コロナ禍を経てライフスタイルや価値観が変化し、旅行ニーズも変わってきている。その傾向を探る有効な方法の1つが、検索データの分析。世の中の関心事の集合であり、人々の行動の起点である検索のデータから見えた旅行の新潮流とは?
2024年3月19日に開催されたトラベルボイスLIVEでは、国内1億人以上のユーザー数を誇るLINEヤフーから、旅行や交通分野などを担当するマーケティングソリューションのコンサルタント2名が出演。Yahoo! JAPANのデータから分析した消費者心理の変化と旅行のトレンドを解説するとともに、変化する消費者へリーチする最適な方法を話した。
旅行の選び方、カギは「トキ消費」「割引支援の常態化」
まずはLINEヤフーの平田硯嗣氏がYahoo! JAPANのデータを分析し、国内旅行と海外旅行に関する消費者心理と旅行ニーズの変化を発表した。特に国内旅行に関しては、コロナ禍から5類移行後の現在にかけて、消費者の旅行の選び方の変化に注目。平田氏は「消費者心理としては、『トキ消費』が一つのカギになっている」と話す。
トキ消費とは、「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ欲求のもとに生まれる消費トレンド」。コロナ禍でトキ消費を捉えたサービスや旅行スタイルが注目され、一気に認知が広がったが、Yahoo! JAPANの検索データにもその傾向が表れていた。トキ消費に合致する代表的なサービス形態の「旅ガチャ」「サブスク」や、ワーケーションやアグリーケーションなどの「新しい旅行スタイル」に関するキーワードの検索数が、コロナ禍以降、増加しているという。
また、消費者心理への影響として、平田氏は「GoToトラベルなど、旅行に対する割引支援が常態化したことは無視できない」と指摘。「格安」「おトク」など、格安に関連したキーワードの検索数はコロナ前の2019年比で2021年には3倍、2022年には60倍に拡大したが、2023年は2019年比の7割に縮小。「県民割」や「ブロック割」など、割引支援策の名称を除いた検索数に絞ると、2019年の4割まで縮小している。
一方、高価格帯のホテル・旅館の検索数は、GoToトラベルの開始時期から急増。いったん落ち着いたものの、コロナ後も検索が続いている。平田氏は「格安ニーズの減少が見られる。割引支援を通じた高級ホテル・旅館での旅行体験によって、価格だけではない選び方に変わってきている人もいるのではないか」と推察した。
コロナ後に登場した4万3671語の検索キーワードからわかる価値観の変化
さらに平田氏は、コロナ5類移行後の直近の検索傾向から分析した、価値観の変化を発表。2023年5月~12月にかけて、従来にない新しいキーワードが4万3671個も検索された。平田氏は「新たなニーズが出てきている」と旅行に対するニーズの多様化を指摘。その傾向を4つに分けて説明した。
1つ目は「地方・自然・混雑回避」。「観光」とセットで検索された地名や観光地名の検索を見ると、「京都」や「大阪」など主要な都道府県名や都市名の検索は増えているが、それ以上に地方の、特に自然が豊かな地域やスポットの名称が増えた。「穴場」や「空いてる〇〇」など、混雑回避の検索ワードは2023年に前年の1.6倍~2倍弱に増加したという。
2つ目は「確実性・利便性」。平田氏は「コロナ禍におこなわれたテーマパークなどの入場制限の影響を受け、確実性へのニーズが高まっているのでは」と推測。2023年の「観戦ツアー」や確実に入場できる「確約」「チケット付き」の検索は2~3倍に増えた。
3つ目は「限定性・特別感」。「成田空港でしか買えないお土産」など「〇〇でしか買えない」の検索数が5類移行後は3倍に増加した。このほか、「ランキング」「クチコミ」といったレコメンドに関する検索も増加傾向にあり、平田氏は「せっかくの旅行という心理が働いているのではないか。外したくないという価値観の高まりが見られる」と推察した。
最後は「個人化」。コロナ禍に顕著になった一人旅だが、「一人」「ひとり」を含む検索は5類移行後も増加し、1.6倍となった。特に「ひとり旅」「女子」「海外」など、女性を含む「一人」「ひとり旅」の検索は2~7.5倍で推移し、海外旅行関連の検索も多いという。
