訪日旅行のイノベーターが見つけたブレイク前夜の観光地、移動データから読み解くトレンドとは? -トラベルボイスLIVEレポート(PR)

勢いよく回復しているインバウンド観光。ようやく実現した訪日旅行で、外国人観光客はどんな旅行をしているのか。ナビタイムジャパンの訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」の利用データからは、トレンドの先駆けとなる訪日観光のイノベーターが訪れている観光スポットが浮かび上がった。

2023年10月11日開催のトラベルボイスLIVEでは、ナビタイムジャパン地域連携事業部事業部長の藤澤政志氏が、訪日観光客が増加している観光地のランキングとともに、同社が分析したブームの兆しや今後、インバウンドを誘客するうえでのポイントを発表した。

データを読み解くポイント

今回、使用したデータは、ナビタイムジャパンが訪日外国人向けに提供しているナビゲーションアプリ「Japan Travel by NAVITIME」で、同意を得たユーザーのGPSデータ。一定の時間で測位した位置データを、地図上に落とし込む。これにより、ユーザーのたどったルートやスポットでの滞在時間を、ユーザーの属性別(国籍や性別、年齢など)に知ることができる。

今回、分析したデータの対象は、2023年1月~8月の計測分。地図を1キロ四方に等分化し、ひとつのマスのなかで30分連続で取得できたGPSデータをその地点で観光した人のデータと認識して、2019年同期の取得分と比較した。その結果、外国人訪問者数の絶対数でランキング上位となった地域は京都などの主要観光地が多く、そのラインナップはコロナ前と大きく変わりがなかった。しかし、増加率には違いがみられ、コロナ前よりも訪日客数が伸びた地域があった。

藤澤氏は、この増加率に注目。その理由について「イノベーター的な人たちが増えた基準になる」と説明した。観光庁の消費動向調査で、いま日本を訪れている外国人観光客の平均宿泊日数とリピーター割合が2019年より拡大していることも指摘し、「長期滞在化とリピーターの増加が、観光トレンドとして表れた結果になった」という。

コロナ後に訪日客が増加している市町村ランキング

ナビタイムジャパンのデータで、2019年比の増加率が大幅に上昇している市町村のランキングは、以下の画像の通り。藤澤氏は、この中から代表的な市町村をピックアップし、人気の高いスポットやその背景などを説明した。

1位の三重県南伊勢町は、2011年から「伊勢まぐろ」の養殖を開始した町。同町の観光協会によると、コロナ禍にオープンした「伊勢志摩まぐろ食堂」に、伊勢神宮などから外国人観光客が流れて来るようになった。町内には海外留学経験のある漁師が営むゲストハウスがあり、そこでの宿泊と食事を含む漁師体験のセットを、欧米豪を中心した観光客が楽しんでいるという。

また、2位の山形県・高畠町では、世界最大のワインコンクールで金賞を受賞した高畠ワイナリーに、台湾からの観光客の増加がデータに表れた。藤澤氏は台湾のホテルで、高畠町の酒とワインをテーマにしたイベントが開催され、高畠ワイナリーも参加していたことを紹介した。

同様に、プロモーションが寄与したと思われるのが、8位の青森県西目屋村だ。青森県が台湾プロモーションを実施した。「台北市で最も予約困難といわれるレストランのオーナーシェフであるアンドレ・チャン氏と台湾のグルメライターを一緒に招請したことが、要因のひとつではないか」と藤澤氏は見ている。

このほか、6位の山梨県丹波山村は日本一のローラー滑り台があり、そこで楽しむ様子を映した動画が多数、ネット上に上がっていることが分かった。7位の山梨県小菅村の近くにあり、「小菅村に行くついでに寄っているのではないか」と藤澤氏。小菅村自体も、多摩川の源流や地ビール工場など観光素材が豊富で、村自体を宿泊施設と捉える分散型ホテルを中心とした滞在型の観光が増えているという。

Japan Travel by NAVITIMEの利用データから集計

イノベーターが探し出した観光スポット

さらに藤澤氏は、欧米系の訪日観光客のデータに絞り、コロナ前より増加している市町村をピックアップ。新たなムーブメントが感じられるスポットとして紹介し、そのポイントを解説した。

