オーバーツーリズム問題で観光客の立ち入りが禁止されているフィリピンのボラカイ島が、2018年10月26日から一部閉鎖を解除する。ツーリズムEXPOジャパン2018で来日したベルナデット・ロムロ・プヤット観光大臣が明らかにした。観光客の急増によりボラカイ島では大量のゴミや汚水の問題が深刻化。2017年の観光収入は約560億ペソ(約1160億円)に増大した一方で、現地住民の生活環境は悪化し、海洋汚染など環境破壊も進んでいることから、フィリピン政府は今年4月後半から観光客の受け入れを全面的に禁止している。
プヤット大臣によると、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領もこの問題を重要視し、今年7月に行われた施政方針演説では、観光の健全性を取り戻し、国民の健康を守ることが重要と演説。ボラカイ島での取り組みを新しい国造りのひとつと位置づけたという。プヤット大臣も「ビジネスチャンスと社会性とのバランスを取っていくことが重要。ボラカイ島のケースは持続可能な観光の貴重なレッスンとなった」と発言し、フィリピン政府の方針を示した。
ボラカイ島での観光客受け入れは3段階で実施される。下水処理やゴミ処理などについて、政府が新たに定めた新しい環境基準を満たした観光事業者が事業再開を認められることになり、第1段階では25のホテル(約2,063室)が再オープンする予定(9月中旬現在)。これに合わせて、フィリピン航空とセブパシフィック航空の便も一部復活する。その後、第2段階と位置づける2019年4月までにさらに再開事業者を増やし、第3段階となる2019年12月までに完全開放を目指していく。また、新たに「ボラカイ・タスク・フォース」を形成し、プロモーション方針も検討していく考えだ。
この新環境基準によって、ボラカイ島のビーチを含めた公共の場では喫煙や飲酒が禁止され、「屋外で行われていた大人数でのパーティーは禁止され、ビーチも裸足で歩けるようにしていく」(プヤット大臣)。政府では、このボラカイ島での取り組みをモデルケースとして他の観光地でも実施していき、旅行者、地元コミュニティー、観光事業者との調和を図ることによって国全体で持続可能な観光を目指していく方針だ。