政府は2016年12月22日、2017年度(平成29年度)予算案を閣議決定した。観光庁の予算額は前年度比4%増となる255億9900万円。10億5400万円の増額となった。東北を対象とする復興枠を除く予算額は5%増の210億3500万円となっている。
255億9900万円のおもな内訳は、3本柱とする「観光産業の革新と国際競争力の強化」に93億8200万円(6%増)、「ストレスフリーで快適な旅行環境の実現」に85億5000万円(6%増)、「地方の礎となる観光資源の魅力向上」に27億6100万円(前年並み)。
新たに、「健全な民泊サービスの普及」に7000万円、「旅行業における情報セキュリティの強化支援事業」に1000万円が計上されたほか、「通訳ガイド制度の充実・強化」に前年比約1.5倍となる3000万円が計上されたのが特徴。さらに地方創生関連では「テーマ別観光による地方誘客事業」で前年度比2倍以上となる1億5100万円が確保された。
観光産業の革新と国際競争力の強化(93億8200億円)
ここでは、「プロモーション強化」に最多となる予算額87億100万円(0.5%増)を充当。「観光ビジョン」として示された目標"2020年に訪日外国人4000万円"、"訪日外国人旅行者消費額8兆円"に向けた新規市場開拓の対象として、欧米豪や富裕層、若年層などへのプロモーションを強力に進める。また、「MICEの誘致の促進」に2億100万円(0.1%増)、「観光人材育成支援事業」に3億7000万円(0.2%増)を計上したほか、「通訳ガイド制度の充実・強化」(3000万円、53%増)では、通訳案内制度の見直しや名称独占資格への移行や品質確保のための取り組みをおこなう。
新たに設定された「健全な民泊サービスの普及」(7000万円)では、ルール作りに伴う相談窓口設置などを実施。広報・ヘルプデスクを整備するほか、民泊事業者向けの手続きで周知徹底を進める。
同じく新規予算が計上された「旅行業における情報セキュリティの強化支援事業」(1000万円)は、JTBや札幌通運で発生したサイバー攻撃などを背景に、「金融機関同様に多くの顧客情報を有していることから不正アクセスやサイバー攻撃を受けやすい」とされる旅行業に特化したセキュリティ対策強化を推進。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、早急な対策が必須とする。
ストレスフリーで快適な旅行環境の実現(85億5000万円)
外国人が快適に滞在・移動できることを目指すとともに、ビッグデータを活用した不満や要望の把握と検証、地域における新たな問題調査を実施し、改善につなげることに取り組む。
また、Wi-Fi環境整備のほか、トイレや施設内にある段差の解消といった広範囲な角度からバリアフリー度向上を推進。ユニバーサルツーリズム促進事業にも2000万円を計上し、宿泊施設のバリアフリー評価制度の検討などを進める方針だ。
地方創生の礎となる観光資源の魅力向上(27億6100億円)
ここで最大の予算額を計上したのは、「広域観光周遊ルート形成促進事業」(16億1200万円、2%減)。継続して、地域における体験型プログラムの開発・提供や旅行商品の造成、海外へのプロモーションなどを進める。また、前年度2倍となる予算を計上した「テーマ別観光による地方誘客」(1億5100万円、117%増)では、酒蔵や産業遺産といったその土地独自のテーマを重視した事業を支援。例えば、共通テーマをもつ複数地域の連携なども視野に、ネットワーク化や情報発信を強化する。
そのほか、「地域資源を活用した観光地魅力創造事業」に2億7000万円(9%減)、「観光ブランド確立支援事業」に2億500万円(18%減)を計上。さらに消費動向を国・都道府県別に明らかにするための観光統計整備事業に5億2200万円(5%増)を計上している。