例えば、熊本県の菊池市は、菊池渓谷を中心にフランス人を中心に来訪が増えている。20世紀の最後の巨匠といわれるフランス人画家バルテュスの常設展示が、同市の菊池夢美術館・菊池市中央図書館にあり、フランスで知られている場所なのだという。その背景には、バルテュスの妻が菊池一族の末裔という、フランスとの縁がある。藤澤氏は「こういう点も、地域が誘客するうえでキーワードになるのではないか」と話した。

また、秋田県小坂町は、2週間、4週間などの単位で日本語とともに日本の田舎の暮らしを学ぶ「秋田田舎スクール」が2019年にオープンしており、ここに外国人が来ているという。藤澤氏は「観光スタイルは大きく変わっている。それにあわせて地域の観光資源を再定義する必要があるのでは」と話した。

さらに、藤澤氏は前出の増加率ランキング11位となった奈良県曽爾村での新たな動きにも注目。曽爾村には以前から外国人観光客は来ているが、今回のデータではキャンプ場での滞在が増えていた。日本政府観光局(JNTO)や日本オートキャンプ協会の資料には、特に台湾はキャンプの人気が高く、北海道のキャンプ場の需要はコロナ前から増加していたことが記されている。これを踏まえ、藤澤氏は「今後、日本のキャンプ場は(訪日観光で)可能性がある」とみているという。

これ以外にも、特定復興再生拠点区域の避難指示が解除された福島県双葉町と福島県浪江町には、震災遺構を見る「ホープツーリズム」の外国人が来訪するようになった。陸奥湾周辺の青森県野辺地町や六ケ所村では、欧米系の旅行者が増加しており、風力発電などの再生可能エネルギーや核燃料関連施設を訪れている。こうした傾向に、藤澤氏は「新しい観光資源を持つ地域が増えている」との認識を示した。

左から)トラベルボイス代表取締役社長CEOの鶴本、ナビタイムジャパン地域連携事業部事業部長の藤澤氏

観光地をどうやって見つけるのか

トラベルボイス代表の鶴本は藤澤氏の講演から、いまの外国人観光客を呼び込むポイントとして、平均宿泊日数の増加と情報発信の2点をあげ、クロストークとQ&Aを開始した。

まず、平均宿泊日数の増加について、コロナ禍で一気に浸透した在宅勤務を旅行先でする「旅先テレワーク(ワーケーション)」の有無を聞いたところ、藤澤氏は今回のヒアリングでは旅先でのテレワークが増えている話は聞かれなかったと説明。ただし、滞在日数の増加に関連する傾向として、観光客の国籍・地域によって観光の仕方に違いが見られたことを紹介した。

例えば、岩手県盛岡市はニューヨーク・タイムズが発表した「2023年に行くべき52カ所」の1つに選ばれた後、外国人観光客が増加。欧米系の観光客の場合、東京から新幹線で訪れ、盛岡で宿泊をして東京に戻るパターンが多い。一方、アジア系の観光客は盛岡の周辺地域へと足を延ばしており、「せっかく東北まで来たから、他の町にも行きたいという考えが見える」という。

これを受けて鶴本は、「インバウンド誘致は全体ではなく、国籍・地域ごとに観光スタイルを捉える重要性を感じる」と感想を述べた。

また、情報発信に関しては、参加者からも「訪日客が南伊勢町の伊勢まぐろなど、日本人の自分でも知らなかった場所と見どころを見つけていることが興味深い。どのように情報を入手しているのか」という質問があった。これに鶴本は、基本情報として、観光客が旅行先を決定する行動過程「DCATS」を表で示しながら説明。

藤澤氏は、今回取り上げた観光地の多くは、クチコミで自然に広まったり、施設の経営者、地域のリーダーなどが自ら仕掛けていたことを指摘。市町村でも情報配信はしているものの、訪日客向けの情報配信が十分でなかった。「今後の誘客で大切なことは、情報発信の見直し。各市町村の情報配信を広域DMOや都道府県がサポートする体制が求められる」と話した。

旅行者が旅行先を決定するプロセスをまとめた「DCATS」

広告:ナビタイムジャパン

記事:トラベルボイス企画部

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