米航空会社が「プレミアムシート戦略」に本腰、ブレジャーや旅先テレワークの浸透が後押し【外電】

ロイター通信が、米航空会社のプレミアムシート戦略をレポートしている。

デルタ航空は、景気悪化に備えて、収益性の高いプレミアムシートを倍増させる計画を進行中だ。同航空のエド・バスティアンCEOは、ロイター通信に対して、今夏から全ての航空機にプレミアムシートを設置することを明らかにした。現在、同航空が保有する航空機の約2%を占める座席数50席の航空機のうち、数十機にはプレミアムシートが設置されていない。

同航空は今年、路線網全体でプレミアムシートをパンデミック前に比べ1日当たり1万5000席増やす計画。追加の座席料金をいとわない旅行者を引き付け、増益につなげたい考えだ。バスティアン氏は「価格だけで勝負するような『コモディティーのわな』からも脱することができる」と話す。

ライバルのユナイテッド航空とアメリカン航空も、プレミアムシートによる収入を重視している。ユナイテッド航空は、2026年までに北米で1便当たり53席のプレミアムシートを確保する見込み。2019年に比べ75%増えることになる。アメリカン航空は、2026年までに長距離便のプレミアムシートを45%増やす計画だという。

アメリカン航空とユナイテッド航空は、売上高に占めるプレミアムシートのシェアを公表していない。一方、デルタ航空ではこの割合が38%と、パンデミック前より3%ポイント上昇した。バスティアン氏によると、売上高に占めるプレミアムシートの割合は今後数年間、毎年1~2%ポイントずつ増加する見込みだという。

デルタ航空の座席に占めるプレミアムシートの割合は、来年には30%となり、2019年から2ポイント増。プレミアムシートが約35%を占めるボーイングMAX737-10型機の納入が2025年から始まると、この割合はさらに高まる見通しだ。

デルタ航空は来年、売上高の60%以上をプレミアムシートと航空券以外の収入が占めると予想している。パンデミック前にはこの割合は53%だった。アナリストによると、収益性は通常座席の7倍に達することもあるという。

バスティアン氏によると、デルタ航空のプレミアムシートはパンデミック以降、収益の伸びが低価格座席を上回っており、3分の2以上の顧客がプレミアムシートの再購入の意向を示しているという。

旅行形態の変化が後押し

各社がプレミアム収入を重視する背景には、パンデミック後の旅行形態の変化がある。ハイブリッド勤務の導入によってビジネスとレジャーを組み合わせた旅行(いわゆるブレジャー)や旅先テレワークが可能になり、可処分所得が多い顧客は旅行を増やせるようになった。

こうした変化の影響で、以前は法人が予約していた利益率の高い座席も、今では別の顧客で埋まっている。この傾向は持続的なものであり、航空事業の浮き沈みを軽減する上で役立つと見る業界関係者や専門家も多い。

現在、アメリカン航空は売上高の多くをビジネスとレジャーを組み合わせた旅行客から得ているという。こうした旅行者はまた、一般的なビジネス顧客よりも多く消費する傾向がある。

業界団体のエアラインズ・フォー・アメリカによると、パンデミック以前は、米国の主要航空会社の旅客収入の最大50%を出張が占めていた。

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