グローバル展開を着実に進めているトリップ・ドットコム(Trip.com)グループ。アジアを皮切りに欧州への投資を拡大し、最近ではアラビア語市場でのローカライズにも力を入れている。コロナ禍にはテクノロジー開発への投資に注力。旅行スタイルが変化するなか、ユーザーフレンドリーなアプリの開発などを加速させた。
世界の旅行市場がコロナ前の「通常」に戻りつつあるなか、トリップ・ドットコムは現状をどう見ているのか。そして、今後の訪日市場は？同グループ国際市場マネージングディレクター兼副社長ブーン・シアン・チャイ氏に聞いた。
訪日旅行の予約は2019年越え
トリップ・ドットコムの業績は、コロナ禍を経て順調に回復している。2月に発表された2023年度通期の売上高は前年度比122%増の445億人民元(約8900億円)、当期利益も前年度の14億人民元(約280億円)から99億人民元(約1980億円)に大幅に増加した。
チャイ氏は、現在の旅行需要について「中国国内の旅行は、コロナ禍でも好調だった。それが現在でも続いている。今年の春節期間は2019年を上回った。グローバルなアウトバウンド（海外旅行）についても世界にビジネスを拡大していることから、すでに2019年実績を超えている」と明かし、力強い成長に手応えを示した。
また、チャイ氏は中国から日本へのアウトバウンド（訪日旅行）についても言及。フライトの回復の遅れやビザの問題で、2024年1月および2月の訪日客数は2019年比60%ほどにとどまっているが、トリップ・ドットコムの予約はすでに2019年を超えているという。
一方、中国へのインバウンドについては、中国政府は誘客を促進していく方針だが、ビザ免除対象国がまだ限られているため、「これから」という認識を示した。
「ホテル × X」の販売強化、日本では地方重視
トリップ・ドットコムのユーザーの60%がミレニアル世代とZ世代。「日本でも、シンガポールでも、マレーシアでも、かつて中国人は大型バスで団体で移動していたが、今は個人によるオンライン予約が中心。彼らの旅行に対するメンタルもスタイルも変化している」とチャイ氏。そのうえで、「彼らが求めているのは旅先での経験だ」と強調する。
例えば、シンガポールへの旅行では、現地で開催されたテイラー・スウィフトのコンサートを目的とした予約が多かったという。
「我々が現在力を入れているのは『ホテル × X』。ホテルの部屋だけで売らないことだ」とチャイ氏。スパやアフタヌーンティーなど、ホテル施設内のアクティビティとの組み合わせ、あるいはタビナカでの体験との組み合わせをプラットフォーム上で仕掛けているという。その一つとして「バンコクではBTSの1日乗車券とホテル予約を組み合わせて販売している」と例を挙げた。
その傾向に合わせて、アプリでも工夫を凝らす。ホテル、フライト、アクティビティ&ツアーなどの予約動線に加えて、新たにユーザーがデスティネーションのストーリーを伝えるコンテンツを充実させた。チャイ氏は「ユーザーのコミュニティができており、それが旅行予約のエコシステムとして機能している」と自信を示す。
訪日市場についても、日本らしい体験の提案を重視。その一環として、「地方への誘客を進めていきたい」と話す。昨年12月にはプロモーション推進やコンテンツ開発を目的に沖縄県と連携協定を締結。現在、岐阜県とも話し合いを進めているという。チャイ氏は「日本は非常にポテンシャルの高いマーケット。今後も地方との連携を拡大させていきたい」と意欲を示した。
強みは「TripGenie」などのテクノロジー
トリップ・ドットコムは、コロナ後、急速に業績を回復させた。その要因として、チャイ氏はコロナ禍でテクノロジー開発への投資に注力してきたことを挙げる。タビナカ体験予約を充実させるなか、ライバルOTAとの競争も激しいが、「トリップ・ドットコムの強みはテクノロジー」と強調し、その一つとして対話型AI旅行支援サービス「TripGenie」に言及した。
TripGenieを活用すると、旅行のルートと旅程、宿泊施設予約へのアドバイスなどをリアルタイムに受け取ることが可能。また、タビマエからタビアトまで複雑な質問や曖昧な質問に対して正確な回答を提供する。日本語にも対応している。
チャイ氏は「我々はカスタマーサービスを最優先に取り組んでいる」と話し、テクノロジーを活用した顧客サービスをさらに進化させる方針を明かした。
※人民元円換算は1人民元20円でトラベルボイス編集部が算出
観光マーケティング実務スタッフ（旅行好き大歓迎！）【株式会社マーケティング・ボイス】
