エイチ・アイ・エス(H.I.S.)と中国の旅行会社・同程国際旅行社(LY.com)が新たな合弁会社「LY HIS Travel(仮称)」を設立する。新会社では、拡大する中国人旅行市場で訪日旅行を軸に両者の強みを生かした事業を展開。また、中国人の他国への海外旅行や日本人の中国旅行でのグループ内の相乗効果を目指す。出資比率はHISが40%、同程国際旅行社が60%。
新会社設立の記者会見で、HIS代表取締役の平林朗氏は、同社ビジネスモデルが個人旅行(FIT)にあり、拡大する中国人個人旅行で「一刻も早く満足度の高い旅を創っていきたい」と意気込んだ。
新会社設立に至ったポイントとして、平林氏は同程国際旅行社が驚くべき早い成長スピードとパワフルさで拡大しながらも、旅行に対する考え方が品質重視あることを評価した点をあげる。また、海外拠点における中国人旅行者の受入れ拡大につながる点も大きな要素だ。
現在、HISの海外拠点では、訪日・海外発アウトバウンド・関連会社(ミキ・ツーリストなど)などの海外事業の規模が約2000億円規模。その大部分の顧客が日本人となっている。そこに、同程国際旅行社(LY.com)との連携で、拡大する中国人旅行者を受入れられるようになることは新会社設立の大きな効果。平林氏は、「そのボリュームは計り知れない」と成長への期待を示した。
今回の新会社設立で行う事業の詳細は以下のとおりだ。
【訪日旅行分野】
- 日本の観光素材の仕入れ強化
- 24時間コールセンターの設置
*HISグループのジャパンホリデートラベルが日本の観光素材を提供
*HISグループのホテル事業、 テーマパーク事業などの観光素材を新会社とLY.comで中国市場に販売
【中国人の他国への海外旅行分野】
- H.I.S.が 62カ国に展開する海外現地法人の観光商材を新会社へ提供、 LY.comのサイトを通じて中国発の海外旅行として販売。
【日本人の中国旅行】
LY.comが仕入れた観光素材や中国高速鉄道、ホテルなどをHIS販売網で日本人旅行者に販売。
新会社CEOに就任する魏慶鋒氏は、新会社設立の理由について中国人の訪日旅行需要が拡大している点を挙げる。「巨大な市場」は、さらに拡大し、同社では日本を訪れる中国人の規模は2015年は440万人超に、2016年には570万人なると見込んでいるという。BtoB、BtoCの双方でビジネスを推進していく計画だ。
同程国際旅行社(LY.com)とは? -急成長する中国オンライン旅行会社
同程国際旅行社は、中国経済の成長とともに拡大してきた旅行会社。2002年からの創業準備、2004年の会社設立以来、中国経済の成長とともに拡大を進めてきた。
中国旅游研究所の調べによると、2014年は中国の旅行会社のなかで第9位、オンライン旅行会社の中では第3位。累計約8億ダウンロードというスマホ用の旅行アプリを通じて販売を拡大している。
現在、オンラインでは旅行予約サイト「同程旅游」を運営しており、中国国内外ツアーや観光地を中心とするオプショナルツアー商品のほか、宿泊予約、航空、列車、クルーズのチケット販売も行っている。
特に、観光地の入場券ではオンライン予約数がトップに。また、中国版のツイッターといわれる微信(WeChat)と独占契約をしており、航空券と中国国内高速鉄道をWeChatで提供しているという。
同程国際旅行社の代表取締役社長・呉志祥氏は会見で、「中国の観光産業は成長を続ける」と自信をみせる。
2015年の取扱いは延べ1億人、営業収益は57億元(約1140億円)、従業員数8000人になる見込みで、さらに2020年には営業収入826億元(1兆6520億円)、従業員数2万3000人となる展望だという。同社は、2014年にはレジャー旅行で1位となることを目指す方針を策定しており、今回の新会社設立でLY.comのドメイン強化を推進する。
呉氏は、中国のスマホを利用したEコマースが拡大を続けており、EC全体の35~40%がスマホ経由になっていることも説明。また、入場券や航空券などのネット購入は、スマホアプリの活用が全体の70%にまでになっているとみているという。呉氏は、こうした中心層は1970年代生まれ以降の人が中心とみており、日本を訪れることがすでにスタンダートとなりつつある状況となっているトレンドにも言及。中国の経済成長率が低下しても、こうした層の旅行消費はまだ拡大するとの考えを示した。
トラベルボイス編集部 山岡薫