多言語通訳ツールを提供する「ポケトーク」は、AI翻訳ソフト「ポケトーク同時通訳」を発表した。従来の専用機「ポケトーク字幕」は、字幕通訳のみ対応だったが、新製品では音声と字幕による同時通訳を可能にした。今冬に正式リリースする予定。発売当初はPC向けソフト(Windows、MacOS)のみだが、より機動性を高めるためにスマートフォン版やタブレット版の開発も進める。
松田憲幸社長は発表会見で「ポケトークのミッションは『言葉の壁をなくす』こと。同時通訳の提供によって、それがさらに近づいた」と話し、新製品への自信を示すともに、10月11日から水際対策の大幅な緩和によって、訪日外国人や日本人海外旅行の回復が見込まれることから「(ポケトークで)観光産業を支援していきたい」と強調した。
同社は、観光産業支援として、今年11月末までに1000事業者な最大3000台のポケトーク字幕を無償貸与。また、水際対策緩和の発表後、ポケトーク字幕の注文が発表以前と比べて数10%増加し、鉄道事業者や百貨店など訪日客との直接対応が求められる業種からの引き合いが増えていることも明かした。
松田社長は、「ポケトーク同時通訳」開発の背景として、言語の壁によるビジネス機会の喪失や人材不足を挙げた。同社の調査によると、日常的に外国語を使うビジネスパーソンのうち77.3%が「言語が業務やコミュニケーションなどの阻害要因になっている」と回答。60%が「外国語のコミュニケーションが円滑にできずビジネスの損失になっていると感じる」と答えた。
さらに、外国人対応では、49.2%が「社内の外国語が得意な社員が対応している」と答え、そのうち63.5%が「本来の業務に支障が出ている」と回答した。
「ポケトーク同時通訳」は、ポケトーク字幕と同様に、字幕表示機能では、音声入力で83言語のテキスト翻訳、テキスト入力で115言語のテキスト翻訳に対応するほか、同時通訳機能として英語から70言語への音声とテキスト翻訳を可能にする。
同社では、オンライン会議、対面会議、動画視聴、セミナーなどでの活用を想定。「同時通訳が必要だったところではすべて使えるようになる」(松田社長)。
ポケトークは世界展開も積極的に進めており、米国での販売は、労働力不足と移民の増加を背景に、2021年3月から2022年3月にかけて3.4倍に増加。主に、学校、病院、警察など公共施設での導入が多く、「社会インフラの一部になりつつある」(松田社長)。同社は今後、米ナスダックへの上場も視野に入れている。