エクスペディアとブッキングが「民泊」(短期宿泊レンタル)市場の発展に向け共同戦線【外電】

民泊など、短期宿泊レンタル(STR:Short Term Rental)市場の拡大に伴い、政府当局による規制も世界各地で厳しくなっている。例えば、米国のニューヨークやサンフランシスコ、さらにバルセロナ、フィレンツェ、アムステルダムなどだ。

こうした逆風はあるものの、宿泊市場全体に占めるSTRのシェアは、引き続き拡大している。データ分析のAirDNA社およびSTR社が2023年10月に発表したレポートによると、米国でのSTR市場占有率はほぼ倍増しており、2018年の8%から2023年5月時点では15%となった。

大手OTAのブッキング・ドットコムとエクスペディア・グループでも、STRを取り扱っている。両社の経営幹部らは、今こそ両社を含めた関係各社が一つになり、当局による懸念に対応していくべきであり、それが宿泊産業のさらなる発展につながるとの考えで一致した。

STR事業者の連携が今後の発展につながる

米国オーランドで10月に開かれたバケーション・レンタル経営協会(VRMA)の国際会議では、エクスペディア・グループのバケーションレンタル・パートナー支援担当ヴァイス・プレジデント、ティム・ロゾリオ氏が「この業界では、規則について知らなかった、で済ませようとする事業者が多かった頃もある」と話した。「だが時代は変わった。少しずつではあるが、適正価格で、適切な宿泊施設を提供しよう、適切なパートナーシップのあるエコシステムを作ろうという方向へ、事業者の考えがまとまりつつある。もちろんOTAもその一翼を担うことになるだろう。当社には、ロビー活動を担当するスタッフも大勢いる」。

会議のモデレーターを務めたバケーションレンタル・マーケティング・ブログの創業者、マット・ランドウ氏は、ブッキング・ドットコムのマネジングディレクター、ベン・ハレル氏にも質問。ブッキングがSTRに関する理解促進に、あまり力を入れてこなかった理由を問い正した。

これに対し、同氏は「確かに、我々よりも他社が積極的に取り組んでいたところはあると思う。もちろん、あらゆる議論に参加する用意はある」と応じた。

「(STR事業者が)一つにまとまる必要があるという点については、同意見だ。ブッキングは、この分野のためになり、成長を後押しできることなら、喜んで貢献する。あらゆる人に幅広くチャンスがある形を目指して、関係各社と協力し、合意形成が生まれるように当社も取り組んでいく」「当然ながら、バケーション・レンタル市場が存続するだけでなく、さらに発展していくことが望ましい」と話した。

一方、エクスペディアのロゾリオ氏は、合意形成に向けて重要になるのはバランスであり、ギブ&テイクの両面において積極的であることを求めた。

「我々がこれから取り組むべきことは、例えば、データの共有。登録番号を付与することには賛成だし、ごみやパーティーでの大騒ぎなど、問題行為について情報を共有することにも異存はない。そうすることで、旅行業にとって重要な事業を守ることができるなら」(同氏)。

「事業を維持し、成長を守ることにつながるなら、ある程度のゾーニング導入についても検討する用意がある。一部の州では、全て認めるか、一切認めないという議論になっているが、こうした極端なアプローチでうまく行くのだろうか」。

グーグルの新ツール活用やキャンセル規約でも議論を展開

なお、同会議が行われた日には、グーグルから、レンタル物件の価格が比較できる新ツールの発表があった。複数の予約サイトに掲載された価格を比べられるという。同ツールと、グーグルによる旅行検索・予約領域での展開について意見を求められたハレル氏は、脅威ではなくチャンスであるとの見方を示した。

「抵抗する必要はない。むしろ利用者がどこに集まっていくのか、何を見ているのかを知り、理解することに役立つ」「この分野に携わる我々すべてにとってチャンス。より多くの人に知ってもらえる」と同氏は話した。

「バケーション・レンタルが、ホテルを検索している人の目にも触れる機会を増やすために活用したらよい」「まだ知らない人に対する認知度を上げる上で、グーグルは役に立つ。グーグルはウェブサイトではなくホームページで、多くの場合、検索のスタート地点になる。好き嫌いはあると思うが、現実を直視し、チャンスは最大限に活かすべきだ」。

レンタル物件の供給は、ここ数年間で増えているため、ロゾリオ氏が率いるチームでは、パートナーがより多くの予約を獲得するためにできる改善点に取り組んでいる。

「例えば、キャンセル規約の緩和はその一つになるだろう。それから滞在期間。以前は一週間以上の滞在から予約を受けていたが、これを最低3泊以上とし、長い週末を利用した滞在も受け入れる必要がある」。

「より多くの人に利用してもらえるように、前例のないことにも挑戦したい。悪くはないが、トップクラスでもない物件を運営しているなら、予約確保のために、できることは何でもやるべきだ」。

最後にハレル氏は、集まったバケーション・レンタル関係者に対し、ホテルを敵視しないように訴えた。旅行者が必要とする宿泊施設は状況によって異なるので、両者は共存共栄できる2つの選択肢になる、と考えている。

「あなたのバケーション・レンタルの隣に、同じぐらいすばらしい物件があったとしても、心配はいらない。需要は充分にある。ホテルについても同じように考えるべきだ」。

「どうしても、お互いを認めたくないと思ってしまう傾向はある。しかし、実は良い組み合わせになると私は考えている。まったく異なる商品であるし、利用客や利用するタイミングも異なるからだ」。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正規提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。 

オリジナル記事:EXPEDIA GROUP, BOOKING ON COMING TOGETHER WITH “ONE VOICE” TO SUPPORT SHORT-TERM RENTALS

著者:MITRA SORRELLS氏

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