米国の金融業界から見た旅行市場、2023年の予測から、変わる旅行マーケティングの戦略まで聞いてきた ―フォーカスライト・カンファレンス2022

米ウォールストリートの投資家や金融各社は、2023年以降の旅行マーケットの今後をどう展望しているのか? このほど開催されたフォーカスライト・カンファレンスでのパネル「ストリート・トーク」の登壇者らは、旅行マーケットを支える力強いペントアップ需要(一時的に購買行動を控えていた消費者の需要が、一気に回復すること)に衰えは見られないとしつつも、インフレが市民生活を直撃している欧州市場での先行き不透明感や、米国で進む企業の雇用縮小は要注意と話した。

パネリスト:

  • Truist Securitiesシニアアナリスト、ネビッド・カーン氏
  • Evercoreシニア・マネジングディレクター、マーク・マハネイ氏
  • UBSマネジングディレクター、ロイド・ウォルムズレイ氏

モデレーター:

  • フォーカスライトのリサーチ&プロダクト戦略担当シニア・バイスプレジデント、チャルータ・ファドニス氏

エクスペディア、ブッキングドットコム、トリップアドバイザー、エアビーアンドビーなど、グローバルOTA各社が発表した2022年第3四半期の業績は、いずれも非常に力強い数字が並んだ。各社とも、続く第4四半期の予測も強気の構えだ。

「現在、旅行への消費意欲はとても高い状態で推移しており、特に宿泊事業でこの傾向は顕著だ」とUBSのマネジングディレクター、ロイド・ウォルムズレイ氏は話す。だが今後の展望については不透明で、2023年は特にヨーロッパの状況を懸念している投資家が多いとしている。

「旅行需要の回復が進み、その先にある様々な問題点が浮き彫りになってきたところ。マーケットが平常通りに戻った後の成長ペースや、不況になった場合の需要がどうなるのか」(ウォルムズレイ氏)。

Evercoreのシニア・マネジングディレクター、マーク・マハネイ氏も、「今は旅行だけが例外的に好調」とし、「他の業種も、グーグルの検索数やクラウドコンピューティングも、すべてスローダウンしているが、旅行はペントアップ需要が継続しており、消費者はまだ出費を惜しまないでいる」と話す。

だが、メタやアマゾンに続き、1割近い雇用縮小を考える企業も複数あるなか、2023年以降、解雇が増えれば、予定していた旅行のキャンセルや縮小など、逆風は必至と同氏は見ている。

「我々の世代では、経験したことのないインフレ高騰が進んでいるなかで、消費者が自由に消費できる範囲は狭まっている。インフレが多少、鈍化する気配にあるのは良い兆候だが、過去2年、大幅アップしてきた平均客室単価(ADR)には多少の調整が起きるのではないか」(マハネイ氏)。

ロイド氏は(米国市場の)ADRについて、2023年は2~3%の下落を予想している。「例えばエアビーアンドビーは過去2年間、米国市場ではADRがほぼ倍増した。同社では当初、コロナ禍で一棟貸しを選ぶ人が増えたこと、フロリダなど特定エリアに旅行者が集中したことが要因で、やがて鈍化すると見ていたが、予想に反して、高いレベルを維持してきた。さすがに来年は多少下がると思うが、2019年の価格レベルまで後退することはない」との見方だ。

景気後退で最も影響受けるのは誰

Truist Securities社のシニアアナリスト、ネイビッド・カーン氏は、不況になった場合、「旅行においても景気の動きを反映して、例えば5つ星クラスではなく4つ星にしたり、7泊を3~4泊にする動きは出てくるだろう」と話す。

UBSのウォルムズレイ氏は、ブッキングドットコムに注目している。「予約の半分は欧州から得ているなど、同マーケットへの依存度が高いため、欧州の景況悪化による影響は特に大きい。ドイツを拠点とするトリバゴなども同じ。すでにエネルギー価格の激しい高騰が消費者を圧迫しており、こうした影響は懸念材料」。

とはいえ、パンデミック下での特需や株価高騰を享受した業種とは異なり、未曾有の危機に瀕してきた旅行産業では、各社とも必死の経営効率化を進めてきた。これが大きなアドバンテージになるという点で、各氏の意見は一致した。実際、ブッキングドットコムでは、2022年第3四半期決算で、同社の最高記録を更新している。

マーケティング戦略のこれから

グローバルOTAのマーケティング戦略はどうなるのか。ここ数年、各社に共通しているのは、グーグル広告による集客など「パフォーマンス・マーケティング」への依存を減らす方針だが、マハネイ氏は懐疑的だ。「あっという間に知名度を確立したエアビーアンドビーは例外として、消費者は、やはりグーグルで色々検索したいと思っている。長期的には、パフォーマンス・マーケティングは減少傾向にあるが、その減り方は本当に少しずつ。急激にグーグル依存度が下がることは考えにくい」。

ロイド氏も「各社ともブランドマーケティングに力を入れているが、同時にパフォーマンス広告にもかなり投じている。消費者も、ホテルが出すお得なレートは、様々な流通に出てくることを学んでいるから、あちこち検索することをやめない」。

エクスペディアが進めるアプリによる顧客囲い込みや、同社傘下でバケーションレンタル仲介「バーボ」をロイヤルティプログラムに組み込む方針については、「効果はあるが、あまりにもコストがかかる点がリスク」(ロイド氏)とし、上手く管理する手腕は欠かせないと指摘。ブッキングが展開するマーチャンダイズ(販促)戦略については「直接、アクセスして予約した顧客にポイントを提供するなど、小さなことの積み重ねだが、リピート購買を促すには効果的」(同氏)との見方を示した。

カーン氏は「すべての消費者が同じ施策を好む訳ではない」ことにも留意すべきと付け加えた。

最後に、サステナビリティについて。脱炭素に率先して取り組むことは、投資家や消費者からの高い評価につながっているのか?

カーン氏は、事業者の取り組みには2つあるとした。まず自社の排出ガス量を把握したり、カーボンニュートラルな事業体制を目指したりすること。もう一つは、ホテルやフライトを探す旅行者に便利なカーボン計測機能など、よりサステナブルに旅行できる対応ツールを提供すること。「最終的には、ホテルや航空各社が情報の開示を進めることで、消費者の意識はさらに高くなり、持続可能性を考えた商品選びや投資が促される」との考え。

マハネイ氏は、自身が暮らす米国西海岸では「すでに確実に意識の変化は起きており、特に一部の消費者の間で、サステナビリティ意識はとても強い。この分野では、投資家よりも消費者の方が進んでいて、それに引っ張られるように企業側も動き出している」との見方を示した。

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