旅行者の4分の3以上は、宿泊施設を使用する際、AIを利用したいと考えている。ただし、すべてのやり取りが機械経由になることは望んでいない――。ホテル流通・収益管理プラットフォームを世界展開するサイトマインダー(SiteMinder)社の最新レポートからは、このような実態が浮かび上がった。
同社は2024年11月に「Changing Traveller(変化する旅行者)レポート2025」を公表した。同レポートは、米国、スペイン、中国、オーストラリア、タイなど世界14市場の旅行者1万2000人から得た回答をもとに作成した。
サイトマインダーのグロース担当責任者、トレント・イネス氏は「昨今の宿泊は、ゲスト側が決められる部分がますます大きくなっており、そのニーズが幅広く、非常に細かく進化していることは明白だ」と話す。
今回のレポートでは、同社が「everything traveler」と命名した旅行者タイプに関する様々なトピックを取り上げている。これは「多面的な特徴を併せ持つ旅行者たちのこと。伝統と最新トレンド、その両方が混ざった旅行プランを求めており、変化を象徴する存在だ」。
こうした旅行者タイプの台頭により、ホスピタリティ産業のオペレーション手法も、変化を余儀なくされることになるとサイトマインダーは予測している。彼らのニーズや要望に応えるために、テクノロジー導入、検索のあり方、そのほか様々なトレンド対応を見直す必要があるからだ。
「我々の調査結果からのシグナルは、ホテル経営者がこうした微妙な好みに対応するには、ある一つのトレンドに合わせるというより、それぞれの旅行者の嗜好や行動の変化をより深く理解すること、いわば、常に脈拍を測り続けるような体制作りにどこまでコミットできるかが重要になる」とイネス氏は話す。「ゲストの要望を予測し、期待通りの滞在を提供するためには、ホテル経営におけるデータドリブンなインサイトが不可欠になっている」。
ホテルのAI導入に対する認識
また、回答者の51%は、ホテルはAIなど新しいテクノロジー導入が他業種よりも早いとの認識だった。2022年11月にチャットGPTが登場して以来、ここ2年間はAIがホスピタリティ業界で最も話題のテクノロジーになっている。
旅行者は宿泊体験にAIが関わることに違和感はないようで、回答者の78%は、2025年の旅行において、プランニングから予約、そして宿泊中のAI利用に肯定的だった。
サイトマインダーによると、ホテルでルームサービスやハウスキーピングを頼む際、AIを操作することにも肯定的だったが、例えば調理など、機械に任せるのは好ましくないと感じている領域もあった。
多くの旅行者がAI活用に賛成ではあるものの、ホスピタリティ産業のオペレーション完全機械化となると、不快に感じるようだ。ホテルの主要サービスの管理を、2025年までにすべて機械化する、との項目を支持したのは回答者の12%にとどまった。
テクノロジー採用への許容度に地域差
今回の調査では、旅行者が新しいテクノロジーをおおむね歓迎している一方、その許容度には、地域による差が見られた。
高度成長期にある地域では、旅行者の平均90%がAI活用を受け入れる姿勢を示しており、中国の回答者では全体の98%、インドでは94%、メキシコでは91%となった。
これに対し、サイトマインダーが「伝統的デスティネーション」と呼ぶ地域では、AIへの許容度がやや低い結果となり、新しいテクノロジー肯定派は60%前後。例えば、カナダでは62%、オーストラリアが63%、ドイツ、英国、米国はいずれも69%だった。
旅行者の検索・予約パターン
旅行のインスピレーションはあちこちにあり、インフルエンサーやソーシャルメディア・プラットフォームもその一つだ。とはいえ、今回のサイトマインダー調査結果では、旅行者の36%が、2025年の旅行で泊まるホテル探しのスタート地点は「検索エンジン」と回答。この数字は前回調査の26%よりも増えている。その牽引役はベビーブーマー世代で、同世代に限ると、検索プラットフォームが全体の42%を占めた。
同時に、様々な情報源が旅行プランニングに使われている。
RedditやQuoraなどのオンライン・フォーラム、様々な形のソーシャルメディアを使用しているとの回答は、いずれも11%を占めた。これに対し、家族や友人のアドバイスを挙げた人は7%となり、3年連続で減少した。
予約については、42%がOTAを挙げており、前回調査より3%増えた。サプライヤーに直接予約する人は、同1%減の27%。予約体験での満足度は、旅行者のロイヤルティを獲得する上で絶対条件となっている。
全体の半分以上、52%は、不愉快な体験を理由に、オンライン予約をやめたことがあると答えており、前回のサイトマインダー調査に続き、問題点となっている。こうした回答は、特に若い世代に多く、Z世代では70%、ミレニアル世代では61%がネガティブ体験を理由に予約をやめたことがあると答えた。
上記以外の予約をやめた理由には、サイトのセキュリティ対策の欠陥、決済の問題、読み込み時間、デザイン、モバイル利用での使い勝手の悪さをサイトマインダーでは挙げている。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:78% of travelers want to use AI in accommodation journey
著者:Morgan Hines氏