旅行テクノロジー企業のセーバー社は、ホテルのアンシラリー(付帯料金)販売やオペレーション効率化を支援する新ソリューションを新たに提供開始した。
このほど来日した同社の宿泊事業部門、セーバーホスピタリティソリューションズの海外セールス担当副社長、ニック・ジェフリー氏(写真右)は、様々な付帯サービスを商品化・販売するB2Cソリューション「リテール・スタジオ」を日本市場の顧客ホテル向けに紹介した。
「客室だけでなく、ホテル敷地内の様々なエリアや、ホテル内で提供している各種サービスの販売をサポートし、収益増につなげることが狙い」とジェフリー氏は説明。今後のホテル経営は、従来の「宿泊する部屋」中心から「ゲスト」中心へ焦点を変えることが必要としたうえで、売り上げについては「稼働客室数x宿泊数ではなく、総売上で考えるべき局面にシフトしている」との考えを示した。
セーバーでは数年前から、リテール・スタジオのコンセプトを構想していたが、パンデミックにより、客室以外のホテル資源の活用が課題として急浮上。ホテルのアンシラリー商品内容は多岐に渡り、従来はそれら一つ一つを宿泊部屋とひもづけたパッケージとして販売することで情報が膨大になり、複雑で分かりにくいことも悩みだったが、「リテール・スタジオ」では、アンシラリーのカスタマイズを可能にし、ユーザーにとって見やすく、選びやすい表示手法などを工夫した。
同社によると、2021年のホテル産業における推定アンシラリー売上比率(CarTrawler調べ)は、北米市場が最も高く37.1%・244億ドル(約3兆2700億円)、アジアでは26.7%・175億ドル(約2兆3450億円)。消費者がパーソナライゼーションを求めている昨今、ホテルも、画一的なパッケージ商品ではなく、ゲストそれぞれの要望に応じて、様々なサービスや商品の選択肢を用意し、これを柔軟に組み合わせて提供することが競争力アップにつながるとの考えだ。
具体的には、(1)アーリーチェックインやレイトチェックアウトなどのポリシー、(2)送迎やペット対応などのサービス、(3)シャンパン、生花、バスローブなどの商品、(4)ツアーやゴルフレッスンなどの体験、さらに(5)コワーキングスペース設置による敷地内空間の活用など、ホテルが収益化できる付帯サービスには様々なものがある。しかし、こうしたサービスを顧客が自由にカスタマイズできるところは少ない。
セーバーでは、まず既存システムをリテール・スタジオへアップグレードし、ホテル宿泊客向けのアンシラリー商品を拡充、販売することを2023年の目標に掲げている。さらに次の段階では、宿泊利用とは完全に切り離して、付帯サービスやホテル内施設スペースのみの販売も可能にする体制を構築する方針だ。そうすることで、付帯サービスを利用した顧客を、将来の宿泊客として取り込むチャンスも生まれる。
セーバーが2022年、モルディブやオーストラリアなど複数ホテルと実施したリテール・スタジオの運用テストでは、導入後のアンシラリー平均購入額が前年比で1部屋当たり4万円以上増、月額アンシアリー収益では平均2.7倍となった。現在、欧米やアジアで50軒のホテルやリゾートが、すでにリテール・スタジオの利用を開始しており、日本市場での利用拡大も目指す。
宿泊管理ソリューション「ヌヴォラ」で業務効率化
またセーバーでは、コロナ禍以降、働き手が不足している宿泊施設を支援する総合ソリューション「ヌヴォラ」を2023年から販売開始した。昨年買収したテック企業、ヌヴォラ(Nuvola)社のタスク管理ソリューションをこのほどクラウド上で統合完了した。
ヌヴォラは、ホテルのフロント業務、清掃やメンテナンスなどのバック業務、チャットなどゲスト対応ツール、デジタルキーを含むホテル管理システムの4領域を、スマートフォン上で総合的に管理できるシステム。ホテル内で発生する様々な業務や利用客情報を、部署を越えて全従業員が共有できるようになり、より効率的な対応が可能になる。
例えば、宿泊客からの部屋に追加タオルを届けてほしいといったリクエストにタイムリーに対応できるようになり、顧客満足度や評価の向上に役立つ。さらに「多忙を極める現場でも、従業員間のコミュニケーションが円滑になり、ホテルのチーム強化や、スタッフと宿泊客の良い関係作り、ホテルが目指すブランド・スタンダード達成にも貢献できる」とセーバーホスピタリティソリューションズ日本・韓国支社長の萩原一平氏(冒頭写真 左)は話した。
ホテルのオペレーション支援ツールには様々なものがあるが、「ワンストップで従業員とゲストをつなぎ、多種多様なタスクに対応できるのがヌヴォラの利点」と萩原氏。ヌヴォラ利用料は、ホテルの客室規模により設定する。
※ドル円換算は1ドル134円でトラベルボイス編集部が算出