旅行需要の回復が進むなかで、ホテルや旅館の経営者にとって、ますます深刻な悩みとなっているのが従業員不足だ。おもてなしは磨きつつ、多忙な現場の業務を効率化・省人化したい、仕事の属人化を改めたい。そんな課題をテクノロジーの力で解決するクラウドサービスを展開する、かんざしの新サービスとして提供するのが、キャンセル料などの請求・回収を自動化する「わきざしクラウド」だ。
今春から現在までの回収率は8割以上という同ツールの活用方法と、同社が目指すこれからのDX戦略について、代表取締役社長の秋山匡秀氏に話を聞いた。
「わきざしクラウド」は、予約キャンセル料などの各種請求・回収業務を自動化するツール。最大のメリットは、キャンセル料請求にかかる従業員の心理的負担・業務負荷を大幅に軽減できることだ。
「キャンセル料の回収率をアップするには、キャンセル発生から請求までにかかる時間を極力、短くする必要がある。だが、目の前にお客様がいて、色々な業務に追われているホテルの現場において、手作業だけでこれを迅速かつ完璧におこなうことは不可能に近い」と秋山氏は説明する。こうした状況を打破し、宿泊経営者にとって“懐刀”となるようなDXツールを目指したという。
キャンセル料回収の自動化で負担軽減
わきざしクラウド導入に必要となるのは、インターネット接続環境のみ。フリープランは初期費用・月額費用ともに無料で、結果が出た場合のみシステム利用料が発生する仕組みだ。
キャンセル料請求書の送付は、SMSやメールなど複数の手法から選ぶことができる。請求書を受け取ったお客様は、決済ページにアクセスして簡単に支払を完了。決済手段はクレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、アップルペイ、グーグルペイなど複数の選択肢を用意している。訪日インバウンド市場が急回復するなか、多言語化にも取り組んでおり、英語や中国語など、ニーズの多いところから対応していく計画だ。
請求書を送っても支払いがない場合は、徐々に強度を上げながら自動的に督促を繰り返すことができる。今のところ2、3回送付を繰り返すと、支払いに応じてもらえる場合が多く、その回収成功率は80%以上(※)となっている。
※2023年4月~8月までに督促が完了した件数を母数とし、回収に成功した割合
さらに、わきざしクラウドは、キャンセル料以外の請求にも利用できるモードも備わっている。物損の賠償やクリーニング代のほか、お祝いのケーキなど追加注文を受けたオプションサービスなど、さまざまな事案の請求業務がスマートに完結する。
キャンセル料回収後のアフターケアも充実
また、キャンセル料請求後のアフターケアにも配慮している。同社が事前におこなった約200軒のホテルや旅館へのヒアリングでは、「キャンセル料を回収した後も、お客様との良い関係が続くだろうか」という不安が多く挙がった。こうした懸念を払拭するために考案したのが、様々な優待サービスのクーポン発行機能だ。
クーポンの内容や使い方は、宿泊施設側で自由にアレンジが可能で、キャンセル料を支払った顧客だけでなく、あらゆる顧客へのサービスとしての活用も可能だ。たとえば、ドリンク一杯サービスやレイト・チェックアウト、宿泊割引券など、使用方法を選ばず自由に設定ができる。発行したクーポンはメール送信や、出力して紙での配布が可能。宿泊客が利用する際は、クーポンをスマホで提示してもらうか、紙に印刷されたQRコードを読み取る仕組みだ。
わきざしクラウドを導入する宿泊施設数は、目下、前月比で倍増のペースが続いており、顧客のホテルや旅館からも好評という。
キャンセル料請求サービスや、それを導入するホテルや旅館が増えれば、旅行者がキャンセル料を支払うことが当たり前になり、将来的なキャンセル料を踏み倒す行為の抑制効果にもつながると同社では考えている。
業務の属人化を防ぐ効果も
ようやくコロナ禍から抜け出した日本では、旅行需要の回復に伴い、宿泊施設の客室稼働率は上昇している。こうしたなか「ホテルや旅館では、ひとつひとつの客室をより大切に販売したいと考えている。キャンセル発生分をしっかりカバーしたいという意向は、以前より強くなっている」と秋山氏は話す。
同時に、ますます深刻になる従業員不足の中、属人化しがちな各業務のノウハウをいかに維持するかという課題を指摘し、「わきざしクラウドを含め、当社のかんざしシリーズは、誰でも簡単に使えるように設計されていて、新しい担当者への引継ぎもラク。自動的に処理できる業務が多く、効率的という点も高く評価いただいている」と強調した。
今秋からは、顧客ホテルからの要望をきかっけに、館内レストランやエステなど、宿泊以外の付帯施設でのわきざしクラウド導入も始まった。さらに町の飲食店など、様々な異業種を対象としたわきざしクラウドの展開にも力を入れていく方針で、「あらゆる状況、あらゆる業種を対象に、キャンセル料の請求・回収ができないという社会課題をデジタルの力で解決していく」(同氏)。
アセットを活かし、地域の観光活性化を多面的にサポート
かんざしは、「クラウドでつないで世の中を便利にする」を理念に掲げ、これまでにホテルや旅館経営の業務効率と収益性アップにつながる様々なクラウドサービスを開発・提供してきた。複数の販売チャネルを一元管理する「かんざしクラウド」から今回の「わきざしクラウド」まで、合計での導入実績は、ホテル・旅館など累計5000軒以上。さらに今後は、宿泊以外の領域でも、様々な観光DX事業に取り組んでいく方針だ。
なかでも秋山氏が今後の重点分野と位置づけるのが、国内各地の自治体に向けた観光DXサポート事業だ。かんざしは2023年7月、地方創生事業を展開するエヌズ・エンタープライズ社と経営統合。これまでのDXツール提供のほか、傘下となった「ニーズツアー」でのキャンペーン展開や地域プロモーションなど、地域ごとの異なる課題に沿った幅広いサポートを提案できる体制が整った。
秋山氏は「日本国内の旅行先を分散化するためには、デジタル活用をもっと進める必要がある」と説く。「すでに有名なエリア以外にも、魅力的なところは日本各地にまだまだ埋もれている。こうした新しいエリアを知ってもらい、もっと行きやすくするために、かんざしが貢献できることはたくさんある」。
訪れる旅行者が増えれば、これを受け入れる地域側でも、デジタルによる業務効率化が急務になる。「旅行者の送り手と受け手、両方の課題を解決するソリューションを持っていることが、当社の最大の強み。自社内に技術開発チームを有しているので、これまでも顧客から寄せられる様々な悩みや要望に寄り添うサービスを展開してきた。日本の観光市場が拡大するなかで、我々の観光DXツールが役立つ場面は、これからさらに多くなるはずだ」と未来を展望している。
広告:株式会社かんざし
お問い合わせ先:
- 担当:西村、今井、小山、案浦(アンノウラ)
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記事:トラベルボイス企画部