なお、海外旅行に関しては、5類移行後の「海外旅行」を含む検索数は回復傾向にあるものの、2019年比では56%で本調子ではない。ただし、年代別では20代と50代以上による検索が2倍超に増えており、海外旅行への意欲は強まっている。回復が遅い理由の一つに「円安」が挙げられているが、平田氏が海外旅行に関する日別の検索数と為替レートの相関を見たところ、円安に進むほど検索数が減少。検索動向からも「海外旅行の回復に向けたカギは円安」であることがうかがえたという。
検討プロセスの複雑化に対応するマーケティングのポイント
続いてLINEヤフーの鈴木直人氏が、多様化する旅行ニーズに対応したマーケティングのポイントを解説。まず、現在の消費者の旅行検討がテレビ番組やSNSでの検索、友人知人のクチコミなどを経ておこなわれており、「当初の想起とは全く違う旅行を予約することもある」と説明。「検討プロセスが複雑化している現在は、単発の施策で予約を完了してもらうのは難しく、継続的なアプローチが必要になる」とアドバイスした。
このソリューションとして鈴木氏が提案するのが、国内9700万人の月間アクティブユーザー(2024年3月末時点)を有するLINEの活用。企業が一般ユーザーと「友だち」になり、日常のコミュニケーションで1対1でつながれる「LINE公式アカウント」を作ることで、顧客接点のデジタル化や業務効率化といったサービス提供における課題解決と顧客体験の向上が可能になる。また、個々のユーザーにリーチして購買頻度やアップセルの促進など、CRM(顧客と良好な関係性を構築し、継続する施策)や販促にも活用できるという。
すでに旅行関連企業でもLINE公式アカウントの導入が進んでおり、鈴木氏はその活用事例を紹介。ある旅行会社では現在、従来の紙のカタログをLINE上でデジタル化し、コスト削減を図るのはもちろん、フレキシブルな情報更新や、カタログにアクセスしたユーザーの許諾を得たデータの取得を基にしたマーケティング展開を検討している。
また、LINE公式アカウントでは、ユーザーにとって重要な情報に関してはLINE通知メッセージを使い、友だち以外への情報発信も可能にしている。「LINE通知メッセージ(※)」とは、企業からの利便性の高い通知を企業のLINE公式アカウントから受け取ることができる機能。利用者がこの機能の利用に同意すると、友だち追加がなくても企業アカウントから通知メッセージを受け取ることができる。LINEヤフーがユーザーにとって有用かつ適切であると判断した内容に限定される。
これを活用し、バス会社が高速バスの予約ユーザーに乗車日のリマインド配信を始めたところ、問い合わせが減少して業務効率が向上。導入2カ月で友だちの数が4000人増加し、キャンペーン配信によって、売り上げ増加にもつながった。LINE公式アカウントのメッセージは開封率が7割、クリック率が7~8%と、メルマガよりも効果が高いことが奏功したという。
トラベルボイス鶴本はまず、Yahoo! JAPANのデータ分析で顕在化した旅行でのトキ消費の高まりについて「その場限りの体験を求める傾向が印象的」とコメント。また、5類移行後に検索されるようになった旅行に関する新たなキーワードが4万3671あったことについて、「新しい旅行のカタチが出てきており、実際にそういうキーワードが使われている。コロナ前とは違う旅行の変化を実感する」と話した。
また、LINE公式アカウントについては、宅配便などでLINE通知メッセージを活用する企業が多いことに言及。日常で消費者と企業がLINEを介したコミュニケーションをとる機会が増えていることを示唆した。
※「LINE通知メッセージ」に関して詳しく確認したい場合は、以下をご参照ください
⇒ LINE ヘルプセンター「LINE公式アカウントの仕組みや設定」
※「LINE通知メッセージ」の受信設定を確認・変更したい場合は、以下をご参照ください
⇒ LINE ヘルプセンター「通知の基本情報」
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記事:トラベルボイス企画部