観光庁、日本人の海外旅行を促進、24カ国・地域を重点デスティネーションに、日本旅行業協会と共同で

観光庁と日本旅行業協会(JATA)は2023年5月10日、共同で「今こそ海外!宣言」を発出した。コロナ前の7割まで戻ってきた訪日旅行(インバウンド)に対し、いまだ4割程度と停滞する日本人の海外旅行(アウトバウンド)の早期回復につなげるのが目的だ。

5月8日にコロナの感染症法上の分類が5類に移行したことで、日本の出入国時の水際対策が終了し、コロナ禍前と同様に海外旅行を楽しめる環境が整った。宣言発出の記者会見で、観光庁長官の和田浩一氏は「この宣言で、国民の皆様に海外旅行へ出かけていただけるよう呼びかけ、後押しするための施策を展開する。官民が一体となって『海外旅行に行ってもいい』という機運を醸成し、国民が海外旅行に出かけることで、さらに多くの方が海外旅行を楽しむようになる好循環を生み出したい」と話した。

さらに和田長官は、観光庁が海外旅行を促進することについて「日本人の国際感覚の向上と国際間の相互理解の増進が、国際間の良好な関係構築につながる。新時代のインバウンドの拡大と、それによる経済活性化に資する」と政策的意義を強調。そのうえで「島国の日本が海外と交流をするには航空ネットワークが欠かせないが、それらを維持・拡大するには双方向の需要を早期に戻す必要がある」と指摘し、日本発の海外旅行需要を増やす重要性を説明した。

観光庁長官の和田浩一氏

これについては、JATA会長の髙橋広行氏も「国際交流は双方向であることが大前提。しかしながら現在の日本は著しくバランスを欠いた状態にある。早急に是正する必要がある」と指摘。このままアウトバウンドの低調が続いた場合、「海外における日本人マーケットのプレゼンスが低下し、航空座席やホテルの手配が厳しくなる。これまでと同様のサービスを提供できなくなるのではないか」と危惧した。

髙橋会長は、早期に動き出した欧米の海外旅行はコロナ前の8割まで戻っているほか、日本と同様に厳しい水際措置をとっていた韓国や台湾も「この最近の回復は目覚ましいものがある。特に韓国は日本のほぼ倍の勢いで戻っている」と世界の海外旅行市場の動きを説明。「日本だけが周回遅れ」と、世界から見れば日本市場が特殊な状態にあることを強調した。

4つの施策で早期回復を後押し

回復に向け、「今こそ海外!宣言」では、官民一体で4つの施策に取り組むことを明記している。

  1. 幅広い関係者と連携したプロモーション
  2. 魅力的なキャンペーンの促進
  3. 若者の国際交流の更なる促進
  4. 安全・安心な旅行環境の整備

このうち、1.幅広い関係者と連携したプロモーションでは、「#今こそ海外」を官民共通の旗印とし、民間だけでなく観光庁のホームページやSNSも活用して集中的にプロモーションを展開する。2.魅力的なキャンペーンの促進では、旅行会社や航空会社、各国・地域の政府観光局などと連携し、パスポート取得費用の半額サポートや航空券プレゼント、キャンペーン旅行商品の展開などを強力に推進していく。

髙橋会長はこれらの取り組みにより、「夏休みにかけて回復の道筋をつけ、今年後半には海外旅行の本格的な回復の流れを作り上げ、来年(2024年)の極力早い段階でコロナ前の2000万人レベルまで近づけたい。海外旅行の潜在旅行は間違いなく大きなものがある。一刻も早く、海外旅行を楽しむ日本人旅行者の姿を取り戻せるよう、最大限の努力をしていく」と話した。

JATA会長の髙橋広行氏

当面の重点デスティネーションは24カ国・地域

また、今回は観光庁のアウトバウンド政策パッケージにおける当面の重点デスティネーションとして、24カ国・地域を発表。和田長官は「関係者の意見とインバウンド事業の重点市場などを踏まえ、決定した」と説明した。観光庁も各デスティネーションの特性を踏まえ、各政府観光局等とも連携し、観光庁のホームページやSNSでも積極的に情報発信をしていく方針だ。

アウトバウンド政策における当面の重点デスティネーション

  • 東アジア:中国、香港、韓国、台湾
  • 東南アジア:インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、インド
  • 北米・中南米:カナダ、アメリカ、ハワイ、グアム、メキシコ
  • 欧州・中東:スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、ドイツ、イタリア、トルコ
  • オセアニア:オーストラリア

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