2023年10月末、ツーリズムEXPO2023への参加のためにインドネシア共和国観光クリエイティブエコノミー省マーケティング担当副大臣のニマデ・アユ・マリティニ氏が来日した。インドネシアでは、バリ島を訪れる外国人を対象に2024年2月14日から観光税の徴収を予定。島の環境保全のための資金とする方針だという。今後、日本市場に対しては、バリ島南部に一極集中する観光客の分散化を図りながら、コロナ禍で落ち込んだ観光客数の回復を目指す考えだ。
観光税の導入、決定まで4年
マリティニ副大臣によると、2024年2月から導入されるバリ島の観光税は15万ルピア(約10USドル)。バリ島を訪問する際、1回の旅行につき1回徴収される予定だ。具体的な徴収方法はまだ決定されていないが、「E-VISAの取得時に合わせて徴収するなど、オンライン決済ができる形で考えている」という。
マリティニ副大臣は、バリ島の観光税導入の経緯について、バリ州政府からの要請が発端で「4年ほど前から審議にかけられていた」と話す。「観光税導入の案件は観光ゴミ問題などに対する地域住民の意見を汲んだ州政府からの要請。これをインドネシア政府で審議にかけ、このほど施行決定に至った」。
そもそも、人口約400万人のバリ島に、コロナ禍前の2019年には約624万人の観光客が訪れていた。そのほとんどが、クタやレギャン、ヌサドゥアなどの南部に集中。観光客によるゴミをはじめとした環境への影響は、深刻な問題となっていた。
コロナ禍のあいだ、観光客数は数十万人までに減少したものの、国際旅行の回復とともに再び旅行者数は爆発的に増加。現在は年間約500万人まで回復し、再び、ゴミ問題に直面している。
徴収された観光税はバリ島のゴミ処理など環境整備・保全、交通の整備、バリ島の芸術やそれにまつわる生活文化の保全・維持など、持続可能な観光地づくりのために使われるという。
一方で、副大臣は「観光客がバリ島南部に極端に集中することも、バリ島観光税の導入の一因。しかし、この集中はオーバーツーリズムとは違う」との見解。そのうえで「観光客にはバリ北部や西部、あるいはバリ島近郊の島々などにも目を向け、バリ島の新しい魅力を発見していただきたい」と話し、政府としても観光客の地域分散に取り組んでいく考えを示した。
日本市場へはインドネシアの多様性をアピール
日本からの旅行者については、外国人観光客数の第3位(2019年)から2022年は12位に落ち込んでいる。今後は、観光客数のリカバリーを図るとともに、バリ島一極集中からバリ島以外へのデスティネーションのPRを行い、分散化を目指していく考えだ。
具体的なデスティネーションとしては、バリ島からアクセス至便なロンボク島やコモドドラゴンの島であるコモド島と拠点の町ラブアン・バジョ、さらにジャワ島の世界遺産ボロブドゥール遺跡、美しいビーチで知られるマンダリカやリクパン、雄大な自然景観がトバ湖を提案。また、副大臣はインドネシアには数多くの島々と300以上の民族が暮らす多様性を挙げ、「バリ島各地に住む地元の人たちとの交流や、バリ島以外のインドネシアのバラエティ豊かな魅力に触れていただきたい」と語った。