2023年3月5日から開催されたITBベルリンの「中国旅行市場の展望2023」セッションで、複数のパネリストが「中国の旅行需要は急速に回復しているが、世界の観光産業はそれに対応する準備がまだ整っていない」と指摘した。
2019年の中国人旅行者の海外消費額は約2550億ドル(約33.7兆円)と推計されている。厳しいゼロコロナ政策によって、その額が3年間、世界から消えた。
中国政府は今年1月に旅行規制を大幅に緩和した。アリババの旅行プラットフォーム「フリギー」最高戦略責任者兼企業開発責任者のSimeon Shi氏によると、今年1月と2月の国際線の予約は前年同期比で4.5倍に急増。パッケージツアーとアトラクションの予約は同190%増になっているという。
しかし、需要は高まっているものの、国際線の供給量はパンデミック前の水準にはほど遠い。ビジット・ベルリン市場管理ディレクターのラルフ・オステンドルフ氏は「復便・増便に向けて、あらゆる航空交渉を迅速に再開させる必要がある」と訴える。
また、Shi氏は、旅行会社がツアーの需要に追いつくには数ヶ月必要だとの見解を示したほか、ビザ取得、パスポート更新の課題が続いているとした。
一方、中国人旅行者向けサービスでの人手不足も解消されていない。中国アウトバンド観光調査会社CEOのヴォルフガング・ゲオルグ・アールト氏は「パンデミック中、彼らは何もすることがなかった。今、彼らは旅行サービスから離れてしまった」と話す。
Shi氏によると、中国人旅行者の旅行スタイルがパンデミックの3年で変化し、有名な観光地よりも、SNSで話題の体験やアトラクションに強い関心を持つようになったという。また、アウトドア体験や家族旅行の人気も高まっている。
Shi氏は「旅行サービス事業者は、中国の変化する顧客ニーズに対応するために、より効率的に多様なニーズを満たす方法を探す必要がある」と指摘した。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
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オリジナル記事:Global Tourism Industry Woefully Unprepared for Return of Chinese Travelers
著者:Dawit Habtemariam氏