テンセント・ホールディングスは2019年7月18日、コミュニケーションアプリ「WeChat(ウィーチャット)」のビジネスイベント「2019 WeChat オープンクラス東京」を開催し、モバイル決済サービスのWeChat Payの日本での導入企業数が前年比565%増、取引件数が108%増に拡大したことを発表した。
日本での成長を牽引するのは、年100万人増の勢いで増加を続ける訪日中国人観光客だ。ウィーチャットペイの日本リージョナルディレクターである中島治也氏は、中国人観光客の行動ベースとなる生活環境について、ウィーチャットの月間アクティブユーザー(MAU)は、中国人口の8割を超える11億人に、ウィーチャットペイのユーザーは8億以上となり、導入店舗は数千万単位に拡大したことを説明した。
「いまや40%の中国人は、現金を100元(約1500円)以下しか持たない生活をしており、財布を持たなくてもウィーチャットペイがあれば生活できる世界になっている。買い物だけではなく、宿泊や交通機関、行政サービス、教育などまで多様な面で使用され、日本とは全く異なった発展をしている」と中国のキャッシュレス社会の現状を述べ、日本の事業者にもチャンスが多くあることをアピールした。
また、メディア向けの合同インタビューで対応したウィーチャットペイのシニアディレクターであるデイブ・ファン氏は、日本での導入店舗の増加について「アクティブな加盟店も数倍に伸びた」とし、予想以上の成長を遂げていることを強調。増加の傾向として、免税店から空港などの観光客が集中する場所から観光地の中小店舗へ、そして買い物だけではなく飲食店へなど、多方面に広がりを見せていることに触れ、「中国人の旅行体験が変化し、買物だけではなくいろんな消費体験を求めるようになった」と、中国人の旅行志向の変化も成長を後押ししたと説明した。
さらにファン氏は、「パートナーの皆さんが我々のプロダクトをプッシュする力が強くなってきた」と、導入店舗で決済機能に留まらない各種機能の活用が進んでいることもアピール。例えば、ウィーチャット内のSNSのような「モーメンツ」での広告で「公式アカウント」に呼び込み、アカウントでクーポンを配信して実店舗へ集客するなどが行なわれている。
なかでも、ウィーチャット内で加盟店舗が展開できる「ミニプログラム」(ウィーチャット内での公式アプリのようなもの)でサービス強化や販売機会を広げる導入店舗が増えているといい、「我々もユーザーから聞いて初めて知る事例もあるほど。我々の手を離れて成長するステージにある。「我々が目指すエコシステムが日本でも根付いてきた」と自信を示した。
その最たる例としてあげたのが、今年、中国国外で初の「WeChat Payスマート旗艦百貨店」となった阪急阪神百貨店。同百貨店では、店内案内からレストラン、予約受取、VIP対応など、複数のミニプログラムを導入。来店前から来店中、来店後のカスターマージャーニーにおける顧客体験の向上に取り組み、中国のお客様と深い繋がりを作ることで、サービス向上とビジネス成長を目指しているという。
このほかプレゼンでは中島氏が、最近の新たな展開としてLINE Payとの提携に触れ、加盟店が日本人と中国人と分けることなくキャッシュレス対応が可能になることをアピール。
また、7月からは新たにウィーチャットペイ公式のミニプログラムとして「海外ギフトパック」をリリースしたことを発表した。これは、ユーザーの場所に応じてその時々にあったお得なクーポンを入手できるようにした、クーポンまとめサイトのようなもの。日本専用のエリアページも設けており、導入した店舗は割引券やメンバーズカード、クーポンなどをこのページ内で確認できるようにした。海外ギフトパックには、ミニプログラムを自社開発できない加盟店もページを持つことができるとし、多くの加盟店にチャンスが広がるとアピールする。
冒頭、ウィーチャットペイのシニアビジネス・ディベロップメント・マネージャーのシャン・ベル氏は「中国人観光客も変化し、業界も日々進化している。我々もそれに沿って進化しなくてはならない」と述べ、ウィーチャットとしても毎年、システムを進化させていることを説明した。
記事:山田紀子