者数はレジャーおよびビジネスを含めて約300万人。主な市場は米国、ポーランド、トルコ、ドイツ、中東湾岸諸国だった。

パンデミック中も、湾岸諸国にはビザ免除を適用したていたため、この市場は大きく成長した。加えて、新しい国や地域からの旅行者も増えつつあった。

戦前、ウクライナはインフラ整備にも予算を投下し、2020年から2021年にかけて行われた道路整備は、過去10年間より30%も多ったという。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、現在ロシアによって占領されているクリミアの解放にも意欲を示しているが、オレスキフ議長は、それが実現できれば、クリミアは最も注目すべき旅行先になりうるとの考えを示す。

また、「クリミア365」というでクリミア復興のロードマップを紹介。観光が復興すれば、クリミア半島の総生産額は今後10年間で2倍以上に成長するとした。

「依然として戦争状態が続いているので、不確実性が大きいのは分かっている。しかし、クリミアはそもそもウクライナの一部である。私たちは、そこを再建していく」。

ロードマップには、クリミア半島を、エンターテイメント、文化的・歴史的観光資源、黒海の自然を融合した通年型リゾートにしていく計画も含まれている。

オレスキフ議長がプレゼンテーションを終えると、出席者は全員立ち上がり、大きな拍手を送った。

※ドル円換算は1ドル142円でトラベルボイス編集部が算出

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事: Ukraine Tourism Chief Looks Beyond Tragedy of War to a Hopeful Tourism Future

著者:Peden Doma Bhutia氏

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