トラベル懇話会は2023年1月12日、都内で第45回目となる新春講演会を開催した。主催者代表の挨拶に登壇した百木田康二会長は、国内旅行やインバウンドが本格回復するなか「海外旅行の復活が最大の懸念」と指摘し、同会として海外旅行の復活に向けて総力を挙げて取り組む方針を示した。
トラベル懇話会は旅行会社や航空会社・ホテル・ランドオペレーター・保険会社などの経営者から構成される旅行業界団体。
「海外に出かけていい」がカギ
百木田会長は、海外旅行復活のために必要なこととして「日本人が海外に出かけていいというお墨付き、機運醸成が一番のカギ」と述べ、そのための活動を活発化する方針を示した。具体的には、新型コロナウイルスの感染法上の分類の2類から5類への移行を後押しする。また、接種率が低い若年層が参加する海外教育旅行のためには、「ワクチン3回接種証明の撤廃が非常に重要」として、水際対策のさらなる緩和や見直しを求めていく考えだ。
今後の大きな課題としては、人材不足への対応、観光産業の脱炭素を提示した。人材不足については、旅行業の労働生産性の向上、長時間労働からの脱却が必要で、他業界へ流出した人材は「どんなに好きな仕事でも戻らない」と指摘。「そのための事業構造改革やビジネスモデルの転換についても議論を進めていきたい」と述べた。
脱炭素については、その重要性は国内外で高まっており、まずはCO2排出量を可視化した上で、業界全体での取り組みを促す基準を作る必要性があると提言した。
国は3つの取組みを強化
来賓としてあいさつした観光庁の池光崇審議官は、観光庁として3つの取組みを強化していく方針を紹介した。
全国旅行支援の継続、観光コンテンツの開発などによる新しい観光需要の開拓、第2のふるさと事業やワーケーション推進など「国内交流の拡大」、補正予算を活用した観光コンテンツの磨き上げなどでの「インバウンドの回復」、宿泊施設や観光施設のリノベーション、観光DXの支援などによる「高付加価値で持続可能な観光地域づくり」をあげた。
海外旅行再開宣言の第2弾を検討
日本旅行業協会(JATA)の高橋広行会長は、「今年は何が何でも海外旅行を回復させることが業界の最重要課題」と語り「夏休みごろまでに海外旅行回復の足掛かりを作り、下期にはそれを確かなものにしていきたい」と意気込んだ。
海外旅行は、2019年比で8割減の状態。その要因として円安、燃油高、航空運賃・地上コストの高騰などの外的要因があげられるが「旅行費用に左右されない富裕層の動きが極めて鈍い。経済的なことだけが原因ではない」との認識を示した。本質的な原因として「コロナは終わっていない中で海外に行っていいのかというマインドセットにある。」として委縮した日本人のメンタリティをほぐし、機運を高めることが重要だと強調した。
JATAでは昨年7月に「海外旅行再開宣言」を打ち出し、観光局、大使館、航空会社らと一体でアピールを行ったが、コロナ感染拡大期が重なり効果は限定的だった。髙橋会長は「今年は当時と異なり、渡航環境が改善されている」として、第2弾を検討していることを明かした。
さらに、「深刻な問題になっている海外旅行の仕入れ環境にどう対処するかが課題」と指摘。「1社単独で解決できなくても、業界が連携して解決策を見出していきたい」と問題提起した。