民泊解禁へカウントダウン、営業日数制限ない「簡易宿所」の登録増加など新たなトレンドも、民泊イベントを取材した

住宅宿泊事業法案(民泊新法)の施行を目前に控え、民泊バケーションレンタルEXPOが開催された。会場には、民泊仲介サイトのエアビーアンドビー(Airbnb)、ホームアウェイ、楽天ライフルステイ、途家(トゥージア)や、オンライン旅行会社で民泊を扱うブッキング・ドットコム、エボラブルアジアなどの顔ぶれが揃い踏み。また、民泊代行会社、不動産業者なども多数出展し、情報交換やビジネスの売り込みを精力的に行った。

今回のイベントは、昨年国会で成立した住宅宿泊事業法案(民泊新法)が6月15日の施行が目前のタイミング。EXPO内では、「民泊新法と観光庁の取り組み」と題したセミナーも開催。観光庁観光産業課 民泊業務適正課指導室長の波々伯部信彦氏が登壇し、新法施行にあたっての経緯や現状などを説明した。

観光庁では、新法施行を前に、各種の準備や状況を取りまとめているところ。民泊約款の公示から、違法民泊の取締り徹底への体制強化など推し進めている。先ごろ厚労省とともに開催した「違法民泊対策関係省庁連絡会議」後には、厚労省から自治体に違法民泊に対する対応をすすめるよう通達も実施。また、国内・海外の民泊仲介事業者が業界団体設立する準備会合をサポートするなど、民泊が健全に発展していく後押しを行っている。

観光庁では、施行後にも状況把握に努めて適切な対応を続けていく方針だ。

観光庁によるセミナーの様子

また、波々伯部氏は、民泊施行前の新たな傾向として旅館業法上の簡易宿所が増加傾向にあることを明らかに。民泊新法では、民泊の営業日数に関して上限を180日に制限しているが、収益性を考えたうえで、365日営業可能な簡易宿所の許可申請や特区認定を受ける物件の件数が増えているのだという。

例えば、京都市では2017年度の簡易宿所の登録件数が2291件に。2015年度が696件、2016年度が1493件だったことから年々増加していることがわかる。特区民泊を行う大阪市では、2017年3月段階で認定施設数が48施設95居室だったものが2018年3月には604施設1683施設に急増した。(特区民泊では、営業日数の規制が緩和されていることも、理由の一つと考えられる。)

さらに、新たな動きとして波々伯部氏は、民泊が業界を超えて各種業種との連携が進んでいることを指摘。「今後もこうした参入を期待している」として、民泊新法の施行後にも拡大していくことに期待した。

旅館業法の指導状況。民泊の拡大にともない、指導数は格段に増えている。(プレゼンテーション資料より)

民泊仲介事業者らの準備も急ピッチ、不動産業界の期待も膨らむ

イベントに出展した民泊仲介事業者らによると、現在、新法施行に向けて最終段階の施策が急ピッチで進んでいる。

例えば、ホストである民泊提供者が観光庁に登録した際の「登録番号」をサイトに掲示すること。外資系企業を含めて、各事業者は新法を遵守しながら日本の事業を展開する姿勢を示しており、違法民泊は掲載しない方針だ。新法でも事業者に対して、それを求めている。

外資系の仲介事業者にとっては、日本が初めての導入となる仕組みになる企業が大半。これらに対応するサイト開発の最終段階を迎えているという。

OTAブッキングドットコムやホームアウェイらも出展

また、民泊の周辺事業でも、施行を前にホストへのアピールを強化している。周辺事業では、民泊に使用する客室の清掃、民泊事業の代行業者、カギの受け渡しソリューション提供会社などが出展。これらの事業では、新たなテクノロジー開発やスタートアップの事業参入なども多くあり、イベントでは顧客獲得へ熱心にPRする姿がみられた。

ファミリーマートに設置されるカギの受け渡し機。サービス提供するKEY STATION社は、民泊普及をきっかけに生まれた新興企業。

不動産業界から民泊への視線も熱い。出展者の中には、不動産オーナーが賃貸物件を民泊で転用することで、空室時の収益を上げることが増えていくことをみこした国内初の民泊専用・家賃債務保証サービスやインテリアコーディネートを行うリノベーション業者など多様な業態での出展もあった。

観光庁の調査によると、拡大するインバウンドで民泊の利用は12.4%(2017年第3四半期7月~9月の調査)。これからも増加するであろう外国人旅行者の民泊需要は高く、今後も民泊とともに周辺事業の拡大が予想される。一方で、新法の施行で新たな課題もみえてくることだろう。新法施行後に運用開始となる観光庁のコールセンターへの声も気になるところだ。新法施行後の事業者の動向や新たに浮かびあがる課題など注視していきたい。

トラベルボイス編集部 山岡薫


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