クルーズの世界大手ロイヤル・カリビアン・グループ(RCG)は、日本に発着・寄港するクルーズを本格的に再開する。このほど、グループ傘下のクルーズ会社5社のうち、日本発着・寄港に力を入れる3社の幹部が来日し、パートナーやメディア向けに最新情報を共有する説明会を開催した。
すでに今年は3月から、最高級ブランドの「シルバーシー・クルーズ」が日本発着クルーズを2隻体制の計9本計画で再開。世界最大客船を多数運航するカジュアルクラスのブランド「ロイヤル・カリビアン・クルーズ」は、夏と秋に日本/シンガポール間のクルーズを、乗客定員4246人の大型客船「スペクタクル・オブ・ザ・シーズ」で4本運航する。プレミアムクラスのブランド「セレブリティ・クルーズ」も9月から「セレブリティ・ミレニアム」での日本発着クルーズを再開し、4本運航する。
2024年はさらに拡大する方針だ。シルバーシー・クルーズは春の2本に加え、秋には温室効果ガス排気量を4割削減する最新鋭のエコシップ「シルバー・ノヴァ」を配船。セレブリティ・クルーズはセレブリティ・ミレニアムのアジア通年配船を決め、夏期に横浜発着クルーズを18本運航する。そして、ロイヤル・カリビアン・クルーズでは春から中国発着のクルーズを再開し、日本寄港を実施する。
来日した、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)副社長兼マネージングダイレクター シンガポール&アジア太平洋のアンジー・ステファン氏は記者会見で、「日本を長期的パートナーとしてコミットする。アジアのプレミアムな寄港地として育てていきたい」と話し、日本をソースマーケットとしてはもちろん、目的地として重視する姿勢も強調した。
RCGの政府関係(アジア)地域副社長のウェンディ・ヤマザキ氏は、クルーズライン国際協会(CLIA)や同社のデータを用い、クルーズによる寄港地への経済効果やアジア市場でクルーズを振興するポテンシャルを説明した。7日間のクルーズの場合、寄港地での平均消費額は乗客1人当たり750ドルに上り、乗客の10人に6人がクルーズの最初の寄港地への再訪を希望するという。アジア市場は2030年までに20億人以上が中産階級層になることが見込まれているが、クルーズの浸透度は米国の4%に対してわずか0.2%未満であり、今後の成長が期待できるとした。
ヤマザキ氏は、こうしたクルーズのチャンスを示しながら、RCGの日本の寄港地がさらに増加することを説明。今年3月に日本政府が発表した「観光立国推進基本計画」とそのキーワードである「インバウンド回復」「観光の質の向上」「消費額拡大」「高付加価値化」「地方誘客促進」「持続可能な観光」を示した上で、RCGがセグメントの異なる3つのクルーズで多様な客層を日本に呼び込み、世界的には知名度がまだ高くない寄港地に直接訪れる優位性を強調。「クルーズはコロナで大きなダメージを受けたが、業界として新しく高度な衛生基準や安全基準を設けることができた。日本での国際クルーズ再開をうれしく思っている。日本の観光活性化の戦略をサポートし、ともに盛り上げていきたい」と話した。
説明会には、自民党・クルーズ船観光振興議員連盟(クルーズ議連)の議員らも参加。同副会長の金子恭之氏は、国が民間による受入施設整備を促す「官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾」事業に言及し、RCGが熊本・八代港などの国際クルーズ拠点整備に関与していることを紹介。「国内の寄港地は万全を期して待っている。多くの旅行者を日本に連れてきてほしい」と話した。
東京が最高級船の世界クルーズで出航地に
来日した3社の幹部は、各社のクルーズの特徴や日本での国際クルーズの停止中に発表されたアップデート情報を紹介した。
例えば、世界最大級の大型客船を多数運航するロイヤル・カリビアン・クルーズは、2024年に乗員乗客定員が最大 9950 人となる世界最大客船「アイコン・オブ・ザ・シーズ」(25万800トン)を就航。セレブリティ・クルーズでは先ごろ、日本発着クルーズで運航するセレブリティ・ミレニアムを含む5隻が、オーシャン・クルーズ部門で初めてフォーブス・トラベルガイドのスター・アワードを獲得した。
さらにシルバーシー・クルーズでは、運航地域の食材を優先的に用いて郷土料理を作り、寄港地の食文化を知る「S.A.L.T.(Sea and Land Taste)プログラム」の実施や、2025年のワールドクルーズの出航地として初めて日本の東京を設定したことを紹介。同社アジア太平洋地域マネージングダイレクターのアダム・ラドワンスキー氏は同社が日本を重視する姿勢を強調し、「日本では、地域の生産者やコミュニティと連携し、地域に根差した食事やエクスカーション(陸上観光)を提供する。ベストな日本の体験を提供していく」と話した。